ツアーガイドの思い出 第十四話
ごめんなさい。
キャンセル拾いの方に拾っていただけますように。
18時で押さえていたレストラン櫻のプライオリティシーティングをキャンセルした。
メディテレーニアンハーバーからアメリカンウォーターフロントへ写真撮影も兼ねながらゆっくり移動、タートル・トークでクラッシュの話術を楽しみ、ショーレストランまで約1時間弱の余裕があったのでシェリーメイのグリーティングに赴いた。50分近くは待つかと思われたが、なんと20分待ちである。無事にシェリーメイと会え、アーント・ペグズ・ヴィレッジストアでダッフィー&フレンズのグッズを見ることができた。社長のお子さんはダッフィーとシェリーメイのぬいぐるみバッジを手にしてとても喜んでいた。
ケープコッドのショーレストランはぼくらも初鑑賞であった。
A席の範囲が広く、席の場所が心配であったがかなり観やすい位置だった。
ダッフィーとその仲間たちが、それぞれの特技を活かして一つのものを作り上げる一連の物語にグッときた。音楽もとてもキャッチーでエモーショナル。お食事を楽しみながらゆっくり過ごすことができた。
ショーの最中、社長は大きな音が鳴っても起きないぐらい爆睡だった。
「朝から張り切っていたので、きっと疲れたのでしょうね。そっとしておいてあげましょう。」
奥様がそう言ってあたたかく見守っていた。
「社長に無理させてしまってすみません。」
「いいえ、そんなことないんですよ。夫も娘のためならなんでもやるって言ってましたので。」
なんて素敵なお父さんだ。
仕事も家庭も全力で。心血を注ぐその姿勢に、改めて尊敬の念を抱かずにはおれなかった。
その後はトイストーリー・マニアのDPAを取得し体験、時間調整をし、ラプンツェルのランタンフェスティバルのスタンバイパスを14時50分で取得した。
もうほぼ不安要素は無くなった。
新エリアへの入場開始時刻は14時50分と確定したため、それまでの時間をマーメイドラグーンで過ごした。
アリエルのプレイグラウンドで娘とお子さんが楽しそうに遊んでいた。
この場所であれば日も当たらず涼しい。一時的に避暑をしながらも、リトルマーメイドの世界観にどっぷりと浸れる優秀すぎる場所だ。
娘がお子さんを案内していたところを見守り、ぼくは娘を初めてここに連れてきた時のことを思い出していた。
アースラやサメの仕掛けに、驚いて怖がっていたっけ。
だいぶ汗がひいてきたので少し移動することにした。
まだアラビアンコーストの案内ができていない。
新エリア入場時刻まであと50分ほど。マジックランプシアターを体験するにはとてもよい時間だった。
ここでもスムーズに案内されて席に着く。
様々な仕掛けを周知の上で、ご家族の皆さんの新鮮なリアクションを横目で見ると自然と笑みが溢れてきた。
ジーニーの、「えっ、俺と友達になって欲しいって??うぅ〜ん!もうとっくに友達じゃないか!」のセリフにはこの時もやられてしまった。
アラビアンナイトの街並みを一通りご案内し終えた時、入場10分前となった。
いよいよだ。
ついにこの時がやってきた。
新エリア入り口で、QRコードが生成されるまで待つ。
お子さんも、奥様も、社長も、とてもそわそわしていた。
開園待ちの時よろしく、一分一秒がとても長く感じた。
その時が来て、アプリ画面を更新した。
「さぁ、準備が整いました!参りましょう!」
ぼくがQRコードを一枚ずつ読み取ってゆく。
社長はカメラを構える。
娘がお子さんの手を引いて前に進んだ。
洞窟のような入り口から、眼前に新エリアの世界が広がってゆく。
「うわぁーーーー!!」
お子さんは声をあげてキラキラした笑顔で景色を目にしていた。
社長撮影のカメラに入らぬよう、やや身を引いてその様子をぼくは見ていた。
よかった。
本当に良かった。
朝から頑張ってきて、報われて良かった。
この笑顔を見るために来たのだ。
「それでは、ラプンツェルのランタンフェスティバルに参りましょう!」
ファンタジースプリングスの世界を体験する時間が、始まった。
ーつづくー