ゼロウェイストアクションホテルWHYに泊まったはなし
2020年5月にオープンしたホテルWHY。ゼロウェイスト宣言をした徳島県上勝町にある宿泊施設に、行ってきたのでレポートしたいと思います。
アクセス
徳島市内から車で50分。山間にある人口2,000人ほどの町が保有する、ごみ収集センターの直ぐ隣にその施設がありました。
施設
敷地内は3つのエリアに分かれています。
①ゴミステーション
②コミュニティスペース
③宿泊棟
全体を上から眺めると「?」の形をしています。
建築にはこだわりが詰まっています。柱、梁のこの構造は建物全体を通して同じですが、空間の用途を後からでも変更できる様に設計しているそうです。(うまく説明出来なくてすみません) のちのちゴミステーション閉鎖!なんてなった時にも別の用途として再設計が可能な造りになっているのです。
外観を彩っているサッシも町内から出た不用品を再利用しています。すてきなデザインです。
風通りがよいので、ゴミ臭が全くありません。(そこまで設計されています)
チェックイン
早速チェックインしていきましょう。
コミュニティ棟で説明を受け、宿泊棟へ向かいます。
木造の建物で、部屋は放射状に並んでいます。中央のホールから覗く空がきれい。
お部屋の中は二階建て!入った瞬間、木のいい香りに癒されます。外観から想像がつかない室内。2階のスペースも秘密基地のようで素敵。オシャレなのに落ち着く雰囲気です。
書斎スペースの一枚板のデスクが素敵。上勝町は元々林業で栄えた町です。町の歴史・アイデンティティを大切に継承しようとする精神が、建物全体から伝わってきます。水回りも綺麗。
置いてあるアメニティもエコ配慮のもの。
細部にまでこだわりが。手すりは竹細工が施され、ミニカウンターの扉の取っ手は石。鉄扉にも一工夫。古新聞があしらわれています。
16時、17時、に施設内見学があり、ここでの過ごし方やリサイクルの取り組みなどのお話しを聞きます。(宿泊しない方も見学ツアーは参加可能です。参加費有料)
町が取り組んできたゴミ削減の歩みを聴きます。ゴミ処理は小さな町特有の問題でもあると思います。東京ではどんなゴミも燃やせる高性能の焼却処分施設を持っています。人が多い分、ゴミもあるけどお金もあるので建設費を賄うことができますが、小さな町となれば話しは違います。私が住んでる町(人口2.5万人)も、近隣の町と連携してゴミ処理をしていて、割と分別区分が細かく定められています。
ゴミを処理するにもお金がかかります。量が増えれば増えるほど処分費用もかかり、逆に減らせば減らすほど、町に資産が残るようになります。ゴミを減らす為にできることは2つです。
①そもそもの量を減らす(ゴミが出るものを買わない努力、ゴミを出さない努力)
②ゴミから資源を取り出す(リサイクル、再利用)
上勝町は平成初期に小さな焼却炉を建設したそうなのですが数年で法律上利用不可となってしまいました。それならば、と外部に頼るのではなく自らゴミゼロを目指す方針を定めたのだとか。
13種類45分別、で家庭ごみを分別します。なお、上勝町の住民は自分たちでここまでゴミを出しにやってきます。我々が日常的に利用する収集車という概念はありません。(曜日に関係なくゴミ出しをできるという点では便利かも。ただし、ゴミを出せる時間帯は朝〜午後過ぎまで、と決まっています。)
瓶の分別写真。文字、イラストで分かりやすく書かれています。
ポスターにご注目。右上に緑文字【入】や赤文字【出】と書いてあります。これは、1キロあたりにかかる費用の表記です。金属蓋は3円or10円/kgで買ってもらえる。プラスチック製キャップは0.51円/kgの費用がかかる。という意味になります。
ゴミ処分の収支構造が見える化されているのです。
更には、持ち込み先まで明記されています。ペットボトルは広島県まで持って行かれての処分。
同じプラスチック包装でも、綺麗に洗われているプラマーク有りのものは0.51円/kgの処分費ですが、汚れていたりプラマーク無しのものは53.8円/kgと10倍以上の処分費が発生します。
これを見ると、どうして洗浄や分別が必要なのか理解ができるし、みずからやろうと思えますよね。
なおプラマークが付いてるものは、製造側がリサイクル費用を事前に負担して販売している為、処分費用を抑えられる仕組みになっているのだそうです。(初めて知りました…!)
ゴミ分別やリサイクルしきれないものが最後に行き着くのはここです。60円/gと処理費はお高め。(生ゴミは各家庭でコンポストです)
食器や家電、服やそのほかはどうするの?というところについても見てみましょう。基本的には町民全員を巻き込んだ譲り合いになります。その仕組みが「くるくるショップ」です。
町民であればここに置いてるあらゆる物がテイクフリーです。氷冷剤も、電池も、なんでもありました。この日はおじちゃんが服を見てました。
持ち帰る場合には、g数を帳簿に記入して持ち帰ります。「物が溢れないのか?」と聞いてみると、「うまい具合に循環していて今のところ溢れたことは無い」そうです。
こういう仕組みになっていると、買う前に必要性をきちんと考えて購入するだろうし、リサイクル品を使うことで余分なお金も使わずに済むし、町も町民もハッピーだよなと思いました。
ゴミステーションのにコミュニティスペースがあることで、町民同士の交流が生まれているとの説明もありました。山をのんびり眺めながら新聞を読んだり、ご近所さん同士の井戸端会議があったり。
家具は京都の都ホテルがリニューアルする際に出たお下がりなのだとか。リペアして使えばまだまだ立派で風格もあります。キッズスペースもありました。ブロックは花王さんのこちらの取組みから提供頂いたものだそうです。鼻を近づけると確かに柔軟剤の香りが!
https://www.kao.com/jp/corporate/sustainability/topics/sustainability-20171207-001/
町民からのリクエストで作られたランドリールームもありました。雨天の日が多くて洗濯物が乾かなくて困る、と言う声から作られたのだそう。施設作りを町民一体となってやってきたんだなぁと感じたし、そのせいか常駐スタッフと町民のやり取りも見ていてあたたかかいものを感じましたた。
施設の説明が済んで部屋に戻る前、更にアナウンスがありました。
①滞在中に利用する石鹸を分量を自分で考えてカットしてもっていって下さい
②滞在中飲む分のコーヒーor番茶を伝えて下さい。お分けします。(コーヒーは目の前で豆をひいてくれます。いい香り)
貰える分貰うのではなく、使う分を決めて貰う。これもゴミを減らす1アクションなんですね。小さな事から意識できるんだなぁと知りました。
ここまでたどり着くのに20〜30年の歳月がかかっています。一朝一夕にはできなくても、一つずつ取り組んでいくと、こんな風に形になるんだなぁと感動しました。
上勝町を満喫
夕方からはフリータイム!車で10分くらいの距離に温泉があるので、そこでお風呂と夕飯を済ませました。近くにはキャンプ場やグランピング施設もあり、自然を満喫するにはもってこいです。6月中旬にいったので、かろうじて蛍も見ることができました。(最盛期は2.3週間前だったようです)
地元産の椎茸の天ぷらが肉厚ジューシーで美味しかったー!
徳島は関東と比べて日没時間が15分遅いので夜がゆっくりやってきます。夏至も近かったので20時頃までほんのり明るかったです。
冒頭の写真に戻りますが1階のグリーンのソファは元々老人ホームで使われていたベッドを再利用したソファ。HOTELのサインもよく見ると廃材の再利用。Hはサッシの枠組み、Oは自電車の車輪。T.E.Lは何が使われているのか観察してみてください。夜のお部屋は電気を消してランタンをつけるとさらに心地よい空間になります。(ランタンはスピーカー付きで便利) あえてテレビがないのが粋な演出で、こういう場所に来たらデジタルデトックスしたくなりますよね。デニムのつぎはぎで作られた敷物もお洒落なリメイク。カーテンも再利用です。身の回りのものをリメイク・リペア・アップサイクルすることでこんなに豊かに生活ができるんだ!と驚きでした。
外時間が楽しめるように、アウトドアチェアも用意されています。星空を眺めながらコーヒーを飲んだり語り合ったりしたくなります。
チェックアウト
翌朝、かわいらしい朝食セットが届きます。
もちろんプラ包装ゼロです。ベーグルサンドを室内でもよし、テラスでもよし、芝生スペースでもよし、好きなところで食べてエネルギーチャージ!
最後は宿泊中に出たゴミを分別して自らゴミ出しを行います。一泊なのに、まあまあなゴミの量…!
新しく移住してきた人たちにはゴミ捨ての仕組みをどうやって説明するのだろう?と思い聞いたところ「ステーションには常駐スタッフがいて一緒に仕分けを手伝います。自然と覚えてくれますよ。」との事でした。
そもそもこの土地には自然を大切にしたい、エコな暮らしをしたい、という人が集まるんだろな、とも思うし、他を思いやる余白がある場所だから出来る様になるんだろうなと感じました。自分のことだけでいっぱいいっぱいになるような場所ではないから。
ほら、この景色を見たら「あー、今日も生かされてる!」って心に余白ができるでしょう?
ほんの18時間の滞在でしたが、ゴミ処理のこと、リサイクルの可能性、町の素敵さ、をあますとこなく体感することができました。ちなみに、ゴミゼロは難しいらしく、現状リサイクル率80%だそうです。それでも、普通のエリアと比べたらすごいことです!
一度行ったら、いい意味で衝撃を受けると思います。近隣には素晴らしいパワースポットもありますので、是非リアルに足を運んでみてください。
おまけ
私は自宅に戻ってから、プラ分別を以前より細かく行うようになりました◎