演奏と科学の切っても切れない関係
Q:ギターは、どこを押さえるのが正解でしょうか?
ギターを長く演奏している人は、何を今更…って思ったかもしれません。
わたしもずっと「フレットのキワを押さえるんだよ!」と言われてきたので、疑う余地もなく、当たり前のことだと思っていたのですが…
ギター講師としてレッスンをするようになって、勘違いをしている人がそこそこいるなーということに気づきました。
ある日のレッスンでも、大学生の生徒さんに「フレットのキワを押さえてくださいねー」とお伝えすると、
「えっ、真ん中じゃないんですか?先輩に真ん中を押さえろって言われました」と。
なるほど…「真ん中」という概念自体の揺るぎない説得力…
たしかに、ギターの指板ってマス目っぽい。感覚的に、真ん中を押さえたくなるのもわかる。
よくあるコード表も、押さえる場所は、真ん中にマークされていますし。
うーん、「キワ」というだけで、だいぶ分が悪いですね…(キワが正解なんだけれども)
音楽。 でも、科学
ギターの演奏は、当然、教科でいうと音楽として扱われますが…
ちょっと見方を変えて、科学の視点を持つと、「なぜフレットのキワを押さえるのか」がグッと理解しやすくなります。
科学は、これに限らず演奏の助けになることが多いんじゃないかと思うんです。音を出すということ自体は、物理現象なので。
うん、学校の授業って、こういう時のためにあるんですね。
ギターは弦をはじいて振動させれば音が出るし、振動を止めれば音が止まる。「弦の振動」これがギターの音が出る仕組みです。
そして、「なぜフレットのキワを押さえるのか」に関係する科学の知識が、こちら。
「弦を押さえる」目的は、音の高さを変えるため。指で押さえることで、弦の振動する部分の長さを変えているんです。
じゃあ、「振動する部分」の長さがどう決まるのかというと…その重要な役割を担っているのがフレットです。
フレットの本当の仕事
フレットはその見た目から、押さえる場所のガイド的に扱われますけど、それだけじゃない。もっと重要な仕事があります。
それは、音の高さを決めることです。
ギターは決まった位置にフレットが打ってあることで、バイオリンのように指の位置をミリ単位で調整することなく、狙った高さの音を簡単に出すことができます。
フレットは、ビギナーに優しいステキなパーツなんです。
そのかわり、弦がしっかりフレットに当たるように指を置く必要があります。
というのも、指ではなく、フレットの方が弦の振動する部分の長さを決めているからです。
これが、フレットとフレットの真ん中を押さえることで、指がフレットから離れてしまうと…十分な力が伝わらず、弦がフレットからわずかに浮いてしまいます。
弦の振動する部分は「指からブリッジ」という状態です。フレットが仕事をしていないので、弦をはじくと、振動がフレットに触れて「ブブブ」というノイズに。
フレットのキワを押さえれば、弦がフレットに密着して、フレットが仕事をしてくれるので、弦が浮いてノイズが出ることもなくなります。
そして、弦の振動する部分が「フレットからブリッジ」と固定の長さになるので、ミリ単位の調整が必要なく、狙った高さの音が出せるんです。
「ギターどこ押さえるか問題」に科学を持ち込むと、こういう見方になります。
演奏の中に科学の視点を持つ
この話の延長として、レッスンでお伝えすると驚かれるのが、押さえている指からヘッド側(はじかない方)は何をしていても音は変わらないということです。
弦が振動していない部分、つまりヘッド側は、出している音に全く影響しないので、他の指で触っていてもOK。なんなら、ピックが挟まっててもOK。
「音が鳴っているのは振動している部分」ということを知っていれば、そりゃそうですよね、という感じですが…
演奏中、頭の半分以上は音楽のことを考えているわけですから…科学の入る余地なんてないですよね。
特に始めたてで、楽器と仲良くなっている最中だとしたら当然です。そんなこと考えないもん。
知ってはいるんだけど、使えていないという状態。
もちろん、科学の知識だけあっても、演奏することはできませんが…
演奏の中に科学の視点を持っておくと、上達のきっかけになったり、新しい発見があるかもしれません。
ほら、スポーツ科学もあることですし。演奏科学だって、もっとメジャーになってもいいんじゃないかと。そんなことを、わたしはボンヤリ考えています。
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