NeverAwake Original Sound Tracks / Self Liner Notes
Intro
BEATNOID WORKS コンポーザーの植草史仁です。
普段はウェブ制作を中心としたデザインの仕事をしており、並行してセミプロ的な立ち位置で音楽制作の仕事をしています。
今回は縁あって、STEAMにて2022年9月28日にリリースされた悪夢系アクションシューター「NeverAwake」(Nintendo Switch、PlayStation版は2023年1月19日発売予定)の音楽を担当させていただきました。
約1年8ヶ月に及んだ音楽制作を終えた今、セルフライナーノーツとしてその記憶をここにアーカイブしておきたいと思います。
さて、ここからは作曲者視点の拙い音楽紹介・解説となりますが、サントラがお手元にある方は、ぜひ音楽を聴きながら流し見ていただくと楽しめるかなと思います。
Tracks
01. Sleeping Bloom
NeverAwakeのメインテーマ曲で、設定資料とビジュアルイメージをもとに制作。 VRITRAの時もそうでしたが、わりとメインテーマは幻想的かつどこか愁いのあるサウンドが好きですね。 今回も重要なシーンにおいてはこのメロディラインをモチーフとして扱っており、様々なアレンジを展開しています。
02. Majolica Majorca
ワールド1のBGM。
この曲、実は20代後半に自分がやっていたバンドのインストで、制作初期の段階で「今回こういうテイストはどうか?」みたいなノリでサンプルとして制作者に提案したものでした。
原曲はオーケストラっぽいものでしたが、世界観の要望もあってエレクトロ調にアレンジしてみたところ、悪くないということで採用となりました。
眠っていたサウンドがこういう形で世に出ることができて、きっとこの曲も浮かばれることだろうと思います。
03. Looming Shadow
基本的に各ワールドの中ボスのBGMは、そのワールドのBGMをアレンジしたものになっていて、これは「Majolica Majorca」のAメロをモチーフに制作したものです。
今回はテーマがテーマなだけに、わりと怪しげなメロディが多いんですが、そういった不気味さや奇怪な印象を与えるスケールをこれまであまり使ったことがなかったので、今回は色々と学びながらの制作となりました。
04. Brutal Revenant
ボスBGM。
もうちょっと楽しげな方向に振りたかったんですけど、共通で使われるBGMなのであまり特異なものにはせず、素直に奇怪なモンスターと戦うイメージで制作しました。
このアフロビートというか、フロアタムを使ったズンドコいってるドラムのビートが好きです。
05. Fragment of Memory
ワールドクリア時のジングル。
「叙情的にピアノがポロンと鳴るイメージで~」と具体的な要望があったので、わりとすぐ形にできました。
最初はアップライトピアノでやってたんですけど、エッジや音の細さがしっくりこなかったので、温かみのあるローズピアノに変更しました。
06. Twilight Syndrome
ワールド2のBGM。
スケッチの段階では「Like a Merry Go Round」という仮タイトルで、人生の流れ=メリーゴーランドというイメージで制作していました。
アコーディオンの奏でるメロディと、曲全体を包み込むノスタルジックな雰囲気が好きで、個人的には気に入っている曲のひとつです。
07. Scary Monsters
DAVID BOWIEの同名曲からのインスピレーション。
ワールド2の一部メロディを主軸にアレンジ展開したものです。
08. Soul Hunt
疾走感のあるブレイクビーツを軸に、透明感とグラデーションを想起させるパッドが特徴的なドラムンベース。
Aメロ部分にサンプリングした女性ボーカルのデータをエディットしまくった、スタイリッシュでアッパーなバージョンも作ってみましたが、これは流石にコンセプトから外れていたのでお蔵入りに。
09. Labyrinth
ワールド3のBGM。
タイトル通り「出口のない迷宮」をイメージして制作しました。
ただ俗にいうダンジョン的な迷宮ではなく、やはり精神や心理的な部分においての心の迷宮という意味合いのほうが強いですね。
NeverAwakeのなかでもストーリー性のあるシネマチックな曲かなとも思ったりします。
10. Remembrance
シータ戦BGM。
サビとなる部分でメインテーマのメロディをモチーフとしています。
敵とのバトル!というよりは、ある想いとの対峙をテーマに、されど重苦しい雰囲気ではなく、どことなく優しさを感じる曲になるよう意識して制作しました。
11. I'm Behind You
怖さの中にもチラリと見えるユーモアを念頭に制作。
冒頭は子供たちが楽しげに遊んでいるサンプリング音声なのですが、こうやって使ってみるとマンマミーアも不気味で面白いですね。
ちなみに「学校の怪談」や「七不思議」をテーマとして、クリシェやマイナーセブンを意図的に使っています。
12. Hello, Nightmare.
「I'm Behind You」が下降系のクリシェだったのに対し、こちらはイントロ部分で上昇系のクリシェに。
戦いに挑む!というよりは絶悪のタイミングで最悪なヤツがヒョイと現れた!みたいな…
「遼来来」「呂布が出たぞー」というイメージでしょうか(よくわからん)
13. Midnight Runners
ワールド5のBGMは全体を通してクールで都会的なイメージをコンセプトに制作。
「クール=曲自体の温度感が低い」というダウナー、チル的な解釈というよりは、曲の表情や雰囲気が、例えば「コンクリートのような冷たさ」や、あるいは「ナイフのような金属的な冷たさ」を持つイメージで作りました。
14. Clockwork Psychic Chase
ビートの速度に対して、メロディがどういうアプローチで並走すればよりクールに冷たくなるのか。
音色選定のサウンドデザインの時点ですでに明確なビジョンはあったんですが、なかなかそのラインに到達できず、わりとストイックな制作時間を送った印象があります。
NeverAwakeで一番サイバーな曲ですね。
15. Lost in the Dream
ワールド6のBGM。
奇妙な世界+ゴシックがテーマのメランコリックなワルツ。
わかる人にはわかってしまう様々なオマージュが随所に仕込んであります。
16. Violent Violence
相変わらずふざけたネーミングセンスのタイトルですが、サイコで悪〜い感じをイメージして作りました。
ステージの背景を考察すると、単純に狂気という部分にのみフォーカスをあてるのではなく、やはりちょっとユーモラスなサウンドを落としどころに着地できたかと思います。
17. Paranoid
80年代のテクノ的なサウンドイメージに対して、純エレクトロニカで追い込んでみた的な曲(?)
電子音やエレクトロニック・パーカッションといった効果音的なものでリズムを装飾しています。
ノイズをアナログディレイで発振させてサウンド素材を作るのが楽しかったです。
色々と実験要素、チャレンジもあり、NeverAwakeの中でも個性的で奇妙な曲になっているかと思います。
18. Missing Piece
本当はParanoidの1曲でワールド7は対応する予定だったんですが、急遽ステージ後半戦のBGMとして追加された曲。
RPG的なところでいうラストダンジョンっぽい感じが欲しい、との具体的な要望があったので、わりと迷いなく作り上げました。
結構怒られそうなギリギリのライン?ではありますが、要所要所で植松伸夫DNAが炸裂しています。
19. Alternate Soul
ラスボスということでカッコいい感じにしたいなと思い、自由に作らせてもらいました。
こういうドラマチックなものは作っていて個人的にはすごく楽しいです。
転調するのってすごく好きなんですが、飛んだあとの強引な力技での着地が好きで(よくラストにホールトーンぶち込んだりしがちですが)この曲も「なんかこいつ結構ゴリ押ししてんなー」って感じがいわゆるセミプロっぽくて好きです。
20. Symmetry
「表裏一体をなす不安や恐れに立ち向かう強い意志」をテーマに制作。
主人公の光と影が交差するシーンの背景を、上手く表現できた曲かなと思っております。
後半部分はもっとメロディアスだったのですが、この曲に関しては全体のコード感を大事にしています。
21. Love Replica
メインテーマのコード進行にクワイアを用いたアレンジ。
音数も少なく、とてもシンプルな構成なんですが、荘厳な雰囲気も手伝って、結構インパクトのある曲になったかなと個人的には思っています。
22. Catharsis
ワールドクリア時に流れるFragment of Memoryと対をなす、お目覚めジングル。
これもスケッチ当初はアップライトで綺麗目にやってたんですけど、ローズに差し替えて丸っこく可愛い感じの音に変更しました。
23. !(NeverAwake)
イントロはサクッと生まれたのですが、エンディングの曲ということで慎重になりすぎたのか、そこから色々なバリエーションをスケッチしてしまい、着地までに結構時間がかかりました。
今回制作した中で一番作業時間がかかった記憶がありますが、大事に作った曲です。
24. L'epilogue
メインテーマのメロディーをモチーフにオーケストラ風にアレンジ。
メインテーマのSleeping Bloomはマイナー進行ですが、エンディングということでこちらはメジャー進行に。
明るくなりすぎないようセブンスで愁いを持たせつつ、徐々に音が加わっていく構成で抑揚をつけています。
25. NeverAwake
当初はアシッドジャズっぽい感じで作っていたのですが、せめて1曲くらいはギター弾きたいぜ!って事でロック調になりました。
実働2~3時間くらいで時間もなかったのですが、時間があればバンドのメンバーにお願いして、バンド名義でタイアップしたかったですね(笑)
ちなみにYouTubeでNeverAwakeのゲーム実況動画をリアルタイムでこっそり観ていたのですが、この曲が流れたときにコメントで「カッコいいけどエンディングっぽくない」とダメだしされました(笑)ありがとうございます(笑)
Outro
VRITRAシリーズと同様に今回の音楽制作の過程も、まず制作者からの依頼とともに、制作中の実際のプレイ動画を無音でいただき、その動画をループ再生しつつイマジネーションを得ながらの制作となりました。
曲によっては「こういうイメージで」とサンプルがあったりもしたので、イメージ共有部分においての作曲作業自体は比較的スムーズにできました。
あとこれは毎度のことですが、クオリティを左右するリズムやベース、音価などには特に気を使い制作しています。
メロディに関しては、実は今回メロ先行で生まれたものが多く、色々バリエーションを考えて修正したりせず、映像からのインスピレーションを受けてほぼ直感的に制作し、そのメロディに対して様々なコードアプローチを試行錯誤したケースが多かったです。
さて、今回のNeverAwakeに関しては、ゲームを構成する大きな要素に「システム」「シナリオ」「ビジュアル」「サウンドエフェクト」「BGM」などがありますが、今回はその要素を引き立てるBGMがどのように制作されたのか、またその背景を知ることで、NeverAwakeの世界観がさらに深いものになって、より一層楽しんでいただけたら、クリエイターとして大変嬉しく思います。
Fumihito Uekusa
Equipments
DAW
・PreSonus - Studio One 5
Virtual Instruments
・Arturia - Analog Lab Ⅴ
・Plogue - Chipsounds
・PreSonus - Impact XT / Presence XT
・Tone2 - Gladiator 3
・Toontrack - Superior Drummer 3
・VSL - Vienna Instruments
・Xfer Records - Serum
Guitars
・Zemaitis S22ST 3S White
・Fernandes TEJ-95S
Plugin Effects
・IK Multimedia - T-RackS 5
・Native Instruments - Guitar Rig 6
Linkage
Creators Twitter
Director / Engineer
https://twitter.com/saddy575
Illustrator
https://twitter.com/natokin_0104
Sound Designer
https://twitter.com/Yukiharu_Urita
Composer
https://twitter.com/u23
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