『女王陛下のお気に入り』英国宮廷絵巻も、ヨルゴス・ランティモス色に染まる。女優陣は各々が最高の演技 2/15(金)~公開
2019年のマイ・フェイバリット、早くも決まってしまったかもしれません。オリヴィア・コールマンが一応、主演ということになっていますが、エマ・ストーンも、レイチェル・ワイズも3人とも素晴らしい
レイチェル・ワイズの宮廷パンツルックは破壊力大!
エマ・ストーンもさらに高みに向かっております(きっと話題になる)
原題:The Favourite ★★★★★+
『ロブスター』『聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア』など、ユーモアと風刺を手玉にとり、クセがスゴすぎるギリシャの鬼才ヨルゴス・ランティモスが、絢爛豪華な英国宮廷劇をも自分色に染めてしまってます。
面白かった…!!
「私たちには英国史に思い入れがない」と言い切るのはヨルゴスとタッグを組んだオーストラリアの脚本家トニー・マクナマラ。
『ロブスター』もそうなのですが、彼らが描く世界は爆笑する類のものではなく
苦笑・失笑の嵐です。
今回はとりわけ、全編にわたり物哀しさが…。
これまでにも華やかな宮廷の意地悪で、ドロドロな裏側を描いてきた映画は多々ありましたが、女性たちがこれほどまでに物哀しく、しかも、これほどまでに孤独で淋しい女王は初めてではないでしょうか。
ここで描かれる18世紀初めを舞台にした物語は、当事者が残した回顧録や残っている史料から物語(+妄想)を膨らませていったのだそうです。
ポスターにも記されていますが、アン女王(オリヴィア・コールマン)は17人の子がみな死産や流産、生まれても早逝。
17人ですよ。
もう食べるしかない。外にも出たくない。
痛風になる。
子どもたちの名をつけたウサギを飼うーー。
そんな女王が、
愛してはいても支配的
愛してはくれない二枚舌
自分の欲望がはっきりした2人の女性に振り回されることに。
なんと哀しい女王。
彼女の寵愛を取り合う、幼なじみのレディ・サラ・チャーチル(レイチェル・ワイズ)も、没落貴族で心はレディなアビゲイル(エマ・ストーン)も女王の深い悲嘆につけ込んでいる点は同じなのです。
そんな物語も、衣装も、美術も、撮影も、音楽もすべてが圧倒的でした。
特に『聖なる鹿殺し』でも効果を発揮していた広角レンズで、部屋全体や長い廊下をとらえていく手法がたまらん。
下側から目線が多いのは、アン女王が飼っているウサギ(子どもたち)の視点なのかもしれません。
さらにともかく、戦争のための増税には、民は怒って当然なんですよ。
※揺れる英国事情ですが、こんな記事も書きました。