ゲームを題材にマンガを描くということ
20年以上前に「ファミ通PS」(後に『ファミ通PS2』)というゲームの専門誌でゲームを題材にした「ゲームびと」というタイトルの見開き2ページの連載マンガを描かせて頂いており、後にエッセイになり、4コママンガになりと、形態をかえつつ、連載は10年近く続いた。残念ながら単行本は1冊出版されたのみで、未収録作品も多い。その当時の様子についてもいずれ語られる事もあるかも知れないが、今回はプレーステーション2を最後に最新ゲーム機器から離れた私に、いつの間にか「5」が出るというプレーステーションが存在するゲームの世界に、ありがたくも昨年突然依頼された「ファミ通」での4コマ連載により、呼び戻された。いわば浦島太郎状態で、担当の力を借りて、手探りで連載を進め、今年の7月で何とか無事に連載1周年を迎えたという、そんなお話なのだった。
タイトルは「ウエケンのゲーム誌ひさしぶり!」連載を始めてみると、昔とはかなり状況が変化しており、昔がいかに恵まれた状況下にあったのかが分かる、それは描き手も出版側も、という意味において。
今では考えられないが、20年前はプレイステーション本体とゲームソフトが潤沢に支給されていた。おかげで設備投資資金を考えずにネタ出しをすれば良いという実に恵まれた環境下にあった。「ファミ通PS」は当初月刊誌だったので、毎月2〜4本のソフトをプレイしその中から見開き2ページのマンガを描くというスケジュールだった。現在連載中の「ファミ通」は週刊誌なので、毎週1本の4コマ(厳密には4コママンガの枠の中で5〜7コママンガという自由なコマ割で描いている)ソフトは編集部や担当編集の私物をお借りしたり、無料の体験版をダウンロードしたり、自ら購入することによって賄う。我が家のNintendo Switchは自腹購入した物なのだが、プレイステーション5までは手が回らず、担当に本体を持参して頂き、駅前のレンタルルームにて「バイオハザード ヴィレッジ」「ファイナルファンタジーⅦリメイク」等をプレイした。
プレイ後にネタ出しをするが、ゲームが面白いから面白いネタを思いつくかと言うと、必ずしもそうはならないのが難しい所。冒頭1時間、早い時はタイトルからの駄洒落でネタが出来ることもあれば、5〜6時間プレイしてもネタが出ない時もある。
ネタだしの後はネームを描き、まず担当編集のチェックを受ける。問題や変更点がある場合は没か書き直し。ここまでは普通の雑誌での行程と変わらないが、担当のOKに喜んだのも束の間、今度はゲームメーカーのチェックを受ける必要がある。ここからが中々難しい。メーカーのチェックは本当に様々で、一切描けないという場合もあるし、キャラクターがゲームの中でしていない事や言っていないセリフは描けないという場合もある。本作はギャグマンガなので、キャラクターがゲーム内の設定を離れて動くというネタも思いつくのだが、このような場合は作者である私がゲームをプレイして感じた事を描くという表現位しか出来なくなってしまい、ゲームの世界の中の事を面白く描きたいという本作のやり方が適用されなくなってしまう。
メーカーのチェックにかかる時間を計算に入れると言うのもまた悩ましい問題で、早くても1日、長いときは一月くらい待たされた時もあった。待たされた挙句に没だった場合は泣き濡れてカニと戯れる他は無い。
コストパフォーマンスの面からも厳しい面があり、一本のゲームで何回かに渡り作品が描ければ良いのだが、一話程度だと、原稿料を考えると元が取れない場合も考えられる。switchのソフトには安価に楽しめるインディーズゲーム等もあるが、「ファミ通」の読者に前提無しで分かるネタを描くのが難しい。「ファイナルファンタジー」や「モンスターハンター」等は説明不要で内容に入ってゆけるわけだ。というわけでネタの選定は自ずとメジャータイトルになりがちなのだ。
そんなこんなで、何だかつらい局面ばかりを取り上げてきたが、では何故この仕事を続けているのかというと、ゲームが好きだからという他は無いという単純な脳みそがはじき出す単純な結論に行きつく。ああ、これで単行本が売れてくれさえすれば割の合う仕事になるのだが、そうそう、単行本も一週間に4コマ一本というペースなので、連載を二年半位続ければ出してもらえるかも!?・・・先は長い!