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ぼくのBL 第五十三回 A Prayer for two dimensional Idols ~二次元アイドルへの祈り~

そうさ君は気づいてしまった
安らぎよりも素晴らしいものに

「銀河鉄道999」 作詞:タケカワユキヒデ

 やっと気づいた。
 ぼくの中にずっとずっと消えなかった違和感の正体に。

 ドルオタになって1年半が経過した。
 ドルオタになるまでのぼくは、アイマス(シンデレラガールズ)のプロデューサー(ファン)だった。2018年のクリスマスからだから、丸4年以上はアイマスというコンテンツに傾倒していたことになる。
 あまりにもアイマスに夢中になっていたので、二次創作小説を書いてみたり、2.5次元のライブに毎回参加してみたり、現地チケットが取れなければライブビューイングや配信で視聴してみたり、オフ会に参加して担当アイドルへの愛を語り合ってみたり。
 それはそれは満たされた毎日だったのだ。

 コロナ禍があり、それまで楽しみだったライブ(ここで言うのは声優が出演する2.5次元のライブのこと)が軒並み中止や延期の憂き目に遭っていた。
 映画館で上映されていたライブビューイングも、縮小・中止が続いた。
 悶々としていた。

 そんな中、ぼくは出会ってしまったのだ。
 リアル(実在する)(3次元の)アイドルに。

 ドルオタになってから半年くらいは、それでも2次元と3次元が共存できていた。リアルアイドルを追いかけながらも、2次元アイドルを同じ土俵で愛するということが自分の中で違和感なく同居していた。
 それが、徐々に比重が変わっていったのだ。

 リアルアイドルは、麻薬だ。

 ずっとこの話をしようと思っていた。
 何度も原稿を書いては保存し、読み返しては心の中で没にしていた。
 だが、そろそろいい頃合いだろう。

 二次元への決別ではない。
 ただ、そろそろ自分の中で住み分けをしなくてはならないタイミングだと思ったのだ。

 2次元アイドルの長所は数え上げればきりがない。
 これは3次元アイドル(以下、リアルアイドルに統一する)の沼に嵌ってから特に思うことだ。
・ アイドルが歳を取らない(2.5次元は別)
・ 体調不良、怪我の心配がない(2.5次元は別)
・ 公式の提供する情報以外に余計な情報が入ってこない
・ 引退、卒業が存在しない(2.5次元は別)

 2次元アイドルにとって、公式が発表・公開する情報がそのアイドルのすべてだ。しかし、ファンにとっては圧倒的に情報量が少ない。愛が深ければ余計にやきもきする部分だ。
 そこで、ファンは自然発生的に二次創作に手を染める(人もいる)。公式の情報の隙間を縫って自分好みの付加価値を与えていく。
 中の人(担当声優)に入れ込む人もいる。
 グッズを買いあさる人もいる。
 SSRをコンプリートしようとガシャ(ガチャ)に信じられない額を課金する人もいる。

 翻ってリアルアイドルに話を移す。
 上記の長所の真逆のことが短所になりうる。悲しいことだけれど。

 ただし。
 先ほど「リアルアイドルは麻薬」だと書いた。
 それを説明しよう。

 リアルアイドルを最初に観たときに感じたのが「うわ、近っ!」だった。
 何気なく参加したイベントに出ていた仮面女子を観たときに感じたこと。
 その気になれば最前にも行ける状況だったのが意外すぎた。
 さすがに初見ではペンライトを振っている古参と思しき人の群れに近づくこともできず、後列から観るに留まったけれど、それでもアイマスのプロデューサーとしてライブに参加していた頃には到底考えられない近距離だった。ステージから10メートル程度。
 アイマスのライブは、それはもうファンが多いのだ。
 会場だって名だたる全国各地のドーム球場を満員にするほど。
 初めて現地で参加したアイマスライブはベルーナドーム。キャパシティは3万人以上。僕のアイドル歴はここから始まっている(詳述すれば中学の頃まで遡れるけれど、ドルオタと呼べる程の熱中ではなかったのでここでは除外する)。
 それに比べ、いわゆる「地下アイドル」(以下「インディーズアイドル」に統一)はどうか。
 規模もピンからキリまであるけれど、ぼくがこの1年追っている界隈のライブ会場のキャパは平均して100~200人程度だろう。ちょっとその気になれば(大した努力をしなくてもいい、という意味)、最前確保は難しくない。
 その規模のライブハウスの最前となれば、アイドルとの距離は最短で1メートル程度だ。曲中にアイドルが手を伸ばして、客席のファンと触れ合うことすら稀ではない。
 ドーム球場の後列からは豆粒程度にしか見えないアイドル(声優)を双眼鏡で観ながら、「これならモニターを裸眼で観たほうがマシだな」とボヤくのとは雲泥の差だ。

 インディーズアイドルは、生きている。
 当たり前だ。
 けれど、ここが2次元アイドルとの決定的な差なのだ。

 特典会で一緒にチェキを撮ることができる。
 間近で会話をすることができる。
 次のライブに行くと、運が良ければ認知されている。
 名前(あだ名)で自分を呼んでくれる。
 SNSでやりとりすることができる。
 何なら自分の投稿を読んでくれていて、それに対するレスポンスをくれることがある。
 本物のプレゼントを贈ることができるし、それに対する感想を直接聞くこともできる。

 ぼくはアイマスで、2次元アイドルから多くのことを教わった。
 アイドルの愛し方。
 アイドルの長所の見分け方。
 ファン同士の交流のさじ加減。
 危険な界隈からの距離の置き方。

 それらはインディーズアイドルにも十分に流用できる技術だ。
 おかげで今ぼくは、いわゆる「地下アイドル」を楽しく応援できている。

 ぼくのTwitter(新X)には2次元のフォロワーも3次元のフォロワーも混在している。だから、さまざまなアイドルの情報が奔流となって押し寄せている。
 ただ、ぼくは冒頭に書いたように、気づいてしまったのだ。
 一方的な愛情を注ぐだけの2次元アイドルという存在よりも、もっと素晴らしいものに。

 2次元アイドルを愛する方々を貶めるつもりは毛頭ない。
 だってぼくは2次元アイドルから確かに勇気と愛と感動をもらっていたのだから。生きる活力をもらっていたのだから。

 リアルアイドルは様々なリスクに晒されている。
 SNSでの炎上
 体調管理の難しさ
 運営やファンとの軋轢
 方向性の違いやモチベーション低下、体力の限界などによる卒業
 給料未払い
 入所したときの約束と違うじゃない
 粘着単推しオタにタゲられて病む
 オタ同士が抗争を起こして病む
 メンバー間の不仲で病む
 働かせすぎ問題で病む

 そろそろ核心に移ろう。

 正直にいえば、二次元コンテンツを見ても、以前ほど心が動かなくなってきたのだ。
 繰り返し述べるが、それらが好きな人のことをどうこう言うつもりはない。
 二次元アイドルに対する愛情がどれほど高貴で尊いものか、ぼくは知っているから。

 ただ、リアルアイドルの魅力と、そこから得られる刺激を知ってしまった以上、もう後戻りはできそうにないのだ。

 ぼくが考える、リアルアイドルの最大の良さ。
 それはアイドルに対して、直接、面と向かって、愛を伝えられることなのだ。これは2次元アイドルに対してはどう頑張っても不可能なことだ。

 ということで、今後はつながりが希薄だった二次元界隈のフォロワーさんを整理縮小し、そのリソースをリアルアイドルに変換していくつもりです。

 ということで、
 Farewell my lovely.

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