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1.3 Web構築という業務に求められる内容の変化

Webサイトやスマホのアプリが取り扱う範囲がさまざまな業務に広がっていき、構築ツールやSaaSなどもさまざまなものが増えていくなかで、Web構築のプロセスも案件によってさまざまなパターンが増えてきて、求められる能力やスキルが変化してきています。基本的にはコンテンツ・情報設計やデザイン・html制作に関する業務は引き続き重要ですが、なんらかシステム・システム開発にかかわる面が増えてきているといえます。
ただ、単純に情報サイトのWeb制作案件の割合が減ってきてさまざまな業務まで扱うシステム開発案件の割合が増えてきているというわけではなく、各種のツールを使うことによってかなり多方面のマーケティング活動までカバーしながらシステム開発はほとんどない場合もありますし、MAツールを使うことによって基本的にはWebサイトを構築してしまうものの外部との連携のためにAPI開発は行うようなこともあります。

 90年代にWebが登場したときには、Webのベンダーとしての業務の中心にはクリエイティブがありました。多数のWebページを作って多くの情報を提示しながら、これまでの紙媒体とは異なり頻繁に更新することもできるWebという媒体を作る業務というところがあり、多数の情報を扱い、コンテンツを用意してWebの表現特性に合わせて情報設計を行いデザインして最終的にはhtmlのWebページを成果物として制作していました。 
もちろん、Webの初期からWebはシステムでもあるので、サーバの設定などから問い合わせフォームやデータ分析などのエンジニアリング面はWebにはつきものでしたが、Webのベンダーの業務の中心はクリエイティブで、一定規模以上のシステム開発が必要な案件はシステム開発会社やSIerが対応するものというすみわけがあったかと思います。

Web構築プロセス

 ところが、Webの取り扱う対象がさまざまな業務システムに広がっていきながら、それに対応したツールやサービスなどもいろいろ登場してくる中で、大規模なシステム開発は必要としないものの、さまざまな業務のシステム化を行うという業務が増えてきています。

大規模なシステム開発はないものの、さまざまな業務のシステム化を行うWeb業務
 ・マーケティングから営業や会計・プロジェクト管理などさまざまな業務のシステム化
 ・一から大規模なシステム開発を行うわけではなく、多数のSaaSやツールを接続するシステム開発が主

デザインや情報設計・コンテンツ企画などはあまり求められず、一方で顧客の業務に対する理解・把握は求められ、システムに関する知識も求められる案件や業務が増えてきています。もちろん各案件で取り扱う業務は大規模なシステム開発ではなく、「BtoBの企業の会社HPをSalesforceと接続する」等のひとつのシステムともうひとつのシステムを接続する程度のものが多いわけですが、ある案件ではマーケティングと営業のシステム接続だったのが、次には営業と会計のシステム接続となったり、さらにその次の案件では営業と生産管理のシステム接続となっていったりして、Webディレクタ/プロデューサとしてさまざまな業務のシステム化を扱うことが増えてきていると思います。

新しいタイプのWeb構築

このような案件は新しいタイプの業務であり、これまでのWeb制作会社で扱っていた業務とも少し異なりますが、開発会社が扱っていた業務とも異なります。特にシステム開発会社やSIerは多数の技術者をかかえていて、多数のエンジニアが対応することが必要な大規模なシステム開発を志向している企業体でもあり、彼らにとっておいしくない案件ともいえます。Web制作会社にとっても新しいタイプの業務である面はありますが、どちらかというとWebというのはそのはじまりからさまざまな技術やサービスが次々と登場する中で、取り扱う対象が変わっていきながら、そこで働く人間も入れ替わっていき、基本的には新しいものが好きな人間が集まっているところがあるので、比較的向いているかもしれません。

また、多くの情報を掲載するわけでもなく多数の画面があるWebサイトを作るわけではない場合でも、パソコンやスマホなどで画面を操作する以上、よいユーザ体験を作り上げることは重要で、そのためのUI設計・画面設計などは必要となりますので、そのような面からもこれまでのWebのベンダー業務の先に登場してきた新しいタイプの業務という見方ができるかと思います。ただし、ユーザ体験というのが一般消費者の購買体験やウェブブラウジングではなく、働く人間としての企業業務の中での営業事務・会計業務・工程管理業務などになるのが異なります。どちらにしても、このような新しいタイプの業務を取り扱う新しい企業がこれからはどんどん出てきてくると思いますが、Webディレクタ/プロデューサとして働いていくことを考えている人にとっては意識してほしいトレンドのひとつと思います。

システム開発会社・SIerとWebベンダー


Webディレクタとして次のステップをさがしている方たちへ

これからのWeb構築・Webディレクションとして、業務にまで踏み込んでディレクション/プロデュースすること、それが近年のバズワードであるDXにもつながること、そしてWebの進化とともにWeb構築の各種ツール/サービスやSaaSが広がってきていることにしたがって、業務とシステムの両面からWeb構築・運用していく人間が求められていくこと、そのためにどのような知識や能力を身に着けていくとよいかについて解説している「マガジン」です。