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2.2 定期購入にも対応する通販事業者のECサイト : 業務とシステムの関連性

 ECサイトも一からシステム開発するというよりも、EC-CUBEのようなECサイト構築用のソフトウェアパッケージをベースに構築したり、shopifyやBASE、STORESのようなSaaSを利用して手軽に構築する例が増えてきています。ECサイトも定期購入にまで対応しようとすると、顧客の要望に対してどこまで柔軟に対応できる定期購入を実現するのかによって、システムの実現方法も変わってくる面があります。

a.    必要とされる業務理解

ECサイトで、必要とするシステム構成が変わってきてしまう「業務」内容のポイントというと、定期購入においてユーザに対してどこまでの柔軟性を認めるのか、どのような機能まで用意するのかあたりだと思います。
 
【機能例】
初回割引 / 契約回数縛り / スキップ機能 / お届け先住所の変更 / 支払情報の変更 など

定期購入というと継続利用を始めてもらえば継続し続ける割合が高いという特性上、初回は割引をして定期購入を開始してもらうことを誘引することはよくありますし、毎月の定期購入であっても、来月はスキップしたいというユーザニーズはよくあります。ユーザが引っ越しをすれば、これまでの定期購入は終了して別途新しい定期購入の申し込みをしてそのお届け先を新しい住所にするという手続きをしなくても、これまでの定期購入での登録お届け先の変更ができればユーザにとつては便利です。ユーザにとってどこまでの柔軟性を認めるのか、どこまでの機能を用意するのか、それによってシステム要件もいろいろ変化します。

Shopify (https:// www.shopify.com/jp)

b. 必要とされるシステム知識

もちろん一からシステム開発すれば一番自由度も高く、機能制約もないわけですが、最近のトレンドとしては、プラットフォームにEC構築のSaaS/ASPサービスである「shopify」などのSaaSを利用する形態が多くなっているようです。商品がテレビで紹介されるあるいはキャンペーンで広告出稿なども行っているような場合などにありがちな「突然のアクセス急増」にも強い、高い安定性の環境がshopifyであれば月額29ドルで利用できるという費用対効果の高さが評価されています。デザインの自由度や多彩なアプリ(プラグイン)で機能を追加できる点も魅力です。

 一方で、社内システムなど外部システムとの連携・カスタマイズが必要となると、オープンソースのEC構築ソフトウェア「EC-CUBE」などが選択肢となります。自由度は高くなりますが、SaaSでは不要だったサーバの用意が必要となります。またEC-CUBEの各種設定から追加機能などを実装するためにはPHPによるプログラム開発が必要となります。
 一方で、ECサイトの掲載内容の自由度・動的要素なども含めた自由度を比較的簡便に実現したいという場合には、WordPressにEC機能プラグインの「Welcart」を組み込む構成なども便利な構成です。
 そして、手軽に小規模に始めるのであれば、「STORES」「BASE」などのSaaS/ASPサービスが選択肢となると思います。各SaaSではどのような機能は実現できて、どのような機能は実現できないか、EC-CUBEではどこまでの機能は実現できるのか、などのシステム知識を求められる場合があります。

EC実現のシステム構成

c. 本タイプ案件における業務とシステムの両面からのWeb構築

手軽に小規模に定期購入のECサイトを始めたいのであれば、「STORES」などでも定期購入への対応はしていますので、STORESのようなSaaS/ASPサービスの利用をはじめに考えるとよいと思います。STORESであれば月額費用0円のフリープランなども存在しますので、初期投資をおさえることができます。

 ShopifyもSaaSですのでサーバを用意する必要はなく、アプリというものがあり、ECサイトに様々な機能を追加することができます。 アプリには無料と有料のものがあり、数は4100以上あるため、BASEやSTORESと比べて自由にECサイトをカスタマイズすることができます。より機能拡張性が高いといえると思います。定期購入としての要件がSTORESやBASEでは満たせない場合、あるいは決済手段としてSTORESやBASEでは対応していない決済手段にも対応したい場合など、shopifyがつぎのプラットフォームとしての候補となると思います。

 さらに社内システムなどの外部システムとの連携などのカスタマイズが必要となるとオープンソースのEC構築ソフトウェア「EC-CUBE」を利用したシステム開発を行うという形態になると思います。ただしある程度の規模のシステム開発案件となり、サーバなども用意する必要があります。

 ECにおける一からのシステム構築は、かなり特殊な形態のECの場合に限定されるようになってきているかと思います。


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