同人誌の時代「4」昭和の中学生受験勉強そっちのけ!
中学3年の冬を迎えた上野少年だったが、受験勉強はしていたものの、同人誌用のマンガも結構しっかり描いていた。42年も前の事だが、受験の事はさっぱり思い出せないが、マンガ描いていたあの感じはすごくよく思い出せるのだ。
当時影響を受けていたマンガがいくつかある。クラスメートの女子に、読み終えた後の「りぼん」を譲ってもらっていたのもそのひとつで、太刀掛秀子「花ぶらんこゆれて」清原なつの「花岡ちゃんの夏休み」一条ゆかり「砂の城」萩岩睦美「小麦畑の三等星」千明初美や田渕由美子や小椋冬美の短編などを夢中で読んでいた。
もう一つ多大な影響を受けていたのは、あすなひろし「青い空を白い雲がかけてった」
前回紹介した「星の王子さま」の作中にもあすなひろし的な表現がそこかしこに見て取れる。絵の部分だけでなく、リリカルな部分やメロウでおセンチな部分などにも傾倒しまくっていたし、かてて加えて、中三男子は片思いの真っ最中だったりした要素も相まって、出来た作品はこんな感じなのだった。
ようするに、今見ると恥ずかしい!という事だ。(我が家のスキャナーがA4までしか入らないので端が切れています)
女の子の右側から見ている主人公視点にのっとれば、最後のコマの顔の向きは逆の方が自然だ。背景はふにゃふにゃだ。人物もふにゃふにゃ。
ふにゃふにゃだけど、真面目に描いてるな~。一度でも描いた方ならご存知だろうが、「教室」というのは中々手間がかかるものだ。連載で学校が舞台のマンガを描く場合は、覚悟を決めるか、机の面より下は描かないような構図の工夫が必要となる。プロの場合は効率やスピードも大事なのだ。ただそれらを一切合切引き受けるという描き方ももちろんプロの有り様と言えよう。机の並びが揃っておらず、それぞれの消失点を別々に取っても好き好きと言えよう。
珍しく、バイクが描きたかったんだ、中学生が主人公なのに。ノーヘルだし。望月三起也の影響も色濃く出ている。このマンガを描くためにお小遣いはたいてBMWのプラモデルを買ったりもした。
この頃から既に、様々なイメージを並列して物語るという演出を使っていて、プロになってからもしばしば使う手法となった。
前述したが、相当しっかり時間を割いて描いている。特に冬休みに集中して描いていたのを覚えている。1話50ページ、2話41ページを、4色、2色、モノクロとページを分けて、雑誌の連載マンガの形式を模しており、プロになってからではそういうページはあまり経験しておらず、贅沢かつ好き放題なのは同人誌ならでは。
冬号が出たのは冬休み明けだったが、私だけが酔狂なのではなく、他のメンバーもまた、それなりのページ数の原稿を、きっちり仕上げてきている点が凄い。総ページ数は400を超えていたと思う。
今号も夏の号同様、分厚い仕様になった。今年度はなんと図書室に置かれ、全学年が閲覧出来る事になったのだった。
さて受験は何となくこなして何となく県立高に入学出来る事になった。(緊張感ないな)これまでの同人誌同様、本は分解され、それぞれの作者の元に原稿は返却された。そして同人たちはそれぞれの進路に向かい、別々の道を歩むことになったのだった。
さて、進学先では肉筆同人誌を続けることが出来るであろうか?そして少しはマンガが上手くなっているのであろうか?何しろ、正式には小学校の卒業文集に「将来はマンガ家になる」という宣言を高らかにしているので、一連の同人誌活動もそのための修行なのだ。果たして上野少年は将来マンガ家になれるのだろうか!?次回をお楽しみに!そしてサポートの方もちょっぴりお願いします!