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慢性咳嗽の治療薬 “リフヌア” について
こんにちは、上西内科副院長の中畑です。
今回は新たに発売になる慢性咳嗽の治療薬である、リフヌアについてまとめました。
もともと慢性咳嗽とは2ヶ月以上持続する咳という意味ですが、リフヌアが適応になる慢性咳嗽とは、気管支喘息や逆流性食道炎など咳の原因になる治療をしても残る難治性の咳になります。
リフヌア (一般名ゲーファピキサント) は、薬理作用としては選択的P2X3受容体拮抗薬で、気道の迷走神経のC線維に見られるP2X3受容体を介した細胞外ATPシグナル伝達の遮断により、感覚神経の活性化及び咳嗽を抑制します。原因が何であれ、神経への作用にて咳を抑えるというものになります。
ゲーファピキサントの有効性と安全性を評価した大規模臨床試験のデータになります。
COUGH-1試験・COUGH-2試験という、いずれも二重盲検第3相試験の2つをまとめた論文です。
難治性の慢性咳嗽または期間1年以上の原因不明の慢性咳嗽と診断された18歳以上の被験者を登録されています。参加者はスクリーニングとベースライン時に咳嗽重症度VASスコアが40mm以上であることが条件とされています。
(10段階とすると4以上の咳の苦痛)対象者は、プラセボ、ゲーファピキサント15mg1日2回、ゲーファピキサント45mg 1日2回の3つの治療群にランダムに割り付けされています。
COUGH-1試験では12週間、COUGH-2試験では24週間の試験期間、その後延長期間を経て、両試験とも最大52週間の治療が行われました。
主要評価項目は、COUGH-1試験では12週間、COUGH-2試験では24週間における24時間咳嗽頻度の平均変化量となっています。
24時間の咳の量を録音できる機械を装着してそれの1時間平均を評価しています。
結果になりますが、両試験においてゲーファピキサント45mg群では、咳の頻度は、プラセボ群と比較して、投与12週時(COUGH-1)(プラセボと比較して18.45%低下、95% CI [-32.92, -0.86; p=0.041])および投与24週時(COUGH-2)(プラセボと比較して14.64% 低下、95% CI [-26.07, -1.43; p=0.031])において統計学的に有意に低下しました。
いずれの第3相試験でもゲーファピキサント15mgを1日2回投与した群では主要有効性評価項目は達成されませんでした。
つまり、45mg1日2回が必要との判断になりました。
副作用に関しては以前から別の論文でも指摘されていますが、味覚障害がメインになります。
味覚関連の有害事象は15mg投与群(COUGH-1が10.7%、COUGH-2が19.5%)やプラセボ群(同3.3%、8.3%)と比較して45 mg投与群(同58.0%、68.6%)でより高い発現割合で認められました。
味覚関連の有害事象のほとんどが軽度から中等度と判断されております。
つまり、約半数に軽度を含め味覚障害が出るとのことです。
効果としてはかなり期待できる薬剤ですが、やはり味覚障害が半数というのがネックになります。
咳を止める代わりに味がしにくくなるのをどこまで受け入れるかという相談になります。
現状は長く咳が続き、苦痛が強い人におすすめする形になるかと考えます。
いずれにしろ、咳の原因は多岐に渡ります。
喘息や逆流性食道炎の治療をトライしても改善せず、CTでも明らかな原因が掴めない方は、専門医である我々でもしばしば出会います。
今まではそういった方に手があまりないのが現状でしたが、一つの手段になると考えております。
また、第二世代の味覚障害が緩和された選択的P2X3受容体拮抗薬も治験が進んでおり、今後の進化にも期待されます。
愛知県小牧市
糖尿病・甲状腺 上西内科
副院長 中畑征史