【鉄道】東横線で行く「学芸大学・クールを探す旅」
イギリスの老舗タウン誌「タイムアウト」によれば、「世界でもっともクールな街」ランキングに、日本から唯一エントリーしたのが「学芸大学」。
かつて、旅行サイト・トリップアドバイサーが「船橋アンデルセン公園」を上位ランクに選出されたことがある。
きっと「学芸大学」にも、「船橋アンデルセン公園」のように、私たち日本人が見過ごしている視点で、何か魅力的な発見があるはず。
だから東急東横線に乗って「学芸大学」を散歩してみた。
1.西口と東口の優劣
「はじめて訪れる街は、まずは1番線から攻めよ」というのがマイルール。
なぜなら、鉄道駅の街並みというのは、駅舎側がある方、つまり街を代表する駅がある方から順に「1番線、2番線…」とつけるから。
これは鉄道ファンにとっては、結構有名は「一番線・代表口」説である。
中には、それを認めない輩がいて、同僚だったK君は、なぜかムキになって、「1番線側が街を代表する」という説に反対していた。
ちなみみK君によれば、「海側が1番線」になっている、といって譲らなかった。
たしかに私とK君が同じ職場だった総武線沿線は、海側に1番線されたことが多い。
これは「海だから1番線」でなくて、「並走する千葉街道が鉄道路線より海側にあるのでそうなっている」という私の解釈に耳を貸さなかった。
「津田沼を見てみぃ。あそこは軍隊があった山側が1番線だろ、ボケ!」
納得しないK君にこんなセリフを言ってやりたい…。
まあ、K君とは疎遠になったが、こういうボタンの掛け違いが、人間関係をギスギスさせるものだから、話題というのはデリケートだ。
いや、そんなことはどうでもいい…。
何を言いたいかといえば、学芸大学は典型的な「島式ホーム」(1面のホームに1番線、2番線しかない)ので、まずは1番線の「東口」から攻める。
鉄道高架下に、鳥餌を扱うペットショップが飛び込んできた。
駅前には、個人店と思しきノスタルジックな本屋さん。
そして、地中海料理屋がちょこんと構える。
駅前徒歩0分のところに、多種多様な、そして個性的なお店がある。
これが、タイムアウト誌がいう「クール」の原点かもしれない。
さっと「東口」を見て、次に「西口」に移動。
西口の方が、ファーストフード店やドラックストアなど、ややチェーン店が多く、開発の「手垢(てあか)」が垣間見られる。
それでも、東急沿線にしては珍しく、大手デベロッパーによる「開発の波」が押し寄せていない街並みが広がる。
そう、私鉄沿線は「再開発」と称して、どこも似たり寄ったりの「駅風情」になる。ところが「学芸大学」の駅前は、そうした匂いが無い。
なんというか、いい意味で、トレンドに乗っかっていない、というのが、カオスな駅前商店街を形成している。
渋谷駅から電車で8分という「地の利」も、外国人から見たら「クール」に感じるのだろう。
たとえば、単なる「昭和ノスタルジー」なら、戸越銀座駅前のほうに軍配があがる。
けれども学芸大学には、いい意味で、「懐かしい」だけではなく、現代に通じる「クリエイティブ」なお店もあり、懐かしさと目新しさの同居がる。
これこそが「学芸大学」の魅力の本質だなと感じた。
2.トスカーナでの昼食
ランチは「トスカーナ」というイタリアン・レストランに入る。
高架下にあるオシャレなお店で、広くない店内で、シェフの方が、手際よく、オーダーをさばいていた。
店員さんの温かみも嬉しい。
同行したパートナーは「揚げナスのアラビアータ」、私は、「日本一おいしいミートソース」をいただく。
ちなみに「日本一おいしい」というのは、私の感想ではなくて、お店がそう案内している。ずいぶんと「大きく出たじゃないか…」と思ったが、ミートソースにアクセントのクリームがかかっていて、食欲がそそる。
単に「懐かしい」というミートソースではなく、間違いなく、お店の自信作であることはわかる。
私たち二人とも「大盛り」を注。
パートナーは「白ワイン」もオーダーして、ほろ酔い気分。
お酒の飲めない私は、ティラミスとコーヒーの「ドルチェのセット」をいただく。
お店は地元の人から愛されている様子で、おばさま方のグループ、子供連れファミリー、品の良さそうな老カップルなど、思い思いの「学芸大学の休日」を過ごしている客層。
そんなにぎわいを目にして、このお店が地元民から愛されている理由はわかるような気がする。
3.学芸大学に「大学無し」
さて、駅名となっている「学芸大学」。
ちなみに「学芸大学」とは、「東京学芸大学」で、かつて、この地に校舎を構えていたが、郊外に移転して、現在は、「学芸大学駅」の最寄には、「学芸大学」が無い。
キャンバス移転のとき、駅名変更の構想も上がったものの、地元民が反対したという。
横浜に住んでいた私は、渋谷に遊びに行くときは、東急東横線を利用。
「都立大学」「学芸大学」と大学駅名が続く。
東急というブランドイメージが良いので、どちらの大学も好印象。
すでに「学芸大学駅」には、街のシンボルというべき「学芸大学」が無いというのは、意外である。
昼食後、西口、東口と散歩を続ける。
タイムアウト誌のいう「クールさ」を感じ取るために…。
たしかに、渋谷からほど近いロケーションに、昭和の香りの「懐かしさ」を感じる一方、魅惑的な洋食屋、地元色の強い「不動産屋さん」から、家系やG系のラーメン屋さんがある。
また、食感そそられる「たい焼き屋さん」や、「チーズケーキ屋さん」など、空腹だったら、ぜったいに立ち寄ってみたい店があちこちに点在。
日本の「ちょっと昔」と「タイムリー」な街並みがコンパクトに集まる。
4.まとめ「気になったら足を運ぼう」
学芸大学の「クールさ」の秘密。
それは、駅前に、
・バスやタクシーの「ロータリー」がないこと、
・タワーマンションがないこと、
・チェーン店が少ないこと、
こうしたことが、まるで「クールジャパンの日常風景を醸し出すアニメの世界に出てくるような街並み」である。
これこそが、クールな街の魅力の正体なのだと思う。
百聞は一見にしかず。
気になる場所は、実際、自分の目で確かめてみよう。
「学芸大学」への小さな旅は、そんなことを再認識させられた。