性の格差をはね返す、だけじゃない。『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』 7/6~公開中
原題:Battle of the Sexes ★★★★☆4.5
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確かに、「#Me Too」や「Time's Up」の原点。実際にあった時代を変えた【女と男の熱い戦い】ではあるんです。
でも、それだけじゃないことが、実は本作の肝
キーパーソンは大好きな『チョコレート ドーナツ』のアラン・カミングさん。素晴らしき。
『ラ・ラ・ランド』でアカデミー賞を受賞したエマ・ストーンが一転、髪をブルネットして体重増量して、ほぼ初心者だったテニスを猛特訓、“伝説のテニスの女王”ビリー・ジーン・キングになりきります。
彼女は1973年、全米オープンも制した世界チャンピオン・29歳。
一方、『30年後の同窓会』では息子を失った父親を演じ、あまり会話するシーンがなかったスティーブ・カレルが、本作では本領発揮か、お調子者でしゃべりっぱなし、ギャンブル依存症の元・男子世界チャンピオン、テニスの殿堂入りもしているボビー・リッグス・55歳を演じます。
2人とも第75回ゴールデン・グローブ賞にノミネートされました。ご本人にかなり寄せてきております。
ダニー・ボイルをはじめとするアカデミー賞受賞作『スラムドック$ミリオネア』の製作チームが再集結。監督は、「神作」の1つ『リトル・ミス・サンシャイン』のジョナサン・デイトン&ヴァレリー・ファリスのコンビ。
1970年代当時の女子テニス世界チャピオンと、男子チャンピオンの賞金格差は約8倍。しかも協会のトップにいるのは、男性優位主義者の典型のような人物(演じたのはビル・プルマン!)。
なんだか『ゲティ家の身代金』の再撮での、ミシェル・ウィリアムズとマーク・ウォルバーグのギャラにまつわる一件も思い起こされました。
ってことは、40年以上たっても何も変わってないやないかっ!
そのために本作が作られたのでしょう。
あえて宣伝文句には出さなかったのだろうと思いますが、
アラン・カミングさんがキーパーソンというにはワケがあります。
LGBTQ映画としての意義です。
最後のカミングさんのセリフ、泣けた、、、
このバトルがあった年、ビリー・ジーンにはある女性との出会いがあり、彼女の存在がビリー・ジーン自身を変えていきます。
自分らしくあるとはどういうことか、彼女によってようやく気づかされた、というのか。
そのためには何をしなければならないか、自分はそれまでどうやって生きてきたのか、これからどう生きたいのか、どうあるべきなのか。
そのことをも、ボビー・リッグスとのテニス真剣勝負に賭けたのです。
また、その世紀の1戦のシーンは、あえて70年代のTV放送っぽく狙って撮影されてあり、全体的にも35ミリフィルムでの撮影とのことで時代性が色濃く映し出されています。
撮影監督は『ラ・ラ・ランド』でオスカーを獲得し、デイミアン・チャゼル×ライアン・ゴズリングの次回作『FIRST MAN』も手がけるリヌス・サンドグレン。
その点はとても好みであるのですが、
いや実際、劇中で飛び交う言葉に何度「カッチーン!」と来たことか。
これは女性陣にはもちろんのこと、男性にもぜひ観ていただきたいのです。
そして、自身の性認識や性的志向について悩み、迷っている方にもぜひ。