物理現象のフーリエ解析(小出昭一郎)【書評#143】
2018年に購入したのはいいものの、なかなか読み進める機会を得られないまま、4年が経った。さすがにもうそろそろ読もうと思って、3ヶ月ほどかかって読み切った。
フーリエ解析をメインに扱っている本ではあるが、内容は「振動・波動」の物理学書のようなものだった。
1、2章でフーリエ級数、フーリエ変換についてその概要がまとめられている。わかりやすい内容だった。ただ、フーリエ解析は具体的に手を動かせるようになってなんぼのものなので、この本だけでなくフーリエ解析の問題を別に解いていくことが必要不可欠だ。
その後、3、4章でフーリエ級数、フーリエ解析の応用が例示してある。特に、微分方程式を解くことができるツールとして紹介されている。
5章以降は物理現象がメインで話が進む。フーリエ解析が実際にどのように使われているのかがこれらの章でわかる。この本で私は線形応答理論のあらましを初めて勉強した。久保亮五が取り組んだ問題だからとても難しいのかと思ったが、基本的な部分は簡単だった。(もちろん久保さんはより進んだ難解な問題に対峙していたのだろう。)
ただ最後にひとつ残念だったことがある。この本では、Ornstein-Zernike理論やWiener-Khinchin理論などさまざまな理論や式が紹介されている。しかし、それらがどのような背景で構築されたのか、どのような活用例があるのかが載っていなかった。自分で調べればいいじゃん、と言わればそれまでだが簡潔に紹介されていた方が、それらの理論の重要性がわかり、より一層理解に繋がっただろう。
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