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浮遊
気のせいかもしれないけれど、どこにいても、少し浮いている感覚があるのです。飲みの席でも、会社の中でも、旅先でも、実家でも。シェアハウスに泊まってみたり、気になる求人に応募してみたりするけれど、何だか違うと思ったり。骨がないかのようにぷらぷらした足元と、苔がむしたような固い表情で、種目はアルファベットで「変わった人」に分類されているそうです。
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だから、自分とはぜんぜん違うな〜、という人にもよく出会います。例えば、何でもしっかりして、肩書もあって、責任を全うできる人。その人は、ある日仕事でつらくなり、休職したあと異動してきました。気丈に振る舞っているように見えたけど、ある日「まだダメみたいです。」と泣き笑いで報告があり。寄せては返す波のように、リズムがあるのが生き物だから。そうやって、過ごし方を覚えているようです。
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それでも、たまに自分と近い人とも出会います。相談があるといったその人は、私は人と関係性を築けないと悩んでいます。僕もそうなのよ、と頷きながら、だから入院をしたいという彼女に、人間を知るには関わるのが近道よと説きます。誰とでもうまくやる人を見て、劣等感で溺れそうになるけれど。隠れては触るクマノミのように、怯えて知るのが生き物だから。そうやって、周りとの付き合い方を学んでいくのです。
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こんな自分にも、沈んで底にいるような夜もあるのです。お風呂に入っても、音楽を聞いても、人が心配してくれても、どうして自分は、人よりなめらかにいられないのかと、気持ちがぴくりとも動かないこともあるのです。ところがそんな夜の先に、奇跡のような山脈の茜空とか、再生数の少ない、でもはっとするような曲に出会ったり。浮いては沈むくらげのように、良いことも悪いこともあるのが人生だから。そう歌いながら、「変わった人生」を虹色に漂っていきたいですね。