かんぽ生命の第一四半期の簡易分析
かんぽ生命の第一四半期の簡易分析をします。
簡易分析では、30分ぐらいで決算結果を粗々にまとめて書いていきます。
まだ始めてばかりなのですが、より多くの企業を調べてみるのも大事、ということで、量の部分も重視して分析をしていきます。
さて、このように普通に分析するとかんぽ生命の業績はとてもよく見えます。
収益は減っていますが、当期純利益は38.3%増で、1株当たり当期純利益・配当金も上昇しています。
配当を重視しているかんぽ生命は年々配当還元を増やしています。
そう考えるともっと株価が上がってもいいはずなのですが・・・。
株価は全くさえません。この決算を受けても全く上がる気配がありません。
この理由は割と簡単です。
計上されている収益は実は既契約から得られている収入保険料で成り立っています。新契約から得られている保険が減少している(販売を自粛しているので当たり前ですが)のがよくわかると思います。
保険会社、特に長期契約を抱える生命保険会社においては、既存の契約から得られている収入保険料が計上されてしまいます。このことに違和感を感じるのは当然です。なぜならば、今期の営業の成果でないから、です。
とはいえ、現状の実務はこのようになっていて日本基準においては対応されていません。これを変える可能性があるのがIFRS17になります。
こちらはIFRSである上に、日本の保険会社に適用される予定は今のところありません。なので、こうした収益○○億円と出ても注意してみなければならない状況が続きそうです。
かつ、もう一つ注意しなければならないのは、保険会社は販売を自粛するとその分だけ新規契約に関連する費用が発生しないということです。生命保険の契約は、販売すればするほど、費用が多く発生します。
こちらにも触れられていますね。そのため、この新契約費を繰り延べるか、そうでないかは意見が分かれるところなのですが、日本基準においては繰り延べられることはありません(発生時に費用処理します)。
なので、販売を自粛すれば短期的に利益がアップします。その結果が、今回の決算結果に表れています。そうした中で業績が好調!配当はします!といっても株価が反応しないのは無理はありません。
株のリターンは「キャピタルゲイン+インカムゲイン」で構成されます。
利益の裏付けのない配当であることを市場が見抜いているとすれば、今回の株価が値上がりしないのも納得です。株価の配当は、既存の株主には「とりあえず値上がりまで保有しておくかな」ということには繋がりますが、新規の株主(これから株を買おうと思っている人)は「怖くて買えない」となるのは当然です。
かんぽ生命に必要なのは配当ではなく、エクイティストーリ、つまり如何に企業価値を高めていけるのか。その具体的な将来像でしょう。