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同人誌の時代「3」昭和の中学生、中学最後の夏休みに描き切る!

 さすがに中3、高校受験を睨まざるを得ないこの時期に、月刊マンガ同人誌を発行するのはどうだろうと考慮した結果、年2回刊という形式に落ち着いたのだった。出さないという選択肢は始めから無いというわけだ。潔し!揺ぎ無し!

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 夏の号は友人が表紙を描き、例によって分解し、それぞれの原稿を返却してしまったため、私は所持していないが、カバーの箱を担当したのでそれをアップした。これは今回初めての試みなのだが、総ページ数が百科事典並みになったので、廃棄されそうになっていた学校図書の万有百科事典の箱に紙を貼り制作した。40年以上を経てボロボロだ。画像では見づらいが、背の部分には貝殻が描かれている。

 1巻目は「夏風号」と銘打ち、夏休み明けの9月初旬発行予定、夏休みいっぱいを使って執筆する事になる。さてその題材だが、前年に挑戦して見事に挫折した、原作物への再挑戦をする事にした。題材は、幼少時から幾度となく読み返していたサン・テグジュペリの「星の王子さま」だ。

 前年の「レ・ミゼラブル」に比べればボリュームも少ないし、何とかなるかもしれないとの楽観的な見通しだったのだと思う。だが、この時の私には理解が足りていなかった。前年度の挑戦は、みなもと太郎の「レ・ミゼラブル」に影響を受けて描いたものだったのだが、みなもと版の「レ・ミゼラブル」がいかにうまい事原作をまとめていたかという事実に気づくのは、高校生以降、原作を読了して後の事だったのだ。四字熟語で表すならば正に「換骨奪胎」散りばめられた要素を巧みにギャグに落とし込みながら、原作の持つ魂はそのままに迫ってくるのだ。

 2012年に公開された、ミュージカルの映画化の「レ・ミゼラブル」は中々面白くはあった。罪を犯してしまったジャン・ヴァルジャンが苦悩の中に光明を見出すシーンでは、ヒュー・ジャックマンが苦悩に満ちた歌い出しから、歌の後半では立ち直ってしまうというのはミュージカルの醍醐味でもあるし、ギャグにも見える感じで面白かったのだが、残念ながら158分という、映画としては長尺ながら、原作のエピソードはこぼしまくりだったので、むしろ、みなもと版読もうよ、というか原作も読もうよと声を大にして言いたい。

 そんなプロの技など思いもよらぬ中3の私は、脚色などという知識もないので、兎に角原作をそのまま忠実に描き写していったのである。

 そんな未熟な中学生の作品だから、箸にも棒にも掛からぬかと思いきやそうでは無いよ、お立合い!意外にも構成や演出が良いのでなんとか作品として成立しているという寸法だ。やれば出来る子だった!この演出の感じは後年の「さよならもいわずに」にも通底していると思うのだ。

  ただやっぱりセリフが多いな、忠実にただただ描き写しているから。

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 バラの花のデザインは、アニメ版(1978年)のデザインそのまま真似した感じ、ただ当時は観た事がなく、新聞広告を見ての事だと思う。あのアニメの主題歌は良いよね。

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  もちろん、文章の切れが各章を見事に絞めているので、原作の素晴らしさ(この場合は翻訳の素晴らしさとも言えるが)におんぶにだっこで中学生の表現に下駄を履かせまくってくれているのだが。

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 そしてこの見開き、中学生の頃にこんなのを描いてるんだから、後に「五万節」描くのも必然ですよね。むべなるかな、ですよね。

 中学生にして,156ページの作品をひと夏かけて描き切り完成させたという経験はその後のマンガ家人生に影響を与えたと思う。自信にもなるし、地道に根気良く取り組むという姿勢も身に付いたろう。

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 中学3年の夏の思い出となっている「星の王子さま」だが、驚いた事にはこの後、冬号が発行されるのですよ!高校受験はどうなるのだろう!?それはまた次回にお話しさせて頂きます!

 


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上野顕太郎
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