序論、背景を作り込みを通じて論文の質を上げていく:序論⇒背景⇒検証⇒考察
研究論文の書き方についてです。
これは会計に限らず、ですが研究の書き方は研究の全体像が見える、序論、背景の二つが大変重要になると感じています。
おおよその論文は、
序論⇒背景⇒検証⇒考察
といった順番で始まると思います。
論文においては序論、背景の作り込みが大事です。
つまり、本論文が取り扱う研究対象全体が分かる形で序論を書き、さらに背景で取り扱っている対象に関するバックグラウンドを書いていく。
この二つの要素がしっかりしていないと、論文の全体像が見えてきません。
例えば、金融商品の時価情報が有用な情報を提供しているかを実証的に検証する論文であれば、
序論に、論文全体を総括する内容(結論を書くこともあれば書かないこともある)を書き、
背景に、既存の先行研究や金融商品会計の現状について書きます。
序論と背景を読めば、
「なるほど、この著者はこうした現状を憂慮して、論文を書こうとする動機づけが生まれたんだな」という納得感が得られます。
逆に言えば、ここで読者が納得できなような話を書いてしまうと、検証、考察まで読んでくれない、と思うべきでしょう。
論文において、最後に書くのは序論である、とも言われています。
論文のプロローグでありながら、終わり、結末を予感させるものでなければなりません。
序論の難しさは、中盤以降の検証、考察でも触れる内容を匂わせながら、論理だてて書くことにあります。
これはおおよその論文の構成、展開が分かっていないと書けないことです。
実際には、行きつ戻りつ書くことになるでしょう。
全体を書く(結論まではとりあえず書いてみる)⇒序論、背景を書き直す⇒それに合わせて検証、考察部分を書き直す⇒全体を書き直す⇒序論、背景を書き直す⇒検証、考察部分を書き直す
というサイクルです。
序論において全体像が見える形で、論文に興味を持ってもらえるように書く。読み物としての論文を意識して書くことが必要です。
序論の作り込みが、論文全体の価値を左右する、と言っても過言ではないでしょう。行きつ戻りつ、慎重に書きながらも、どうすれば興味を持ってもらえる記述になるかを試行錯誤しながら書いていくことが必要です。
序論、研究背景において注意しなければならないのは「客観性」を確保して「主観」を入れないことでしょう。
自説を展開するのは、検証に基づいて考察をしてからです。
問題意識を持ちながらも、全体の背景がみえる形で、序論、背景を書き進めていき、自分の言いたい事、主張したいことをより多く盛り込むのは後半のパートです。
もちろん、問題意識=自分の主張でもありますので、序論、研究背景で主観的な見方を完全に排除することは出来ません。ある程度、そうした要素が盛り込まれていくことになるでしょう。
ただ、自分の考えを読者に押し付けるような論理展開を行うことはこの時点では避けるべきでしょう。
これが難しい、のです。
私は、これを解決する鍵は研究背景の作り込みにある、と感じています。
検証結果を読者に示していない段階(結論部分を序論に書いていたとしても核心部分について詳細に書いているわけではない)では、研究背景を丁寧に作り込むことを通じて、
・研究背景の全体像が見えるようにすることが必要です。
これには二つの要素があります。
一つは研究背景のバックグラウンドとなる話です。
基準論、規制論であれば、その詳細をここで書きます(教科書的な内容になるかもしれませんが、それでもある程度OK)。経済的なバックグランドや、研究対象となる制度の過去から現在の状況も書く必要があります。何をどの程度書く必要があるかは論文のテーマによっても変わってきます。目安は、ある程度の知識を持った読者(大学の3年生以上)であれば、おおよその内容が分かる、ように書くべきです。
もう一つは、先行研究に基づく調査結果も含んだ今行っている研究の現在位置を示すことです。
類似の研究は多く行われいるはずで、過去から現在に至るまでどういった研究が行われ、何がどのように明らかにされているのかもここで書く必要があります。
この2つを意識して書いていけば、研究を行う意義と全体背景が見えやすくなってくはずです。
逆にこれが出来ていないと、何をやっているか分からない論文、言い換えれば独りよがりな論文になってしまいます。
序論、研究背景の作り込みを通じて論文の全体の質を上げていく。
自戒を込めて心がけたいことです。