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従業員と経営者は対等な関係である:かんぽ生命の不適切営業問題とアメリカ経済団体の価値転換から

*写真は本文と関係ですが、アナハイムのディズニーランドの場所のあるところです。分かりますかね?

今、かんぽ生命の不適切営業に関する依頼記事書いていますが、この事案をアメリカ経済団体の価値転換と比較すると面白いです。

日本郵政グループは郵便局を利用している中高年、特に高齢の方々を搾取するようなやり方で、不適切な営業を行いました。同事案についてはこの辺りの記事も参照してください。

この事案では日本郵便グループにとって、価値を生み出す対象だった顧客を搾取するという、企業としては絶対やってはならないことをしてしまいました。2015年11月からの株式上場以来、目標(ノルマ?)を掲げながら企業価値というよりは株主価値を中心に経営してきました(私はそう捉えています)。

そんな中、アメリカ経済団体において、つい先日(8月19日)、株主価値経営からマルチステークホルダへのトランジション(転換)が宣言されたことは興味深いです。

こちら全文ですが、なかなか面白いです。特にinnovationという言葉が3回も出てきています。

Statement on the Purpose of a Corporation
Americans deserve an economy that allows each person to succeed through hard work and creativity and to lead a life of meaning and dignity. We believe the free-market system is the best means of generating good jobs, a strong and sustainable economy, innovation, a healthy environment and economic opportunity for all.

Businesses play a vital role in the economy by creating jobs, fostering innovation and providing essential goods and services. Businesses make and sell consumer products; manufacture equipment and vehicles; support the national defense; grow and produce food; provide health care; generate and deliver energy; and offer financial, communications and other services that underpin economic growth.

While each of our individual companies serves its own corporate purpose, we share a fundamental commitment to all of our stakeholders. We commit to:

Delivering value to our customers. We will further the tradition of American companies leading the way in meeting or exceeding customer expectations.

Investing in our employees. This starts with compensating them fairly and providing important benefits. It also includes supporting them through training and education that help develop new skills for a rapidly changing world. We foster diversity and inclusion, dignity and respect.

Dealing fairly and ethically with our suppliers. We are dedicated to serving as good partners to the other companies, large and small, that help us meet our missions.

Supporting the communities in which we work. We respect the people in our communities and protect the environment by embracing sustainable practices across our businesses.

Generating long-term value for shareholders, who provide the capital that allows companies to invest, grow and innovate. We are committed to transparency and effective engagement with shareholders.

5つのことが掲げられていますね。すなわち・・・。

・私たちの顧客に価値を届ける
・従業員への投資
・供給者への平等で、倫理的な取引
・私たちが働いているコミュニティ(地域)へのサポート
・株主のための長期的な価値を生むこと

になります。私なりに解釈すればイノベーションを起こしてくための株主第一主義からマルチステークホルダー主義への転換ですね。

こうした考え方は日本企業の経営者が言ってたのでは?と思われた方も多いかもしれません。そうではないと私は捉えています。日本企業は高度成長期において効率のよい組織運営方法として、年功序列、終身雇用制度というヒエラルキーを重視した制度を取ってきました。それに対して、今回のアメリカ企業団体の新しい宣言は、企業を取り巻くステークホルダーとのエンゲージメント(結びつき)を意識したもので横の関係を重視したものといえます。企業にとって、従業員はステークホルダーの1人であり、大切に扱うべき存在であるということです。対等関係である、ということは甘えも許されないという厳しい見方もできます。

これは別にアメリカ経済団体が新しいことを言ったのではなく、現在の企業経営、特にイノベーションを起こしている企業、Google、Apple、Faebook、Amazonを始めとしたGAFAや新興企業、ベンチャー企業の多くが、ヒエラルキーの関係(経営者と従業員との支配・被支配関係)というよりは、横の関係(経営者と従業員は対等である)という一つの流れから来ているのだろうと思います。*ちなみにこれらの企業では離職率は高いようですが、その理由はよりよい職場があれば、別の企業に転職する、という前向きな転職であり、ブラック企業からの転職とは意味合いが異なります。

こうとらえると、かんぽ生命の不適切営業は、ヒエラルキーの中から生じたまさに日本的な不祥事、とも捉えられるかもしれません。

さて、日本企業は、縦(ヒエラルキー)重視から横重視への転換が出来ていくでしょうか?そうあってほしいですし、そうならなければならないと思います。

*こちらの記事もお勧めです。参考にしました!


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