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上野マンガの描き方「2」パロディマンガの作法①
数年前、あるマンガの画像がネットで話題になった事がありました。元の画像の出自は語られることがなく、作者の名前も分からぬまま、次々にコピペされ拡散されていったのですが、当の作者には何の利益ももたらされず、大分後になってからそのような動きがあったことを知るという有様です。
その画像というのがこちら。
これは「コミックビーム」連載「夜は千の眼を持つ」の中の短編「ゴル休3」。一見してお分かりでしょうが、お馴染みキャラクター、一休さんに、これまたお馴染みキャラクター、ゴルゴ13を当てはめたもの。「一休さん」の「さん」と「ゴルゴ13」の「3」が掛っているのもラッキーだった、というか、ギャグの精度が少し上げられたと思います。
普段は8~12ページの短編連載なのですが、たまに2ページのマンガが6本載っているという形式の「ショートフラッシュ」というネタがあり、「ゴル休3」はその中の1本で、思いつきの小ネタでした。始めに一休さんの有名エピソード「屏風の虎」を取り上げましたが、「この橋渡るべからず」でも出来そうだなと、2本目を描く事とあいなりました。
小ネタを申せば、これは「ゴルゴ13」初期のエピソード「駅馬車の通った町」を模したものです。(SPコミックス第3巻収録)ラストのコマの余韻が面白さを盛り上げるのに一役買っていますが、「駅馬車の・・・」のエンディングをそのまま当てはめています。解決策を考える際の「ポクポク チーン」というのは、アニメ版の「一休さん」がよくやる行動で、以降は使っていません。
パロディマンガの描き方は様々な手法があり「このキャラクターがやりそうにもない事をやる」というのもその一つで、シンプルなタッチのキャラクターが劇画タッチで描かれるとか、清楚なキャラが下品な行動をとるなど、ギャップの面白さを狙ったものです。
私のパロディマンガの手法はこの逆を行く事が多いのですが、それは「このキャラクターがやりそうな事をやる」というもの。「ゴルゴ13が一休さんだったらトンチではなく、銃を使って解決する。」という具合です。私のマンガにはいわゆる「ツッコミ」がない場合も多いのですが、ここは一番、読者のあなたにツッコンでもらいたいのです。
「トンチでも何でもないよ!!」・・・と。
同人誌の時代「1」で、中学1年生に描いたパロディを紹介しましたが、この頃から既に、その楽しさに目覚めていたようです。マンガという枠組みを外して考えると、子供はパロディが大好き。替え歌や、CMの真似や、先生の決め台詞をちゃかしたりした経験は誰にでもあるのではないでしょうか?無かったらすみません。
自分自身がどんなパロディーに影響を受けて来たのかをつらつら考えるに、ぱっと思い浮かんだのは、子供の頃見ていた正月のテレビ番組「新春かくし芸大会」のある年の演目、黒澤明の「七人の侍」のパロディ「七輪の侍」。
内容はまったく覚えていないのですが、タイトルの駄洒落に心を掴まれました。今見るとたいしたものではないのですが、「たった一文字だけ変えてまったく違う物になる」という構造が響いたのだと思います。
高校生の時にタモリが出した「タモリ3戦後日本歌謡史」というレコードが与えたインパクトは計り知れません。戦後から山口百恵の引退までを追ったドキュメント風の作品ですが、登場する人物や曲が全てパロディになっていて、元の曲の歌詞も曲も微妙に変え、それらを全てタモリが歌っているのです。その匙加減の絶妙さに私はやられましたね。前述の。「たった一文字だけ変えて・・・」という精神もここには生きている。時代を写したパロディは徐々に元ネタが分からなくなってゆきますが、同時代性というのも表現の一つの形ではありますね。
次回は私が影響を受けたパロディマンガの紹介や、「ゴル休3」から始まったシリーズがどう展開していったのかをお話したいと思っています。
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