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フランスの医療システム:選べる検査所編

かかりつけ医編の続きです。
日本では、① 病院に行ったら、② 医師の診察の後、③ 検査して、④ 処方してもらった薬を受け取って帰ることができるのに対して、フランスでは、この4つが、完全に分かれた機関というのは、前回もお話したとおり。
日本では病院と薬局は別れていますが、さらにフランスでは検査所も、日本の薬局のように分かれています。

医師の診察を受けた際、検査が必要な場合は検査の為の処方箋(検査のための指示書も、薬同様、処方箋ordonnanceという言葉が使われます)を書いてもらい、それを持って街の中にある検査所に行きます。
レントゲンのように機器を使うようなものから、血液検査、尿検査まで。
後日、検査結果を持って、また医師のところへ戻り、診断を仰ぎます。
検査に必要なものがあれば、薬局で購入して持っていく必要があります。
検査所に行ったものの、バリウムの粉末を忘れてしまったために、慌てて近くの薬局を探したり。
全体の流れは、医師→薬局→検査機関→医師。
ドラクエか、スタンプラリーか、という気分になってきます。
初めはあまりの面倒くささに、心が折れそうになりました。
腹が立って仕方がなかったシステムですが、悪くないかも!と思えるようになった出来事がありました。
 
それは、今から5年ほど前のことです。
日本にいた頃から、ずっと気になっていた胸のシコリ。
日本で、半年に1回目、マンモグラフィの再検査を受け続けること計3回、診断は毎回「経過観察」でした。
フランスにきて、最後に日本で受けた検査から半年が経ち、再検査のタイミングになりました。
フランスのかかりつけの婦人科医に相談しにいき、それまでの検査結果を見せると、開口一番「で、診断結果は?」
えーっと、診断結果は「経過観察」ですが?
「そんなん診断結果にならないよ。もう怪しいシコリがあるのわかってるのに、なんで生体検査してないの?そもそも、まだ若いのにマンモグラフィはリスクが多過ぎる。こんな短期間にこの頻度で受けさせる意味がわからない。エコーで充分わかるのに。」
乳がん検診では、マンモグラフィーとエコーをやってきたけれど、エコーだけで良かったのー!?
ちなみに、イギリスに住んでいる私の友人も、乳がん検診でマンモグラフィーを希望したら、ハイリスクだと断られたそうです。
これまで日本の病院でいわれた通りに、超痛いのを我慢してマンモグラフィーの定期再検査を真面目に受けてきたのに、そのこと自体もリスクだといわれ、頭が真っ白に。
生体検査って大掛かりな響きだし、大丈夫かしら…?
ひとり異国の地での生活に加えて、不安が押し寄せました。
かかりつけ医からは、検査所は指定されず、「自分で好きなところに行って良いよ」というフレンチスタイル。
自分が好きな検査所ってなんだろう、と思いつつも、不安を打ち消すように、ネットで検索し倒しました。
 
この辺から、ちょっと細かくて専門的な話になります。
5年前、まだ自分の語学力にも、異国の地での検査にも不安があったので、日本で同じ検査を受けられないか調べたところ、当時はまだ特殊な検査だったようで、日本では最短の予約受付が1か月後で医療費も高額でした。
Google Mapで見つけたパリの乳房生体採取専門の検査機関は、翌日でも予約が取れ、保険適用で自己負担額も少なそう。
日本で高くて時間がかかるけど、フランスでは安くて早い。
そういうお得感に弱い私は、フランスで受けることに決めたのでした。
 
フランス語で検査に挑む前に、日本のサイトで検査の流れを予習しました。
かかりつけ医のから、吸引式の針生検を受けるようにといわれたことを元に、日本のサイトで名称を調べると、どうやらそれは「マンモトーム」という太い針で採取する新しい技術のよう。
私は最新の「マンモトーム」という針で採取されるのだ!と、意気揚々といざ検査場へ。
ところが、フランスと日本で「マンモトーム」というの言葉の使われ方に、微妙なズレがあったのです…。

検査場で、検査技師の先生に、私が受けるのは「マンモトーム」ではないといわれ、え?吸引式の針生検で「マンモトーム」じゃないってどういうこと??
私があまりにマンモマンモいうので、技師の先生は、かかりつけ医の先生と同様に、マンモグラフィーのリスクを語り始めました。
途中で、彼女は私が言葉の意味を取り違えていることに気づき、「これから行うのは、biopsie(生検)で、採取する方法が2種類あります。マンモグラフィーをみながら行う「マンモトーム」と、エコーを見ながら行う「echoguidée」です。あなたの場合はエコーをみながらの採取になります。」と。
また、実際に使う針を見せてくれ、針自体は「マンモトーム」とは呼ばない、と丁寧に説明してくれました。
あ、なーるほどー、そういうことでしたか!
確かに、私が求めていた極太の針はこれです!!
そして、うるさい患者はやっと納得して、大人しく検査を受けたのでした。
検査結果は良性、かつ検査所の信頼感も手伝って、不安は一掃されました。

実は、この検査場、Google Mapの口コミが非常に良かったのです!
乳房生体採取専門の検査機関なだけあって、口煩いマダム達に鍛えられているのでしょう。
さすが、そのような方々のお墨付きなだけありました。
そして、自分で「好きな検査所を選ぶ」ということはこういうことかと、実感したのでした。
また、検査結果は自分持ち。
検査所から、かかりつけ医に結果を転送するかどうかは、患者の判断でできます。
もし、かかりつけ医を変えたい場合でも、検査結果は自分の手元にあるので、いつでもセカンドオピニオンを受けに、違う医師の元へ行くことができます。
患者が主体になって医療機関を選んでいけるので、納得いくまで、トコトンなんでも自分でやりたがりの私には、合っていることに気が付きました。

また、このシステムでは、一般開業医は検査機器を一切持たずに済み、かつ検査所間に競争が生まれるのです。
新しい機器を導入していかないと、それも口コミで書かれてしまうし、対応が悪いなんてもってのほか。
検査所は、検査のみを行うので、心配性な患者にも、じっくり付き合ってあげられる余裕も。
ちなみに、簡単な血液検査や尿検査は予約がいりません。
朝も7時から営業しているところもあるので、仕事前にサクッと行けます。
検査所も、薬局も、コンビニ並みに街中に溢れているので、自宅の近くを選べるのは便利です。
見出しの画像は、とあるパリの検査場の入り口です。
同じ血を抜かれるにしても、せっかくならゴージャスなところに行きたいと思いませんか?

お土産も買える薬局編に、続きます

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ウエマツチヱ | フランス生活研究中
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