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フランス人の職探し

以前「フランスで職をみつける方法:専門職編」という記事を書きましたが、そもそも、フランス人はどのように職を探しているのでしょうか。フランスでの職探しのヒントに、職場の同僚たちに聞いた話などを紹介してみたいと思います。

インターンシップが盛り込まれた教育プログラム

日本では新卒一括採用が一般的ですが、フランスには存在しません。その代わりに、インターンシップ制度(stage)が充実してます。就職に関わり始めるよりももっと前、14歳、18、19歳、そして学校卒業後と、3回のインターンシップを経験します。それぞれ、1週間、6週間前後、3ヵ月から半年と、年齢が上がるほどに、期間が長くなっていきます。初めてのインターンシップは、親の職場に行くことが多いものです。そのため、職場で子どもを連れている人を度々みかけます。有名企業や大企業で体験したい場合、親の友人のツテをたどってお願いすることも。最後のインターンシップ以前は、社会見学的といえます。大学在学中のインターンシップは、単位として認められるものもあります。

なぜ、こんなにインターンシップの機会が多いのでしょうか。それは、フランスが超学歴社会ということがあげられます。学歴社会といっても、日本とはやや異なるのですが。フランスでは、学校名はもとより、何学科を出たか、何の学士号、修士号なのかという部分が重要になってきます。日本では、卒業した学科名よりも大学名が先にきますが、フランスでは勉強した内容が問われるのです。そのため、フランスの教育プログラムでは、早い段階から自分は将来、どのような仕事に就きたいのかを考えさせるきっかけとして、インターンシップの機会が多く設けられています。

何のスペシャリストであるかが重要

例えば、パン屋さんや、企業の受付の人も、それ専門の学校をでています。どんなに良い大学をでていたとしても、専門知識を学校で習得していないと、その職につくことが認められないことがほとんどです。免許に近い感覚ですね。
同僚のひとりはダブルスクールで、デザインとエンジニアのそれぞれの学士を取得しましたが、この経歴ではどっちつかずにみられて就職が不利になるので、その後、デザイン修士の取得に専念したそうです。幅広いジェネラリストよりも、専門性に特化したスペシャリストが求められるのです。
日本では職業を聞かれたときに会社名を答えることが多いと思いますが、フランスでは「商品企画」「エンジニア」「プランナー」など、会社内の職種を答えることが多いです。何をしている人か、ということが重要なのです。

正社員までの長い道のり

さて、学校を出てからですが、新卒で採用がない代わりに、インターンシップで経験を積みます。無給であることがほとんどですが、企業側はちゃんとした戦力としてみています。大学卒業後のインターンシップはお仕事体験というよりも、労働力として考えられています。そこで、期間内に良い結果を出せた場合、そのまま契約社員(CDD:contrat à durée déterminée)や、派遣社員(prestataire)になれることがあります。派遣社員とは人材派遣会社との契約で、そこから派遣される形になります。実質、契約社員と変わらない仕事内容ですが、所属先が人材派遣会社になるのです。その後、正社員(CDI:contrat à durée indéterminée)登用の可能性もありますが、ひたすら同じ企業でチャンス待ち続けるよりも、転職をしてしまった方がキャリアのコマを速くすすめられることは確かです。
私の業界の例ですが、おおよその目安で、インターンシップ3-6ヵ月、派遣社員2-3年、契約社員2-3年、そしてやっと念願の正社員になれるのです。法律的には派遣、及び契約社員の契約更新は最大3年で、それ以降は正社員登用が決められています。でも、それが守られていないこともしばしば…。5、6年契約社員という人も珍しくはありません。

以前、日本人の履歴書についての話を「新卒一括採用の恩恵はフルに使おう」という項目で書きました。フランスでも私の周りで、新卒で有名ブランド何社からも、正社員のポストを提案された人がいました。その人は、デザイナーとして、めちゃくちゃ絵が上手いのですが、2日に1回しか寝ない超ショートスリーパー。寝ない夜は一晩中デザインスケッチを書いているという、かなり特殊なタイプ。そのくらい突き抜けていると、企業はすぐにでも採用したくなるようです。
決め手は即戦力といえるでしょう。フランスでは、入社後に育てるという文化が、日本と比べて希薄です。私は日仏同じ業界を経験しましたが、社内教育の差は歴然としています。

そんなわけで、会社で教育してもらえることは期待できないフランスにおいては、自己研鑽をし、履歴書を魅力的なものにしていかなければならないのです。そのカンタンな方法は一つ、転職です。インターンシップや、派遣社員、契約社員としての経験も職歴になります。インターンシップでも一流メゾンでの経験は、履歴書の一文として輝くのです。たとえ無給のインターンシップだったとしても、有名メゾンで働いていた経験を持った人は貴重な人材とみなされます。

働きたい会社へのコンタクトの取り方

フランス人は、どのように行きたい会社へのアプローチをしているのでしょうか。以前は、自分の出た学校関係者のツテを辿るということが主だったそうですが、今は「Linkedin」というサイトがあります。ネット上のデジタル履歴書、といったところでしょうか。欧州で働く人のほとんどが、こちらに登録しているので、過去の職歴や、自分と共通の友人がいるかどうかなどが一発で分かってしまいます。新しい人が職場にくると聞くと、まずはこのサイトで名前を検索する人もいるほど。キャリアに特化した、FaceBookといったところでしょうか。

登録した場合、ちょくちょく求人案内が来るのですが、
会社の人事部から直接のコンタクトがくるというより、人材会社を通じて、という形が多いようです。
また、
LinkedInの別の使い方として、行きたい企業の人に自らコンタクトを取るという方法もあります。

自分の履歴書や今までの実績を、そこの企業で働いている希望の部署の人、もしくは近そうな人に託す、というものです。
この方法は話が早く進みます。自ら連絡してくる人は会社側からみても、強い熱意を感じるものです。
日本人だと募集していない会社に応募するのは気が引けると思います。ですが、募集要項が出てから応募
すると、何百という履歴書の中に埋もれてしまいます。募集していない時期に送ることで、他の人の履歴書がないときにゆっくり目を通してもらえて、気に入られれば次にポストが空いたときに、声をかけてもらえることも。


また、フランス人は「この人と働きたいかどうか」という感覚を大事にしているので、もし会社の人事採用プロセス外でも、一緒に働きたい人と気軽に話せる機会があり、人となりをわかってもらえれば、採用のチャンスはグッと増えます。では、どうやって、会社の外で出会うのか。

まだ学生だったある友人は、行きたい会社の社員がいそうなイベントに赴き、自分を売り込んでいました。
そこにお目当ての人がいなくても、そこから人を紹介してもらい、人脈を広げていました。
更にツワモノなのは、働きたい部署のトップの人の名前をLinkedinで検索、熱いメッセージを送りつけていたという!
 そんな彼は、今、希望の会社で楽しく働いています。
彼曰く、情熱を持ってくる人に対して、多くの人は好意的で協力してくれるものだそう。失業率が高いフランスにおいて、好きなことを仕事にするには、そのくらいのガッツと図々しさも必要だと学びました。ちょっと極端な例ですが、世の中にはこのぐらいの意気込みで就活する人もいるというご参考に…。


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