大会社に課せられている監査役会設置の義務
会社の組織形態、に着目したことあるでしょうか?
会社は社長、つまり代表取締役のものという理解でいいのでしょうか?
その理解を誤りです。
会社の組織を法人化すれば、その会社は法人格を持ち、定められた規則に沿って会社運営を行っていなければなりません。なお、株式会社の設立には、定款を作り、それを認証してもらい、出資(資本金を払い込み)、登記する、という手続きが必要になります。
つまり、株式会社を作るという時点で、会社を私物化することは許されず、会社の目的(事業目的)に沿って活動してくことが求められるわけです。
さらに会社の規模が大きくなれば、それに従って利害関係者も増えます。
上場会社であれば、株主(出資者)も増え、銀行からの融資を受け、その額も大きくなるでしょう。さらに、従業員数も増え、取引先も多くなっていることが想像できるでしょう。
つまり、規模が大きくなればなるほど果たさなければならない、社会的責任・説明責任はより大きくなります。
*誤解をしないように補足しておくと、規模が小さければ社会的な責任が小さくなるというわけではありません。
当然、会社の規模が多くなるに従い、適切なガバナンス体制が求められるようになり、会社法でもそのための条文が存在します。
会社法においては、公開会社(上場企業)かつ大会社は監査役会を置く必要があると定められています。会社法第328条「大会社における監査役会等の設置義務」です。
第328条
① 大会社(公開会社でないもの、監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社を除く。)は、監査役会及び会計監査人を置かなければならない。
② 公開会社でない大会社は、会計監査人を置かなければならない。
大会社とは、資本金5億円以上、200億円以上の負債を貸借対照表上に計上している会社のことをいいます。
監査役会は、3人以上の監査役(そのうち半数以上は社外監査役)で構成され(会社法335条3項)、監査報告の作成や常勤監査役の選定・解職、監査の方針等の決定を行う機関です(会社法390条2項)。
監査役会の構成メンバーとなる監査役は、取締役等の職務の執行を監査する役割を担っています(会社法381条1項)。
そして、監査役会の半数以上を社外監査役とすること、常勤監査役を1名以上選任しなければならないこと、取締役・会計参与・使用人等との兼任が禁止され、独任制であること、などが定められています。
監査役の権限としては、第381条には次のように書かれています。
第381条 監査役は、取締役(会計参与設置会社にあっては、取締役及び会計参与)の職務の執行を監査する。この場合において、監査役は、法務省令で定めるところにより、監査報告を作成しなければならない。
2 監査役は、いつでも、取締役及び会計参与並びに支配人その他の使用人に対して事業の報告を求め、又は監査役設置会社の業務及び財産の状況の調査をすることができる。
3 監査役は、その職務を行うため必要があるときは、監査役設置会社の子会社に対して事業の報告を求め、又はその子会社の業務及び財産の状況の調査をすることができる。
4 前項の子会社は、正当な理由があるときは、同項の報告又は調査を拒むことができる。
日本の監査役会制度は形骸化している、と言われることもありますが、権限だけをみれば相応のものを持っていると思わます。独任制という形で監査役一人一人が単独で権限を行使することが出来ます。また必要があるときには子会社に対しても事業の報告を求めることができます。
ともあれ、会社もある程度の規模になってくると、会社が暴走しないような機関を設けることが法律上求められる、ということです。
規模が大きくなれば社会的責任が大きくなる、という点を抑えておくのが大事ですね。
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