心はすべて数学である(津田一郎)【書評#179】 3 植田康太郎 Kotaro Ueda 2024年12月5日 10:47 脳のカオス理論で知られる津田一郎さんの本。津田一郎さんは私が、脳とカオス現象が結びついていることを知るきっかけになった方である。本の内容は、津田さんがこれまで数学を用いて脳を研究してきたことから、数学というものが人間の思考、すなわち心の機微を表現するものとして説明されている。 私の素朴な印象では、数学の証明というのは心の動きを表現しているのではないかと思われるのです。p.15 一元論も二元論もそれぞれさらに複数の立場があり、、歴史的な展開もあるのですが、その中で現代の脳神経科学が主に立脚しているのは、次の二つです。すなわち、エピキュロスやホッブズがとった、心は脳の物理的状態に還元でき、物理学の概念で説明できるとする還元的唯物論、あるいはダーウィンがとった、心は進化するにつれて新たな性質を持つようになる脳の諸活動の集合である、とする創発的唯物論の立場です。つまり、心は何らかの脳の活動状態である、と考えている脳神経科学者は多いのです。p.54脳はシステムとしての目的に応じてその働きが異なるため、何が機能的な意味で要素になるかはあらかじめ決まっているわけではありません。(…)機械を構成する部品とは異なって粉々に分解しては、その実像からむしろ遠ざかってしまう、本質が抜け落ちてしまう。つまり、要素には還元できないという壁にぶち当たることになります。p.97脳はそれぞれの要素に分解することはできないということはカオス理論からも述べることができる。決定論的な方程式からは未来永劫にわたって決まる一義の解が出てくるだけであって、新しい生成はそこからは何ら生まれないだろうと考えられてきた。ところが、原因が決定論的であっても結果は決定論的でないということがありうる。決定論的な方程式から予測不能な異次元の怪物のようなものが生まれることがある。カオスが革命的なのは、この概念の転換を示したからなのです。p.139決定論的でありながら予測不可能。カオスの扱いづらくもあり、そして、面白いところである。 心はすべて数学である (文春学藝ライブラリー) amzn.to 1,265円 (2024年12月05日 10:47時点 詳しくはこちら) Amazon.co.jpで購入する ダウンロード copy いいなと思ったら応援しよう! チップで応援する #津田一郎 #心はすべて数学である 3