日仏最古のテレビ広告比較と思い出のチーズ
ご存知の方も多いかもしれませんが、日本で初めて放送されたのはセイコーの時計の広告です。1953年8月28日正午に初放送されました。
ニワトリが、時計の取り扱いを説明してくれながら、時報の役割を果たしています。真面目な日本人らしく、ちゃんと意味を持たせたCFですね。
時計というのも、この時代にして日本の技術力!といった感じがしますし、キャラクターが出てくるのも既にクールジャパン。
では、フランスで初めて放送された広告は、何か想像つきますか?
1968年10月1日20時に流れた、ブルサンチーズが、フランスで初めてのCFです。チーズとは、美食かつ酪農大国のフランスらしい。
ブルサンチーズが好き過ぎて眠れず、商品名を連呼しながら台所まで走っていって、冷蔵庫にあるチーズを食べる、というだけのものなんですけどね。
このよくわからなさ、フランスっぽい。
でも、その気持わかる!
というのも、このチーズ、長らく私の一番好きなチーズでした。
出会いは高校生の頃、美食家の伯母が四谷のオテル・ドゥ・ミクニに、連れて行ってくれたときでした。
フランス料理特有の、食事の最後になぜかチーズがワゴンにのって出てくるという体験は、そのとき初めてしました。
そういえば、フランス人の同僚をみていると、ふだんの食堂での食事の後でも、チーズを食べるのです。
正確にいえば、食堂のメニューでフルコースの流れを実現しているのです。
前菜として、サラダバーで盛った生野菜から食べ始め、メインにお肉かお魚に移り、小皿のチーズを食べて、デザートで終わります。
日本人が小学生の頃習った、三角食べとは真逆の、ひと皿ずつ食べ終えてから、次のお皿に移るスタイルなのです。
甘いデザートはなんとなく若い女性が食べるものというイメージがありますが、フランスでは、おじさんもガッツリチョコレートケーキ食べてます。
話はそれましたが、高級フレンチでのチーズワゴン。
そのときなんとなく選んだのが、ブルサンチーズでした。
クリームチーズのような質感の中に、存在感あるハーブとガーリックの旨味。
あまりの美味しさに感動し、名前とパッケージを目に焼き付けて、翌日、高級スーパー紀伊国屋で同じものをゲットしました。
スプーンでプリンを食べるようにして、あっという間にひとりで1個食べきってしまったのを覚えています。
私の中で、高貴な憧れのチーズとして、その後も度々、紀伊国屋にお小遣いを握りしめて買いに行っていました。
フランスに来てみて、あら、ビックリ。
スーパーの冷蔵コーナーで、お手軽なチーズの代名詞、ベルキューブの隣に並んでいるじゃないですか!
お値段もベルキューブ並、うーむ…。
日本で出会ったとき、かっこよく見えたフランス人男性を追いかけて、フランスまで来たら、実は大したことなかった、って感じ?
今思えば、フランスで最初にテレビ広告を打てるほどの大企業の量産チーズだったんですねぇ。
再び、2国のCFの放送元年に注目すると、日本のセイコーのCF放送から10年以上も遅れて、フランスのブルサンチーズのCFは放送されました。
テレビの開局は、1935年だったというのに。
当時のフランスは、テレビ放送開始から30年間、法律によって広告が制限されており、完全に広告がない期間であった。
国営テレビ局の資金源、そして消費を促すため、時の首相、ジョルジュ・ポンピドゥーがTV広告を始めました。
(France Soirより抜粋意訳)
テレビの開局した翌年、1936年に5週間のバカンスをデモで勝ち取る民衆がいる一方で、政府によってコントロールされていた一面もあるのですね。
今回の新型コロナウイルスの、フランス政府の徹底したロックダウンの対応は、そういった部分を垣間見た気がします。