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『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』 3月~公開
英国にとってのみならず、チャーチル自身にとっても“Darkest Hour”となった第2次世界大戦初期、1940年5月10日の首相就任から『ダンケルク』にも登場した下院の演説までが描かれます。ゲイリーのなりきりっぷりが凄まじい。
www.churchill-movie.jp/ ★★★★☆4.5 原題:Darkest Hour
伝説?真実? ゲーリー・オールドマンが人間“チャーチル”に迫る
先日、主演のゲーリー・オールドマンがゴールデン・グローブ賞を初受賞し、英国アカデミー賞(BAFTA)にもノミネートされました。その瞳はいつものゲイリーなのですが、彼から直々に依頼されたという日本人の特殊メイクアーティスト・辻一弘さんの仕事ぶりもあり、驚異の変身っぷり。圧巻です。
『ダンケルク』民の端くれとしては多少ツッコミたいところはあれども、そのゲイリー演じるチャーチルの豪傑な魅力、何を言い出すか分からない(文字どおりの)酔狂っぷりに引っ張られ、まあ、いいか、と。フィクションですもの。
また、ダンケルクよりも英国に近いドーバー海峡沿いの町・カレーに関するあれこれを改めて映像で見て、思わず涙してしまいました。
ただ、副題は盛りすぎかも。
あらすじ
第2次世界大戦初期、ナチスドイツの進撃でフランスは陥落寸前、イギリスにも侵略の脅威が迫っていた。英仏(ベルギーも)連合軍はフランス北部の港町ダンケルクに追い詰められ、就任したばかりのチャーチルの手はヒトラーとの和平交渉か徹底抗戦か、究極の選択を迫られる……。
監督は『つぐない』のジョー・ライト、『博士と彼女のセオリー』のアンソニー・マッカーテンが史実をベースに脚本を手がけています。
『ダンケルク』がいわば時間との闘いならば、こちらはナチスドイツとの和平の道(!?)をさぐる宥和政策との闘い。チャーチルはヒトラーの危険性にいち早く警鐘を鳴らし、宥和政策に抗議していたことでも知られます。
「ほれ、見たことか」という得意顔も見せますが、その分、失策も多く、変わり身の早さもあって政界では嫌われ者(でも猫好き)、その名が出れば「ああ、あいつか…」と言われてしまう人(でも猫好き)。
でも、そんなチャーチルも妻クレメンティーンにかかると形なし。演じるのは、BAFTA助演女優賞にノミネートされている『イングリッシュ・ペイシェント』のクリスティン・スコット・トーマス。
リリー・ジェームズ演じる秘書エリザベス役にパワハラしたときなんかは、彼女が一喝入れていました。
吃音を克服した英国王ジョージ6世役には『ローグ・ワン』のベン・メンデルソーン! 悪役イメージが強いので新鮮味があります。
宥和派のチェンバレン前首相には、『マリーゴールド・ホテル』シリーズのロナルド・ピックアップ。
そして天敵・ハリファックス卿には、「ゲーム・オブ・スローンズ」のスタニス・バラシオン役で知られ、「ザ・クラウン」ではジョン・リスゴー演じるチャーチルの自画像を担当する画家役を演じていたスティーヴン・ディレイン。彼のおとぼけ顔というのか、憎たらしい感じがピッタリ。彼らが現実に見合った正論を言っているように聞こえてしまうことが恐ろしいです。
このあたりの面々に、チャーチルの右腕イーデンもそっくり。演じるサミュエル・ウェスト(『ハワーズ・エンド』)は『私が愛した大統領』ではジョージ6世を演じていました。
また、ダンケルクの撤退“ダイナモ作戦”の指揮官ラムゼーを演じていたのは、トム・クルーズ&ケネス・ブラナーの『ワルキューレ』でヒトラーを演じていたデヴィッド・バンパーでした。
よくよく知る人からは慕われ、愛されていたであろうチャーチル。豪傑な部分が笑いを誘いますが、確かに、これまでに見たことのないチャーチル像といえそうです。『ダンケルク』民の皆さんはぜひ。知る人ぞ知るニコルソン准将も登場。
しつこいようですが、『ダンケルク』民の皆さんはぜひ。
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