「民間の活力」について考えてみる。
一般社団法人さんの話は突っ込んで調べれれば調べるほど杜撰なことが分かって疲れます。
1.国の事業を代行する民間企業をどう捉えるのか?
こちらの事業も同社団法人さんですね。
こうした団体さんがアカウンタビリティの意識は低かった、ということは事実としてある、とは思います。
一方で、国が担う業務を行っていてくれた(代行してくれていた)ということは間違いない、というわけです。
この辺り、国が実際に事業を担った場合の試算とそうでなかった場合の比較計算が必要かもしれません。
結果として、外部に委託したほうがいい、ということであれば、積極的に外部に委託すべき話だとは思います。
ただし、こうした極めてセンシティブな情報、かつ公的なお金を取り扱う仕事を民間企業に任せてよいのか?ということも議論としてはあると思います。
この点は中国からの留学生と議論して指摘されたことです。やはり彼らの感覚でいうと、こうした大事なことは国が責任をもってやるべきでは?と思うようですね。
おっしゃる通りだと思います。
電通がそんなに儲けのない事業である、ということを強調されていましたが、一つ突っ込みがあるのは、「じゃ、何が旨味でやったの?」ということが気になります。
というのも営利企業、しかも株式会社で、かつ上場している企業です。
これはCSRの一環として行っています。という事なのでしょうか?
もしそうなのであれば、そう表明したほうがいいと思います。営利企業はあくまでも利益を追求するのが基本のはずです。
変に公共性を強調する必要はないと感じています。
2.PFI事業の視点から考えてみる。
今回の件に限らず、公的な事業は民間の力を活かすという明確で、この間、改革が進められいったのは異論はないことでしょう。
いわゆる公共事業のPFIの活用ですね。
PFIとは、公共事業を実施するための手法の一つです。民間の資金と経営能力・技術力(ノウハウ)を活用し、公共施設等の設計・建設・改修・更新や維持管理・運営を行う公共事業の手法です。あくまで地方公共団体が発注者となり、公共事業として行うものであり、JRやNTTのような民営化とは違います。正式名称を、Private-Finance-Initiative(プライベート・ファイナンス・イニシアチブ)といい、頭文字をとってPFIと呼ばれています。
PFIはどこで考えられたのですか?
PFIは、1990年代前半に英国で生まれた手法です。官民が協同して、効率的かつ効果的に質の高い公共サービス提供を実現するというPPP(Public-Private-Partnership:官民の連携)の概念から来るもので、PFIはその手法の一つです。わが国では、平成11年7月にPFI法が制定され、この法律に準拠したPFI事業が実施できるようになりました。平成12年3月にPFI事業の実施に関する基本方針が告示され、その後、PFIに関する5つのガイドラインが順次公表されています。
PFIの導入は何を目的としていますか?
安くて優れた品質の公共サービスの提供を実現することを目的としています。
こうした民間の力を使って低廉なサービスを!
がうたい文句ですね。
PFIの活用は聖域なく、病院にも入ってきています。
筑波大学附属病院「PFIに対する期待」(再開発計画基本構想09/10/’07)http://www.s.hosp.tsukuba.ac.jp/pfi/nyusatsu/070910_setsumei11.pdf
内閣府「 PFI手法の導入事例」https://www8.cao.go.jp/pfi/pfi_jouhou/archive/houkoku/nenji/17fy/pdf/anual172b.pdf
一方でこうした記事もあります。
地方公共団体における PFI 手法導入による課題とその対処方法に関する事例研究
https://www.soumu.go.jp/main_content/000476172.pdf
諸外国における PPP/PFI 事業調査業務ww8.cao.go.jp/pfi/pfi_jouhou/houkoku/report/pdf/h30kaigai_1.pdf
公的な病院においてもPFIの手法が取り入れられています。こうした結果が何をもたらしたのか?ということについてはもう少し精査が必要ですが、医療体制の効率化することが結果的に、こうした不測の事態に対して対応するためのバッファーを少なくしてしまった、ということはあるかもしれません。
なお、民間の事業=PFI、のような言い方に聞こえるかもしれませんが、きちんと整理したものは以下にまとめられています。
公共事業を行う際に、民間がもつノウハウを活用することによって、安くて質の高い公共サービスを効率的に提供する手法はPFIだけではありません。
民間のノウハウを活用するためには、民間に任せられるものは民間に任せて効率を高めることが必要です。様々な民間のノウハウを活用した公共事業の実施手法に関して、事業全体のうち民間に任せる部分が占める割合・程度の大小を勘案して整理してみました。特徴や適用例についても示しました。
ちなみに、静岡市も中止になった事業をPFI方式で行うことを表明していました。
海洋文化施設と清水庁舎の新設は、PFI(民間資金を活用した社会資本整備)方式を採用して事業者を公募していたが、当面は打ち切る。
静岡市は、新型コロナウイルスの感染拡大などの影響を踏まえ「城北公園Park-PFI事業」の公募時期を延期する。当初は4月に募集を開始し、7月に事業者を決定、2021年4月に施設をオープンする予定だった。公募の延期に伴い、供用開始時期などの事業工程も見直す方針だ。
3.民間の活力に対する過剰な期待は禁物
確かに民間企業の方が事業化についてのノウハウをもっています。また公共施設の多くの立地は、非常に付加価値が高い場所にありますので、それを上手く活用して収益化して持続可能にしていくという手法は、民間でないと難しいと思います。そうした意味ではPFI事業を活用したほうがよい、という事例もあると思います。
最近は公園事業のPFI化が進んでいるようですね。
注意しなければならないのはPFI事業で入っている事業者は公的な精神で参入してくるわけではなく、儲けようと思って参入してくるわけです。
その辺り、誤解しない方がよいと思います。公益性を重視しなければならない事業についてまでPFI化すると後々大きな問題になりかねないでしょう(今回の新型コロナウィルス対応における医療体制の逼迫の関係ももう少し精査することが必要でしょう)。
水道事業のPFI化も進んできますね。
注意しなければならないのは事業の失敗した時の失敗の責任をどのように取るのか?ということです。この点はまた改めて議論したいところです。特に水道事業のPFI化も進みそうなので。
民間の力を活かす。このこと自体には私は賛成です。しかしながら、よく精査して進めることが必要です。過去の失敗事例をみると、国、地方自治体が運営を丸投げするような方式においては、失敗することがある、また事業入札の競争率が低い場合も同様(旨味が少ない事業に応募する企業は少ない)ともいえます。
儲けの少ない事業にも関わらず応募してくるのは、個人的な付き合いがある(実質的に出してほしいと依頼されている。出来公募と一緒ですね)、もしくは別の狙いがある、のどちらかですね。
なお、前者の場合は、実績をあげて今後の委託事業に繋げていく、という思惑があるでしょう(今回は損しても、後で取り返せる)。後者の場合は、資金的にひっ迫していて、こうした公的な事業を獲得しないと倒産してしまう、という状況にある、場合ですね。
財務的にひっ迫しているところに事業を任せるわけにはいかないわけなので、競争入札の場合、業務の遂行能力の判断をする際にそこも判定されるはずです。決算公告に不備があった一般社団法人でも業務委託をしたのは、大手の企業がバックアップしている、という暗黙の保障があったから、と考えると分かりやすいかもしれません(あくまでも私の推論ですが)。
そういえば、今回の持続化給付金事業の競争入札では、サービスデザイン推進協議会の他にもう一社が入札に参加したと聞いていますが、もう一社はどういった思惑で入札に参加したのでしょうね。
いずれにしてもある程度、収益化が望めるような事業でなければ、競争入札すること自体が無理でしょう。もし、マンパワー不足で委託をしなければならないとすれば、そこは説明を尽くして随意契約でもいい気がします。なんでも競争入札をしたことがかえって不透明さをますこともあると思います。
・・・・ここまで書いていて思いましたけど、持続化給付金事業は利益率低い、面倒な事業なのになぜ名乗りを上げたんでしょうね。
何らかのメリットはあるはずです。そうでなければ、申し込みは行わないはずなので。公益的な事業だ!といえば言うほど、そこはいや違うんじゃないの?と思いたくなります。まして、上場企業が再委託を受けていますから。そこの部分はちゃんと説明してほしいですね。
やっぱり、今後に繋げる意図でしょうか?
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