高野右衛門ーNNビータの鬼退治ー【脚本】
主要人物
NN・ビータ︙夢はスーパースター。
高野右衛門︙角の生えた猫。好物は高野豆腐。
J・アイアン︙ビータの同級生
SS・ネオ︙ビータの同級生
SZ・ハナ︙ビータの同級生
#1 スーパースター
公園
『6月』
ベンチにビータ(19才)とハナ。
おばさんが連れている芝犬が、高野右衛門に吠えている。
ビータ「犬って怖いよね。やろうとすれば人間の喉笛嚙み切れるじゃん。なんでやらないんだろ…」
ハナ「……。フフフ。なんででしょうね」
高野右衛門、犬と睨み合い。
『鬼獣 人類を捕食した数だけ強力になる怪物』
ビル街
『9月』
ビータ、有害鬼獣(人類捕食数5)と戦う。
ビータ、刀が折れる。
ビータ「やべ」
鬼獣、ビータに襲い掛かる。
サブマシンガンで鬼獣、蜂の巣。
J・アイアン、登場。
腰に鬼獣の生首2つぶら下げている。
アイアン「オウ!ビ〜タァ!モタモタしやがって、才能ねぇな!」
ビータ「横取りなんて卑怯だぞ!アイアン!」
『ポカッ』
ビータ、拳骨される。
二人歩く。
SS・ネオ、合流(腰に鬼獣の首4つ)。
ネオ「よ!……ビータは今日も退治ポイント0か。才能ねえな。」
ビータ「初日に骨折して一月出遅れたんだ。仕方ないだろ!」
ネオ「それでも、もう一週間はやってるだろ。一週間で0はねぇわ」
アイアン「そういうこと」
『ポカッ』拳骨。
ネオ「まっ、ハナに比べれば俺らの才能なんて屁だよ」
SZ・ハナ、バランスボール程の大きさの鬼獣の生首に座っている。
ネオ「それ何点だ?」
ハナ「69」
アイアン「こんなのどう切んだよ」
ハナ「才能」
ビータ「……」
ビータの家(お馴染みの一軒家)
ビータ、自分の部屋のドアを開ける。
ビータ「こやえも~~ん!」
高野右衛門、いない。
家中探し回る、いない。
冷蔵庫から高野豆腐をだす。
ビータ「こやえもーん。高野豆腐だぞー」
高野右衛門「ニャ~」
冷蔵庫の上に、高野右衛門。
『無害鬼獣 人類捕食数0』
ビータの部屋
高野右衛門、高野豆腐を食べる。
ビータ「アイアンとネオが『お前は才能ないからやめろ』って言うんだ、こやえもーん。才能てっ、才能てなんだよ!費やした時間だろ!絶対追い抜いてやる!僕はスーパースターになるんだ!僕はやるぞ!」
高野右衛門「ニャ~…」😦
ビータ「……ちょっと落ち着けってか。ふぅ。状況を整理しよう。人を捕食した鬼獣は、有害認定され、僕らが退治する。退治した有害鬼獣の『人類捕食数』がポイントとして付与される。僕は今『23-24桃太郎杯』にエントリーしている。23年の8月から24年の6月までに獲得したポイント数を競う大会だ。優勝してやる!スーパースター!僕はやるぞ!」
高野右衛門「ニャ~!」😀
ビル街
ビータと高野右衛門、特訓と鬼退治の日々。
『11月』
アイアン、スマホの画面を見ている。
桃太郎杯の順位表『31位 NN・ビータ 5042P 32位 J・アイアン 4998P』
アイアン「チッ!」
ビータと高野右衛門、特訓と鬼退治の日々。
『2月』
ネオ、スマホの画面を見ている。
『15位 NN・ビータ 21203P 16位 SS・ネオ 21081P』
ネオ「アハハハ(真顔)」
ビータと高野右衛門、特訓と鬼退治の日々。
『5月』
ハナ、スマホの画面を見ている。
『5位 NN・ビータ 71533P 6位 SZ・ハナ 68206P』
ハナ「……」
公園
『6月』
ベンチにビータとハナ。
ハナ「ビータさんに話があるの」
ビータ「?」
ハナ「今朝のアップデートで鬼獣の人類捕食数のカウント期間が過去50年から過去2百年になったのよ。で、こやえもん」
スマホ見せる。
ビータ「高野右衛門、有害鬼獣猫型、人類捕食数210330。……」
ハナ「イカレ鬼獣だったのよ。ビータさんの安全のためにも、これからする事の邪魔しないでね」
高野右衛門の背後にアイアン。
アイアン、斧を振り下ろす。
高野右衛門、かわす。
アイアン「チッ」
アイアン、サブマシンガンを構える。
ビータ「…なんだよ…二十一万て…(茫然自失)」
ハナ「こやえもんちゃーん!次かわしたらビータさん殺すよ」
ハナ、ビータに刀を向ける。
高野右衛門、被弾。
ビータ「ばっ!(我に返る)」
ビータ、ハナを突き飛ばす。
アイアンに飛び蹴り。
ビータ「よけろよ!バカ!」
アイアンぶっ飛ぶ。
アイアン「はい!有害鬼獣匿(かくま)ったー!妨害行為ー!ポイント全没収ぅー!」
ビータ「狙いはコレか!」
ネオ「両方さ」
ビータの背後にネオ。
ネオ、金棒でビータの横腹をフルスイング。
ビータ、ぶっ飛ぶ。
ハナ、ビータに近づく。
ハナ「目障りなのよ、ビータさんの才能。妨害者への暴力は不問。右腕を落とす」
ハナ、刀を振り下ろす。
右腕が吹き飛ぶ。
ハナ、絶叫。
巨大化した高野右衛門、ハナの腕を食べる。
ネオ、ハナのもとへ。
アイアン、棒立ち。
ネオ「ビータ!殺せ!あの化け物を殺せ!」
ビータ、高野右衛門に近づく。
ビータ「こやえもん…」
高野右衛門「……」
ビータ「……こー……。よ、よし!逃げよう!一緒に逃げよう!」
高野右衛門「……」
ビータ「こんなに強いなら大丈夫だ!逃げられる!」
高野右衛門「……」
ビータ「早くしないとハイスコアの連中が来る!逃げないと!」
高野右衛門「……」
ビータ「……」
ビータの部屋(精神世界)
部屋の中にビータ。
窓の外に高野右衛門。
ビータ「何で逃げないの?逃げれるんだよ」
高野右衛門「ビータ君の友達を傷つけた、逃げないよ」
ビータ「逃げなきゃ、死ぬんだよ…」
高野右衛門「……………(屋根から飛び降りる)ビータ君はやるんだろ」
(精神世界終わり)
公園
ビータ「……僕はやるぞ」
ビータ、高野右衛門の首を刎(は)ねる。
『23-24桃太郎杯 優勝 NN・ビータ』
ビル街
逃げる人々。
ビータ、人の流れに逆行。
ビルより大きい鬼獣3体。
刀抜く背中。
#2 ガキ大将
小学校・校庭
『昼休み』
六年生の男子A、同級生の女子3人と朝礼台に座って談笑。
女子にボールが飛んでくる。
A、キャッチ。
男子B「ヘーイ」
校庭の真ん中で、六年生の男子が5対5でドッチボールをしている。
A 、ドッチボールに交ざる。
A 「交ぜて交ぜて!3人も来いよ!」
A、投げる。
男子Jの顔面に直撃。
A 「いええ~い!アウトォ!あれ、顔面セーフ?ルール誰か教えてくれ」
J 「コラ!クソホスト!ドッチの邪魔だ!向こうへ行けっ!」
同・教室
J、立たされている
担任「Jくんはどうしてこんな発言をしてしまったと、皆さんは思いますか?」
A 「…嫉妬だよ」
女子C「Jくんは嫉妬してるんだと思いまーす」
B 「Jは勉強も運動も誰よりもできるんだぞ!なんで嫉妬すんだよ」
A 「モテない」
C 「Jくんはモテないから嫉妬してるんだと思いまーす」
「それしかなくね」
「ダサすぎ」
「キモい」
担任「自分自身はどう思う?」
J 「フッフッフッ。お奉行!発言の機会をありがとうごぜエやす!」
J、教壇に上がる
J 「まず顔面OUTは喧嘩の元になるから顔面はセーフだ。遊びっつーのは始まった瞬間から盛り上がるわけじゃない。皆で『楽しい空間を作るんだ!』という思いを一つにして、段階を踏んでいって、初めて盛り上がるんだよ!エッ、なんか、盛り上がってんじゃ〜ん。ルールとか知らねぇけどさ、交ぜてよ!交ぜるかよ!!一人見繕って、5人組作って、ゲームが終わってから『チーム3つでリーグ戦やろうぜ』が筋だろ!海賊行為が過ぎるだろ!海賊がぁ!ああ!海賊かぁ!テメェ海賊かぁ!」
女子D「昼休みはオフィシャルの大会じゃないよ」
J 「……確かに」
J、声の方を見る。
J 「誰、お前」
D 「え?あ、え?うう……(下向く)」
C 「キスギさんだよ!いつも一人で本読んでるキスギさん!」
キスギ「う……」
担任「はい、席もどって。…まぁ。誰しも嫉妬しちゃうこともあると思う。それでもね―――」
同・階段
J、ランドセルを膝に抱えて階段に座る。
J 「嫉妬にされる……。遊ぶときの関心意欲態度の話をしてるのに……。俺ズレてんだな。そんな気はしてたよ。……女子の目があると急に大げさに失敗するヤツ、急に静かになるヤツ、急にムキになるヤツ、ゲームの流れなんてお構いなし、『面白い』が一番じゃなくなったんだな」
J、ランドセルを叩く。
J 「どう思われたいかが一番か!つまんなすぎるは!」
J、階段駆け上がる。
J 「うええ~~~んん」
J、誰かと衝突。ぶっ倒れる。
J 「ううぅ(うつ伏せ)」
誰か「大丈夫?」
誰か、Jの肘に触る。
J 「触ってんじゃねえよ!!(跳ね起きる)ハッ!」
ばらまかれた本とキスギ。
J 「いつも一人で本読んでるキスギ!」
キスギ「う……」
J 「お前、いつも一人で本読んでっけどさ」
キスギ「うぅ……」
J 「ひょっとして本て面白いのか!」
キスギ「え?、……う、うん。」
J 「やっぱり〜。でもオレ一冊も読み切ったことないんだよね」
キスギ「……読みきらなくていいんだよ。ほら!こうやって偶然開いてるページだけ読むとか。それでも十分面白いよ!」
キスギ、ばらまかれた本の一つを読む。
J、キスギの横顔見つめる。
キスギ「読めた?」
J 「一文字も読んでない。(寝転ぶ)で、どんなこと書いてあんだ~?」
キスギ「趣旨と違うんだけど……。えーと、若いうちからいろいろ知りすぎているのは、不幸かもね。みたいなこと。」
J 「年下に負けた人の負け惜しみかな」
キスギ「でもこの作者、若い頃から評価されてるんだよ」
J 「じゃあ真実ってことか」
キスギ「真実なんてあるのかな」
J 「……。じゃあ直感を大切にするとして、どんなに丁寧に年を重ねても若さへの嫉妬…しっと…うわー出た!嫉妬!出やがったよ!……そっか、嫉妬って使い勝手良いんだ」
キスギ「ハハハハ。こうやって思考が迷子になったり進んだりするの面白いでしょ。嫉妬って簡単に言われちゃうの分かってても、言わなきゃって思う時があるんだよ。今日のJくんみたいに」
J 「……トドメ刺したのお前だけどな」
キスギ「あっ、う……」
J 「一冊借りるわ。じゃ明日。……明日ドッチボール一緒にやるからな。」
キスギ「え?」
J 「本が面白いのは少し分かった。だから今度は俺がドッチボールの面白さを教えてやる!」
キスギ「あ、うん」
J 「言ったな!『うん』て言ったからな!」
J、走る。振り向く
J 「休むなよ!」
帰路(夕)
J、歩き読み。
Jの家・外観
J、歩き読み。
家に入る。
同・Jの部屋
J、読む。
同・リビング
家族4人で夕飯。
同・Jの部屋
J、読む。
本を閉じる。
J 「生殖能力がなくなった老人が、意識のない美女と添い寝をしながら、過去の女性関係を振り返る話」
J、机につっぷす。
J 「ターゲット層が祖父だ……」
小学校・教室(翌日)
J、机に突っ伏している。
(キスギは学校を休んだ。鬼に食べられたらしい)
街角・掲示板(6年後)
J(18)、掲示板を見ている
J 「23-24桃太郎杯、優勝すると……タイムマシンに乗れる……面白い!」
テロップ『23-24桃太郎杯 参戦 J・アイアン』
ビル街・雪
『12月』
アイアン、サブマシンガンを構える。
前方に鬼。
鬼の首が刎ね飛ぶ。
ビータと高野右衛門、登場。
ビータ「おい!アイアン!モタモタしやがって、才能ねぇな!」
おわり