アクセス解析の代表的な分析手法
LP (Landing Page)、ECサイト、会社HPというWebサイトのタイプ別にどのようにアクセス解析していくことができるか、解説していく前に
Webサイトが設計時に想定した仮説通りに利用されているか、ユーザ動向が想定通りであるか、仮説の検証を行うことのできるさまざまな機能がGoogle Analyticsのようなアクセス解析ツールには用意されていて、それらを利用した代表的な分析手法を解説していきます。
1. 流入分析 (1) 参照元分析
流入分析はWebサイトへの集客傾向(どこからどのような人が来ているか)を知ることです。一般に分析は、大きく見ることから始めて、ブレイクダウンしてみていくものですが、Webサイトの集客傾向の概要を把握するために、まずは以下の3つに分類してみます。
「参照元なし(ノーリファラー)」:
URLの直接入力・お気に入りからのアクセス等
「検索エンジンからの流入」:
GoogleやYahooなどからの流入
「検索エンジン以外からの流入」:
検索エンジン以外のWebサイトからの流入
「検索エンジンからの流入」は新規のユーザーを増やすために重要な参照元です。一方で、「参照元なし」が多い場合は一般にリピーターの割合が多いことを表しています。繰り返し利用してもらう人の割合を増やしたい場合には「参照元なし」での流入量のトレンドをみていくことが重要です。
どのようなWebサイトからの流入があったのかをまず大きく把握するには、参照元をドメインレベルでまとめてみます(「参照元ドメイン」等のメニュー)。
ドメインレベルで気になった参照元があった場合には、次のステップとして参照元をURLレベルで確認します(「リファラー」等のメニュー)。
URLレベルで参照元を確認することにより、ある外部Webサイトの複数箇所に計測対象のWebサイトへのリンクがある場合には、どのリンクからの流入が多いかまで分かります。
キャンペーンや広告出稿・あるいはWebサイトリニューアルなどを行わなければ、参照元はそれほど日々変化するものではないので、毎月などの定点観測としては、新しい参照元がドメインレベルで出現してきていないかなどを見ていきます。
また、特に施策も行っていないのに突発的なアクセス増加などがあった場合には、その原因を把握するために、まずは参照元を確認することが重要です。アクセスの増加につながっている原因を探る手がかりになります。
2. 流入元分析 (2) 検索エンジンからの流入
多くのWebサイトでは検索エンジンからの流入が一定以上の割合を占めます。
検索エンジンでの検索結果順位の確認
検索エンジンからの流入が期待より少ない場合には、「ターゲットキーワード」(検索して来てほしいキーワード)でのGoogleやYahooでの検索結果順位を確認することが重要です。検索結果の1ページ目に対象Webサイトのページが出てこないようであれば、SEO対策を検討してみる必要があるかもしれません。
検索キーワードの確認
検索エンジンからの流入をブレイクダウンして見ていく代表的な方法は、「検索キーワード」ごとの流入量を見ることです。「どのキーワードで検索して流入してきているのが多いのか」を確認することにより、予想以上に流入が多いキーワードや予想以下しか流入がないキーワードが見えてきます。
例えば、突発的にWebサイトのアクセスが増えた場合に、参照元として検索エンジンからの流入が多かった場合に、検索エンジンのキーワードも見ていくと、特定のキーワードでの検索が急に増えていることが分かる場合があります。
あるキーワードでの検索からの流入が増えるということは、そのキーワードに関連したことを探している人が増えたということです。広報発表・新製品発表・あるいはイベント・事件などに関連して一般の人の興味が特定のものに向くとその関連キーワードでの検索と流入が増えることがあります。
もし、ある内容に関連したキーワードでの流入が増えて、それが一過性ではなく継続しているにも関わらず、そのユーザーの興味に対応したページが十分にない場合には、Webサイト内にその内容に関連したページを追加することを検討したほうが良いでしょう。一方で、ある内容に関連したページ追加の必要性を検討している時には、その内容に関連したキーワードでの流入を確認してみると、その内容を求めているユーザーが多いか少ないかを確認することができます。
3. 流入分析(3) プロモーション流入
Web広告など、外部流入を増やすプロモーション施策の結果検証分析もアクセス解析ツールで行うことができます。
Web広告を出稿すると、広告代理店が広告効果測定結果を報告してくれますが、それらにはWeb広告のクリック数(=広告によるWebサイトへの流入数)あるいはそれとともに目標とする会員登録申し込み数などのコンバージョン数・コンバージョン率などまでしか含まれていないことが多いです。
アクセス解析ツールでは、そのWeb広告から流入したトラフィックの直帰率などの、Webサイト内行動もモニタすることができます。
Web広告の効果検証は、まずは広告代理店などからの報告データを確認した上で、もしある広告の効果が振るわなかった場合には、その広告からの流入トラフィックに対するWebサイト内行動をアクセス解析ツールで確認すると理由をより深堀して分析することができます。
広告からの流入分析のためのパラメータの付与
特定のWeb広告からの流入をアクセス解析ツールで識別するために、よく行われるのが、Web広告をクリックしたときのリンク先にパラメータを付与することです。パラメータとは、URLの後ろに?ではじまるパラメータをつけたものです。このようにすることで、メルマガからの流入のように参照元データが取得できない場合でも、Web広告ごとの効果を測定することが可能となります。
Web広告の効果計測指標や分析視点
Web広告の代表的な計測指標は以下の3つです。
・インプレッション数: どれだけ広告が表示されたか
・クリック数: どれだけクリックされたか
・コンバージョン数: どれだけWebサイト内での目標を達成したか
上述の通り、コンバージョン数やコンバージョン率が期待より少ない場合などは、アクセス解析ツールで広告からの流入の直帰率などを見ていくと、クリック回数は多くてもすぐに離脱してしまっている等、要因を把握できます
4. サイト内分析(1) 入口ページのシェア
企業WebサイトやそのWebサイト名自体が有名な場合は、会社名やWebサイト名の検索からWebサイトのトップページへ流入してくる割合が高いのですが、検索エンジンの進化もあり、トップページ以外がWebサイトへの入口となる割合もかなり高くなってきています。
例えば商品名やその商品ブランド名が有名な場合には、それらの商品名や商品ブランド名でユーザーが検索して、直接商品情報ページに入ってくる場合が多くなります。
また、個別商品情報のページ、導入事例ページ、あるいは用語集ページなどが多数ある場合には、それぞれのページ群のアクセスをグルーピングして集計する視点も必要となります。ひとつひとつのページのページビュー数は少なくとも、まとめると大きな割合を占めていることがあります。
グルーピングして集計する最も一般的な方法は、Webページをカテゴリごとにグルーピングして集計して見ることです。多くのアクセス解析ツールでカテゴリごとの集計機能を持っています。カテゴリ単位でのページビュー数・訪問回数・直帰率などを確認することができます。
主要入口ページに対する確認のポイント
トップページ以外に主要な入口ページがある場合には、その入口ページの直帰率をまずは確認するのが重要です。また、個別商品情報ページ群をグルーピングするとランディングページの上位にランクインするページビュー数となっている場合には、そのページ群の直帰率を見てみるとよいでしょう。
トップページ以外に直接流入してくれているユーザに対して、他のページも見てもらえるような画面設計やサイト間リンクの設定が必要であることが分かる場合があります。
5. サイト内分析 (2) 直帰率を改善する
各ページの直帰率をモニタすることにより、どのような施策・対応をとるべきかが見えてきます。
アクセス解析ツールによっては、上図のようなマトリックス表示(散布図やバブルチャートの表示)を行えるものもあります(例 Adobe Analytics)。
また、上記の分析は前ページ(「入口ページのシェアを見る」)にも記述した通り、製品ページ・用語集ページなどにグルーピングして分析したほうが有効な場合が多いので注意してください。
Webページの内容によって評価を変える
直帰率分析で必要な視点は、Webページの内容により評価を変えることです。Webサイトのゴールとなるページでは直帰率が高くなってもそれほど問題はありませんが、トップページや主要コンテンツのトップページなどの直帰率が高い場合は伝えたい情報がユーザーに伝っていないおそれがあり、改善が必要です。
※プロモーション施策を行った場合のWebサイトの直帰率の変化
キャンペーン等で外部プロモーションを行うと、Webサイトのアクセス(ページビュー数、訪問回数、訪問者数)は増えますが、一般に直帰率は上がります。
もちろん、ピンポイントに本当に関心のあるユーザーに絞って集客できていれば、直帰率はほとんど上がらないはずですが、それでもより広く集客を行うほど、あまり興味がないユーザーも流入してきてしまいますので、どうしても直帰率の値は上がります。
6. サイト内分析 (3) 検索キーワード別直帰率
ページ別の直帰率だけでなく、検索キーワード別の直帰率のデータも活用すると有効です。
ここでもグルーピングすることがききます。ここでは検索キーワードのグルーピングが有効です。会社名での検索、自社商品名での検索、一般名詞での検索というように分類して分析します。
会社名や商品名などブランドワードで検索している場合
会社名や商品名などブランドワードの場合には、一般的に指名でアクセスしているので直帰率は低くなります。もしそのようなキーワードで直帰率が高くなっている場合があれば、改善が必要です。
例えば、検索キーワード”ゆうパック”での流入の直帰率が高くなっている場合は、ゆうパックで検索したユーザが期待しているコンテンツがWebサイト内にないために直帰している可能性があるので、確認が必要です。
一般名詞のキーワードで検索している場合
流入量が多い割に直帰率が低くなることが多いのは、一般名詞のキーワードで流入している場合です。商品カテゴリー名が代表的です。
(例 自動車保険 投資信託)
もし、一般名詞のキーワードで多数流入しているにも関わらず、直帰率が低い場合には、商品名などの指名で来ているユーザーには目的をすぐに達成できるナビゲーションを、一般名詞のキーワードで来ている潜在顧客向けには信頼のおけるWebサイトであるという印象を与える、Webサイト内のどこで何ができるかを知らせるナビゲーションを提示する、といったページの改善を行うと良いでしょう。
直帰率をもっと細かくセグメントして見ることもできます。入口ページと参照元ドメインの組み合わせ、検索キーワードと入口ページの組み合わせ別に直帰率を見てみる方法が有効な場合もあります。
7. サイト内分析 (4) 人気ページランキング
どのアクセス解析ツールでも行える分析が、アクセス数の多いページのランキング集計です。Webサイト内のどのページがよく見られているかが分かります。
ページをカテゴリ別などにグルーピングできるアクセス解析ツールであれば、商品関連ページ・ニュース・会社情報などに分類して、アクセス傾向を見るのも有効です。商品関連ページ全体でどの程度見られているか、Webサイト全体のアクセスが減っているときにどのページ群のアクセスが特に減っているのか、などを確認するとユーザーアクセス傾向をより理解することができます。
もちろんWebサイトのページビュー数やカテゴリ・ページ群のページビュー数を見る場合には、含まれるページの数が多いほどページビュー数は多くなりますので、Webサイト間のアクセスを比較したり、カテゴリ間のアクセスを比較する場合には、ページ数の違いを踏まえて評価しましょう。
企業Webサイトなどでは、トップページから入ってくるユーザーが多くなりますが、そのようなWebサイトではユーザーの流れはトップから下の階層へ順番に降りていく形になるので、各ページのページビュー数も階層に従って減っていく感じになるのが普通です。そのようなあるべき姿にならず、下の階層にも関わらずアクセス数が多いページがあったり、上の階層にも関わらずアクセス数が少ないページがある場合には、ページのデザインや表現、ナビゲーション、リンク構造などをチェックしてみましょう。
8. サイト内分析 (5) 経路分析・シナリオ分析
多くのアクセス解析ツールは、経路分析のメニューを実装しています。
経路分析で最もよく実装されている機能は、特定のページを指定すると、
・そのページの遷移元の主要ページおよび各ページからの遷移数・割合
・そのページからの遷移先の主要ページおよび各ページへの遷移数・割合
を表示してくれるものです。
トップページをはじめ、各ページについてどのようにそのページを見てもらい、どのような人にはどのページに遷移してほしいか各ページの設計がある場合は、実際のユーザー経路結果を比較することにより、ページのデザインやナビゲーションの改善ポイントなどが浮かび上がってきます。
シナリオ分析
アクセス解析ツールの中には、想定したシナリオ通りにどれくらいのユーザーが遷移しているかをレポートしてくれるものがあります(例 SiteCatalyst)。
例えば、トップページ ➔ 商品トップ ➔ 商品詳細 ➔ 資料請求 ➔ 請求完了
と言うシナリオを想定している場合に、遷移状況を集計して一つの画面に表示してくれます。
目標ページまでのたどってほしい経路が明確な場合の分析に有効です。
9. サイト内分析 (6) サイト内検索の活用
サイト内検索機能を提供するWebサイトの場合は、ユーザーのサイト内検索機能の利用動向からも様々なことが分かります。
検索結果ページがゼロ件
サイト内検索の結果を確認することにより、一番明確に分かるのは、「検索結果ページがゼロ件」の検索キーワードが存在する場合です。
そのキーワードに関連する内容を求めているユーザーがいるのに、それに該当するページがWebサイト内にないか、またはユーザーが探しているキーワードがこちらの想定しているものと違っていることなどが考えられますので、適切な誘導策を施すか、新たなページを追加したり、キーワード連動表示設定を行うなどの対策が求められます。
サイト内検索上位のキーワードが検索エンジンの検索キーワードで下位
サイト内検索のキーワードランキングで上位のキーワードが検索エンジンでの検索キーワードランキングでは下位にあり、検索件数が少ない場合があります。
このような場合は、訪問者のニーズがあるのにWebサイト内でそのキーワードに関するコンテンツが少ないか、あるいはSEO的にうまくいっていないことにより検索エンジンからの流入が少なくなっていることが考えられます。
Webサイト内のコンテンツを追加・充実させたり、SEO対策を強化させる必要があるかもしれません。
サイト内検索上位のキーワードが検索エンジンの検索キーワードでも上位
外部から集客できているキーワードであり、Webサイト訪問者のニーズもあることを意味しますので、このキーワードに関連するコンテンツに対する導線を太くして、ユーザーがサイト内検索を使わなくても容易に見つけられるようにする必要があります。
※サイト内検索の検索キーワードランキング情報を得る方法
サイト内検索機能は、アプリケーションソフトをインストールして利用する場合と、ASPサービス
を利用する場合がありますが、いずれの場合にもサイト内検索の機能として検索キーワード
ランキング情報を管理画面などから参照できることが多いです。また、Webビーコン型のアクセス解析ツールで、サイト内検索リクエストを発する際にアクセス解析の集計サーバーに検索キーワードの情報を送るように実装することにより、アクセス解析ツールでも参照できるものもあります。
10. コンバージョン分析
興味を持ってくれたユーザーをできるだけ取りこぼしなく目標まで到達させると言う視点での分析も、アクセス解析では可能です。
コンバージョンへの道筋は二つに分けて分析
あるWebサイトの目標が、商品の資料請求をしてもらうことだとします。
このような場合、目標(コンバージョン)への道筋を大きく二つに分けて分析すると良いでしょう。一つが資料請求フローに到達するまでで、もう一つが資料請求の完了ページまでのフローです。
一般的に、後半部分は、ユーザーにたどってもらいたい画面遷移は一直線で分岐がありませんが、前半部分はユーザーがいろいろなページを見ながらいろいろな遷移をします。
前半部分は二つの視点から見る
前半部分の分析の代表的な方法は二つあり、その一つは”4-2-8 経路分析・シナリオ分析”で述べたシナリオ分析です。ポイントとなる主要ページのみを指定して、どれだけのユーザーがアクセスしているか確認します。
もう一つは経路分析で、前半部分の最後のページの「前のページ」を順にたどっていくと言うものです。遷移元として多いページのさらに前のページを順に確認していくことにより、上図であれば資料請求トップにたどりついたユーザーはどのようなページをたどってきた人が多いかが分かります。
後半部分は各ステップでの離脱を見る
上図の後半部分については、基本的に各ページから次のページに100%遷移してもらうのが理想です。実際には、ある程度の割合で離脱していきますので、この各ページ間のステップごとの離脱率をみていき、離脱率が大きいところがあればページの作りや入力のしやすさなどを改善していくことを考える必要があるということになります。