【実戦検討会】第一回:第九節横浜マリノス戦
皆さんこんにちは。今回から「実戦検討会」という形で仙台のオーガナイズについて実戦例から検討していこうと思います。マッチレビューと近しいものですが、基本的には変化図毎の局面検討を中心に、「今後仙台がどのように戦術を発展させていくのか」を一緒に考えていけたらなと思います。
本記事のテーマは、前回記事に引き続き「守備作戦について」でございます。
それでは、検討を始めていきましょう。
【目次】
■中央閉鎖4-4-2の基本形、前節からの修正点
■検討課題①:変化図
■検討課題②:攻勢発起点
■まとめ
【中央閉鎖4-4-2の基本形、前節からの修正点】
本戦術に至るまでの経緯と基本形の主張点と急所は前回記事を参照のこと。 (前回記事リンクはこちら)
■基本形について
・基本図 : 4-4-2
・戦術系統 : 待機戦術、リアクション
・目的 : CHへのパスコース封鎖
→具体的な手段
①2トップによるCHのマーク
②CHはセンターレーンのゾーンを守備
③ワイドのWG(SH)ないしハイポジションをとるSBを奪取/阻止点として、同サイドSBのマンマークとSHのプレスバックにより挟み込む
(↑基本図① : 4-4-2による中央閉鎖とコストスペース)
(↑基本図② : 中央閉鎖時のパスコース)
(↑基本図③ : ワイドレーンでの阻止例と前節からの修正点)
菓子杯清水戦、前節徳島戦と同様に基本形に変化はなかった。明確な奪取/阻止点の設定とコスト局面はこの試合においても発生し、いくつか決定的なものはあったものの「中央を割らせない」という目的は達成出来ていた。
前節から引き続き目的を達成していたので、守備作戦における基本形の構築は完成したと評価できそうだ。
■前節からの修正点
基本図③の形は修正点として最もわかりやすい例と言える。前回記事で紹介したように、前節までの仙台は相手CBへの規制手段を持ち合わせておらず、完全にフリーにしてしまっていた。今節では基本形のコレクティブな阻止によりバックパスを誘発し、それをFWによるプレスのスイッチとしていた。
加えて、プレスの方針も明確であった。奪取よりも遅滞、パスコースの誘導を主目的とし、アバウトなボールを蹴らせるという方針である。結果として、中央で待機しているゾーンの網に引っ掛ける事に繰り返し成功していた。
前回記事で筆者は「現行の守備モデルの上方修正に留めるべき」といった旨の提案をしていたのだが、それを中3日という短期間で準備出来た事はとても喜ばしい事である。
【検討課題①:変化図】
今節では主要な変化が複数個あり、それらの傾向から検討すべきテーマを考えてみた。まず1つ目は「相手選手のサポートへの対応」である。
(↑変化図①:OHによるサポートデスマルケ)
前回記事にて記載した通り、本戦術の基本形のコスト局面において、ワイドにて数的同数以上の対応をする事は難しい。
変化図①ではWGが大外に張ってOHがサポートに入りパスレシーバーとなった。本来HSにて待機し、WGへの配球に備える予定であったSHは、ワイドにてサポートするOHに釣りだされHSが空いてしまう。自チームのCHはそのカバーに入る他なく、中央を緩和されてしまった。
本局面の実戦ではOHがアーリークロスをあげるという選択をしたが、溜めて、空いた中央に飛び出す味方に配球するといったプレーも有力な選択肢の一例として考えられる。
仙台はその飛び出す選手に誰がつくのか、配球されてしまった後のチャレンジ&カバーをどうするのか、といった準備をすべきであろう。
2つ目は、「CBの持ち上がり」である。
(↑変化図②:相手ビルドアップ時のコンドゥクシオン)
本局面における仙台の回答はFWによるマンマークであった。内を切りながら相手センターバックのパスコースを誘導し、基本図③の局面に合流していく。
課題があるとすれば前線選手の枚数が一人減る事をどう解決するのか?という所ではあるのだが、二兎追うものはなんとやらという慣用句があるように、何事も全てを得る事はできない。これは受容すべきコストとして割り切る方が自然である。
3つ目は基本図③の発展形、「SHによるプレッシング」である。
(↑変化図③:最終ラインへのSHの規制)
相手最終ラインの横パスに対し、SHが内側に絞っていることを活かして内側を切りながら規制をかける。存在するリスクは個人戦術による打開くらいなもので、剥がされない限り「パスコースを誘導する」という目的はクリアできる。
本局面から決定機に近いショートカウンターを実現する事も出来ていたので、本図は有力な局面であると評価する。
【検討課題②:攻勢発起点】
ブロックを組んで待機戦術をする仙台における主たる攻撃手段は奪取後のカウンターである。それ故に、仙台は今後「如何にしてカウンターを成立させるか」に脳漿を絞らねばならない。ここでは、奪取後に一定距離前進できた地点を「攻勢発起点」とし、今節におけるその位置と数を検討することにする。
今節の攻勢発起点を集計すると以下の通り。
Defensive Third : 52.2% (12/23)
Middle Third : 43.5% (10/23)
Attacking Third : 4.3% (1/23)
‹ 内訳 ›
・ビルドアップ : 2回(決定機2回)
・地上戦 : 3回(決定機1回)
・空中戦 : 5回
・前線のプレス : 1回
・阻止からの陣地回復(副次的に攻撃に繋がったもの) : 12回(決定機2回)
(※筆者集計なので見落としがある可能性大。あくまで傾向として見てください。)
待機戦術をとる以上、攻勢発起点がディフェンシブサードやミドルサードに偏るのは仕方のない事だ。それ故、重心が後ろであることを悩む必要はない。
ディフェンシブサードからの攻勢発起点は、その全てが相手の突破を阻止し、陣地回復を狙って蹴り出したものであった。西村選手のポストプレーや赤崎選手のデスマルケによって、カウンターに繋げられているのは明るい情報だと言える。ロングカウンターによる得点力を強化する点については、新加入の外国人選手に期待すると共に、チームのプレー精度向上に期待したい。
ミドルサードでの攻勢発起点も半分近くを占めている。それだけ待機戦術の完成度が高まっていると評価できそうだ。また、ビルドアップに近しい形でスルーパス、サイドチェンジによる決定機創出もミドルサードでは実現できていた。相手が保持を拒否した場合のビルドアップの整備も、今後の仙台には必要な要素となるだろう。
アタッキングサードでの攻勢発起点は変化図③の局面に類するものであり、その後のショートカウンターの精度を高めていけばこれを武器にすることも実現するだろう。
以上の集計と検討から、仙台のゲームモデルが浮き彫りになったと思う。読者の皆さんも、あらゆる視点から仙台のゲームモデルを検討してもらいたい。
【まとめ】
基本形、修正点、変化図への回答と、現在のチームオーガナイズ進捗を可視化できたのではないかと思う。
今後の仙台に期待することは、
・基本形をゲームモデルの基礎として継続していく事
・相手のサポートへの対応策の検討を進めていく事
・カウンター攻撃の精度を高めていく事
である。しっかりした土台が作り上げられたので、焦らず確実に勝利へと近づいて貰いたい。
スタンディング仙台!!!
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