『ペイン・アンド・グローリー』アントニオ・バンデラスって、こんなにも可愛らしかったんだ 公開中
原題:Dolor y gloria 英題:Pain and Glory ★★★★☆4.5
『ドクター・ドリトル』では敵役として登場しているアントニオ・バンデラスですが、カンヌでの男優賞に続いてオスカーにもノミネートされた今作は、もう、何というか、若い頃からいろいろ見てきたけれども
ペドロ・アルモドバルのアバターとして、最高だったと思います。
最愛の母を亡くした喪失感と悲嘆、年を重ねたことによる腰の激痛に悩まされ、映画にしたい題材すらもない…。
そんなスランプともいえる彼が過去と向き合っていくことで、情熱的に愛した恋人との再会と、自らの“性の目覚め”を振り返っていくプロセスを、アルモドバル監督に似せて髪型を変え、監督の私物を身につけたバンデラスだからこそ、きっと
繊細に演じることができたのであり、
とどのつまり、老齢にさしかかった今だからこそ表現できた姿が最高でした。
「可愛い」と今年60歳になるオジサマに言ってしまっていいものなのか。
でも、この役はアントニオ・バンデラス以外に演じることはできないだろうと思うのです。自分自身にとことん向き合うと、人は愛しみたくなる存在になるのかもしれません。
そして、これまでの姦しいほどの怒涛の会話劇というよりも、スペインの降り注ぐ太陽光やペネロペ・クロスの佇まいなどだけでも語るに十分すぎる雄弁さ。
あらゆる面で豊潤。
確かに、フェリーニ『8 1/2』を想起させますが、そのセクシャリティーも含め、紛れもなくアルモドバル印でした。