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一律で動機づけのない教育・研修は意味がない:大事なのはキャリアフレームを意識すること
人的資本への投資が鍵!と言われています。
人的資本経営 ~人材の価値を最大限に引き出す~ (METI/経済産業省)
人材育成のために人への投資が大事という事には異論ありません。
日本企業が、人材育成への投資を怠っていたことは周知の事実となっています。
日本生産性本部: 「日本企業は他国と比べて人材に投資しない!」警鐘を鳴らす - 役員研修・ガバナンス関連のブログ (bdti.or.jp)
企業の人材への投資額が少ない理由については、今後確かめていかなければなりませんが(個々の企業の実態や、中小企業と大企業との差などを入手可能な財務データで分析する必要があると感じています)、一つは2006年~2008年の金融危機が影響を与え、さらにその後、2011年の東日本大震災もあり、積極的な投資に動きずらかったでしょう。
その後、アベノミクス下での大規模な金融緩和により上げ底で景気を押し上げることには成功しましたが、企業への人への投資を増やすという傾向は鈍かったようです(給料は多少上がりましたが)。
なぜここまで人的な投資の面で後れを取ったのか?
という点については、グローバルな視点でみると不思議で仕方がありません。この辺りはもう少し調べてみたいと思っています(まだ不勉強です)。
今、ナイトスクールで行っているこちらの講義はマクロ経済視点からみた日本の現状を炙り出すものになっているのでおススメです。
(1) Economics Design Inc.|経済学のビジネス活用さんはTwitterを使っています: 「毎週木曜21時〜ナイトスクール❗️ 12月となり冷え込んできましたが、本日から新シーズンとなります🔥 本日は宮本弘暁さん(東京都立大学教授)による「データで読む日本経済1」の授業です✨ テーマは「世界で一人負け―日本の低賃金」です😳 どんな内容か気になりますね…! #TheNightSchool https://t.co/us3HXG97g6」 / Twitter
今、人材投資に注目されていることは、今の日本人のマインドを変換して、生産性を向上させていくための好機と感じています。
ただし、私たちは人材教育は必要だと認識していたとしても、どんなスキルが必要なのか、という事についてはどこまで分かっているでしょうか?
日本の人材教育のシステムは画一的、横並びの傾向が強く、自律的なマインドを育てることに欠けています(言い過ぎかもしれませんが)。
例えば、情報セキュリティ研修、コンプライアンス研修などは、組織的で統一的に行い、
受講率100%!
などと謳うケースはよく散見されます(皆さんの組織、企業はどうでしょうか?)。
*教員のFD研修もそうですね。
確かに、セキュリティ、コンプライアンス研修は大事なのですが、受講したから、セキュリティ、コンプライアンスの意識が高まったかどうか?については検証がなされていないケースが多いのではないでしょうか(受講率=意識が高まった、と言えるのであれば、受講率が大事になりますが・・)。
専門職であれば、意識が高い、と思う人がいるかもしれませんが、そうではありません。
専門職の継続研修においても、とりあえずポイント集めに重点が置かれ、形式主義的、画一的なやり方が目立ち、不正も横行しています。
会計士協会、不正受講問題で会員権停止 あずさ監査法人など: 日本経済新聞 (nikkei.com)
こうした問題・・・本当にあってはならないですし、意識が低い!と糾弾することは簡単ですが、そもそも、継続研修への動機づけを与えるための仕組みがない、と言えるでしょう(勘違いでしたらすいません)。
私も学会で継続研修のポイントをつける係になったことがありましたが、ドア前で研修のポイントをつけて、その後、部屋に入らず外でブラブラ雑談をする(いわゆるピ逃げ)をされる方が多くいました(もちろん、この人に対して注意を促しました)。
ピ逃げをいわゆる専門職のトップの人間もやっていたのには大変驚きました(受けないと駄目ですよ、部屋には入って受講してください、と注意をして、「私を誰だと思ってるんだ!」と毒づかれたり、凄い嫌そうな顔をされましたが)
部屋に入っているから良いかと言えばそうではなく、真面目に受ける気がさらさらなく、居眠り、内職をしていた人が多数いました。
誇り高いプロフェッショナルのはずなのに、これはいったいどうなってるの?と思いました。
(注意)10年ほど前の話ですし今、どうなっているか分かりませんが。
研修を受けたのであれば、その内容をシェアしたり、レポートを書かせてそれを批判しあったり、が必要なのではないでしょうか。
形式的にレポート、報告書を書かせて終わり!という研修が多過ぎることには残念に思っています。
書かせたレポートについては何らかの形でフィードバックする。
これは研修・教育の鉄則と言えます。
私自身の講義で、毎回の小レポートの質問に回答し、それを毎回シェアしているのは、フィードバックをしないレポートの教育効果は低いということを知っているからです。
話が逸れました。
私たちの多くは、小学校から現在に至るまで『誰からかやらされる』教育に慣れ切っており、お行儀よく座って学び、先生のいう事をよく聞き、可愛がられ、ペーパーテストで高い点数を取り、人当たりよく接して、組織に溶け込み、無難に空気を読みながら、やってきた…のではないでしょうか?(私はあまりお行儀のよいタイプじゃなかったですが(笑))。
なので、自律的に学ぶマインドが低いひとが多く(もちろん高い人もいます)、そもそも何を学べばいいのかが分かっていない人が多くいることに残念に思っています。
組織のトップの方は、研修を一律に行って、受講率100%と掲げるのがどういう意味があるのか、という点について今一度問い直した方がよいでしょう。
日本企業は一括採用を辞めていませんし、就職後は、集団研修を行い、企業マインドをたたき込み、扱いやすい人材を育成するルートは健在です。
新卒一括採用は見直すべき?現代に合っていない問題点を詳しく解説 - エンゲージ採用ガイド (en-gage.net)
社会人になってからも一律に同じ教育・研修をすることにどこまで意義があるでしょうか?
個々のスキル、マインドには違いがあります。そうした中で、一律に同じ研修を受けさせることがナンセンスですし、時間の無駄でしょう。
もちろん、研修は必要です。
先にあげたセキュリティ、コンプライアンス研修を行うならば、個々の理解度、習熟度に応じて、プログラムを組み、必要な人に受けさせるということが必要でしょう。
こうした研修することが必要だとしても、一律に集団で受講させるだけでは意味がないですし、それでは個々の理解度、習熟度の差を埋めるのは難しいでしょう。
この差を埋めるためには、メンター制度などを設けて、メンターとなった人が、理解度、習熟度の低い人に教え合ったり、気を付けるべきポイントを抑えることもよいでしょう。また、特定の人へのスキルトレーニングを重視し、その人たちを中心に、責任をもって理解度、習熟度の低い人たちへの教育をしていくというのもよいかもしれません。部門によって、必要なスキルは異なるでしょうから、部門ごと必要なスキルを可視化して、相互共有しておくことも大事です。
個人のスキルトレーニングとしては、どうすればよいでしょうか?
まず、各人のスキル、現在のマインド(心的状態)を可視化して、得意不得意、やりたい事(自分のモチベーション)を理解しておく必要があるでしょう。
一つ参考になるやり方は、シンガポールの学び直しプログラム、SkillsFutureのスキルフレームワークですね。
SSG | Skills Framework (skillsfuture.gov.sg)
このスキルフレームワークは、産業分野、キャリアパス、職業・役割、職業・役割に必要な既存・新規スキルに関する重要な情報を提供する形になっており、スキルの向上と習得のためのトレーニングプログラムのリストを提供しています。このスキルフレームワークの目的は、個人、雇用者、訓練プロバイダーにとって共通のスキル言語を作成することにあります。
必要なスキルフレームワークは変わってきますし、フレームワークそのものが全て必要なことが網羅されているとは限りませんが、少なくともこうした枠組みが、スキルの認識促進、スキル、キャリア開発のプログラムの設計をサポートするのには役立つのは間違いないでしょう。スキルフレームワーク作りは、個人でも、組織でも行われるべきと考えます。
ここはシンガポールじゃないよ!と言われればそうなので、別の方法も紹介しておきます。例えば、おススメのやり方はキャリアカウンセリングを一度受けてみて、自分のポジションを可視化することです。
キャリアカウンセリングとは? 就職・転職・働き方など仕事の悩みを相談 - オンラインカウンセリングのcotree(コトリー)
私もこちらで一時期お世話になっており、自分として困ったり、自分を見返したいときに定期的にお願いしています。
カウンセリング前に自分のスキル(非認知能力を含めて)を可視化する詳細なアンケートがあり、自分にとっての特異不得意を可視化してもらえたのはかなり有難かったです。
なお、親、友達、同僚(上司を含む)はキャリアの相談相手としてはお勧めしません。本当に必要な助言を言わず気を遣った発言ばかりすることが多いからです。考え方も偏りがあり、バイアスがかかっていることが多いので、友達の助言をもとに人生の大事な決断をし、痛い目にあった人を何名か知っています(最終的に決断したのは本人ですから、まぁ本人のせいなんですが)。
飲み屋に行って、酔っぱらったノリで重大なことを決めては駄目!という事です。
自分のキャリアについて、必要なスキルについて分からない人は、スキルマップなどのスキルを可視化するツールはいくつかあるようですので、まずは自分で動いてみて自分に必要なものは何か・・・ということを考えて、戦略的に動いてみると思います。
私が少々心配しているのが、企業が人的資本関係にフォーカスがあてられることで、投資家へのPR作りのために、形式的な人材育成に関する投資をしだす事です。意味のない教育をしてしまうと結果的に従業員の時間を奪う形になり、生産性が下がる、ことになります。
形式主義、画一的になりがちなのが日本企業、教育機関の悪い癖。
私もこのことを自戒して、学生の教育をしてきます。