看護師国家試験 疾病の成り立ちと基本的な病変 3
循環機能(心臓)の障害
1.先天性心疾患
胎生期に心臓および大血管の分化・発育が障害されて生じた心臓および大血管の奇形をいい、遺伝性のもの、環境因子によるもの、両者の相互作用によるものなどが考えられているが、不明の場合も多い。
発生頻度は出生の約0.8%で、家系内に患者がいる場合はその2‐ 5倍発生率が高くなる。
先天性心疾患は、無チアノーゼ群(右心症、大動脈狭窄など)、遅発性チアノーゼ群(心室中隔欠損、心房中隔欠損、動脈管開存など)、チアノーゼ群(ファロー四徴症、大血管転位、総動脈幹症など)の3群に大別される。
疾患の種類、程度により発症の仕方や症状はさまざまで、治療法も異なる。
2.心房中隔欠損症(ASD)
心房中隔の形成不全による欠損孔が左房と右房間の交通路となる奇形で、左→右短絡のためチアノーゼは示さず、乳幼児期に自然閉鎖することがある。
多くは思春期まで無症状で、聴診上、胸骨左縁第2-3肋間で収縮期雑音とⅡ音の固定性分裂が聴取され、左→右短絡血量増加とともに胸部X線所見は右房・右室拡大と、肺動脈影の増大を示す。
心電図や心エコー検査で、右房・右室の拡大に伴う所見を認め、心エコー検査(カラードプラ法)で欠損孔を通過する短絡血流がみられ、心カテーテル検査では右房内酸素飽和度上昇、加齢による肺高血圧合併の増加がみられる。
治療は欠損孔が小さい場合にはカテーテルを利用した非開胸的欠損孔閉鎖を行い、高短絡血流例では肺高血圧の進行前に直接縫合またはパッチ縫合を行えば術後予後は良好である。
3.心室中隔欠損症(VSD)
心室中隔の欠損孔により左室と右室間に交通路をもつ奇形で、先天性心奇形の20%を占め、発生に男女差はなく、欠損孔のサイズにより径0.5cm未満の小型VSD、0.5‐2.0cmの中型VSD、それ以上の大型VSDに区分される。
小型VSDは強盛な収縮期心雑音が特徴的、自覚症に乏しく、5歳までに自然閉鎖する例が多いが、欠損孔を左→右ジェット血流が残存する例では加齢とともに感染性心内膜炎合併の危険が増大する。
中型VSDでは、カテーテル検査で左→右短絡率30%以下、肺/体血流量比1.5以下では自覚症はほとんどなく欠損孔に大動脈騎乗をもつアイゼンメングル病や、経過中に肺高血圧を合併するアイゼンメンゲル複合(症候群)では、運動時チアノーゼ、血痰の出現などがみられ、放置すると予後不良となる。
肺血管抵抗が体血管抵抗の半分以下のVSDは右側よりパッチ閉鎖手術の適応となり、手術予後は良好であるが、肺高血圧の進行したアイゼンメングル病・症候群には保存的に肺動脈幹絞扼手術が行われる。
4.ファロー四徴症
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