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GAAD Japan 2020 を視聴して(後半戦)
今回は先日書いた内容の後半戦です。
前半戦はこちら。
(GAAD Japan 2020 を視聴して(前半戦))
とはいえ、後半の感想というのではなく、今回はちょっとした「提案」をしたいと思います。
※外野からの提案なので、運営の方々は軽い気持ちで、優しい目で見ていただけましたら幸いです。
アクセシビリティを浸透させるには?
今回の一連のセミナーを拝聴して、テクニカルな面や WAI-ARIA 関連の実装など、制作部分についてはかなり進んでいて、視聴者も多く、制作サイドではこれらの共有がしっかり出来ているようにも感じました。その一方で、時々聞かれる「予算への組み込み方」とか「設計段階から考慮したほうが後から修正するよりも圧倒的にコストがかからない」といった「コスト面」からの導入プロセス、この部分の進化が他に比べてゆっくりしている印象を受けました。
ざっくり言うと、
「経営層にいかに響かせるか、発注者にどうやって予算を確保させるか」といったビジネス視点の問題をもっと具体的に考えた方がいいかな?
と感じました。
ということで、経営者サイドに近い(というか経営者の)私から、少し提案させていただければと思います。
例えば「商業ビル」
例えば、あなたがビルのオーナーとなって、新しい商業ビルを建設するとなったとします。建てたいビルのイメージを施工主に伝えます。ビルのイメージがどんどん出来てきます。ある程度設計が進んで、地上12階の立派なビルの設計図が施工主から出てきました。ですが、ここで問題が発生しました。予算をオーバーしてます。さて、あなたは何を削りますか?
いかがでしょう?
まず壁材だったり、天井の素材だったり、あまり見えない部分から手をつけますよね?
過去には「耐震構造」にまで手をかけてる人もいました。将来あるかどうか分からない地震のための「見えない設備」。見えてないし地震が来なかったら使われないし、と法律を犯してまで予算を削る人もいました。見えない部分から削りたい気持ちは十分に分かりますが、法を犯すのはいただけませんね。
では、「バリアフリー施設」はいかがでしょう?
多機能トイレを無くしてシンプルにしたり、駅までのルートの点字ブロックを無くしたり、階段の手すりを無くしたり、エレベーターの音声案内を削ったり。。
します?(念のため、法は犯してません)
私だったらしません。むしろ1フロア無くして11階建てに変更してでも多機能トイレは残すと思います(売上問題とか諸々あるとは思いますが)。それくらいバリアフリーは当たり前になっています。
そして出来上がったビルに入って、多機能トイレにいっぱいついているピクトグラムを見てほくそ笑むと思います(やや気持ち悪い)。
※ピクトグラムとは視覚記号の1つで、単色で簡略化することで、ひと目で何かを分かりやすく表した記号です。トイレにあるものだと、男子トイレ、女子トイレ、誰でもトイレ、車椅子対応、オストメイト対応、ベビーチェア、おむつ替えエリア、ユニバーサルシートなどがあります。
これは経営サイドからのアピールでもあります。「どんなお客様も大切にします」という気持ちを沢山のピクトグラムで表しています。
話は戻って「ウェブサイト」
ウェブサイトをリニューアルする時のお話。リニューアルの予算があがってきました。予算オーバーしています。さて、あなたは何を削りますか?
当然、見えない部分から削ります。場合によっては1つのコンテンツを削ります。この時「アクセシビリティ対応」の予算に関して、削りまではしなくても、渋々OKする経営者の方が多いと思います。
経営者「何が変わるの?」
担当者「障害者や高齢者が使いやすくなります」
経営者「ふーん。。」
というのが大半の反応ではないでしょうか?私も「アクセシビリティ」を知らなかったら多分「ふーん。。」と言ってると思います。(必要なのは分かるんですよ!分かるんですけど、何がどう、というのが具体的に見えないと「ふーん。。」しか言いようがないのです!)
どうですか?そんな経験はありませんか?
時は遡って10数年前
今度は10数年前、企業がウェブサイトを持つことが当たり前になって、中小企業のどんな小さな会社でも「サイトを作ろう」という機運の頃の話です。
経営者A「ウチのホームページにも右上に付いたよ」
経営者B「何が?」
経営者A「文字を大きくするボタン」
経営者B「何それ?」
経営者A「これがあると目の悪い人でも、、、(以下略)」
という会話を私は何度も聞きました。それはもう2~3回とかではなく何回も。横並びが好きな日本企業、ライバルに遅れを取りたくない日本企業、これが理由かどうかは分かりませんが、当時、右上に文字の大きさを変更するボタンがいろんなサイトに付きました。今では忌まわしき記憶とする製作者も多いこのボタンですが、経営者からはすこぶる評判が良かったと思います。
経営者は「ほくそ笑みたい生き物」です
ここまで長かったですね。失礼いたしました。
簡潔に言います。経営者は「ほくそ笑みたい」のです。遅れを取ってるライバルに自慢したいのです。
ですが、今のウェブサイトには自慢できものが無いのです。みんながみんな別々に動いているので、比較するものもないし、社長がアピールするものも無いのです。
ということで、ここから「提案」です。
トップページの分かるところに目印を置こう
はい。純粋に経営者がほくそ笑む用です。
とは言え、マークだけ置いても意味がありません。そこで、例えばなのですが、、
「ヒーロースペースのカルーセルの一時停止ボタンを特殊なものにしよう」
を提案します。
御社のトップページの目立つ部分、時間がたつと画像が切り替わりませんか?
これ、目の見えない方がスクリーンリーダーで読み上げてる時に切り替わると急に読まれてる文章が変わって訳が分からなくなったり、実装が上手く配慮されてないと切り替わる度に最初に戻らされて先に進めない場合もあります。また、弱視の方は拡大鏡で400%とか大きくして読んでる時に画像が切り替わると途中で読めなくなります。あと、発達障害の方の中には、画像が切り替わるとそちらばかり気になって他の文章が読めないという方もいらっしゃいます。
そういった方のために、時間がたつと画像が切り替わる「カルーセル」と呼ばれるものには、一時停止ボタンが必要です。
これ、アクセシビリティを理解しているサイトは一時停止ボタンが付いているのですが、付いてないサイトも沢山あります。ですが、ほとんど目立ってないため、「これが必要だ」という理解がなかなか広まりません。
たとえば、この「一時停止ボタン」、こんな感じにしてはいかがでしょう?
(本当にごめんなさい。デザインセンス皆無なので、どなたかもうちょっとカッコ良くお願いします)
一時停止の二本の棒を数字の11に見立てて 「a11y」( =accessibility : aとyの間に文字が11文字あるので、アクセシビリティの略称として使われてます)を表してみました。
デザイン上は迷わないように限りなく一時停止に見せないといけないのですが、初めて見た人は「何これ?」となって興味をそそられます。
啓蒙活動が必要ではありますが、これを理解した経営者は自社のサイトにコレがあると「ほくそ笑む」ことが出来ます。対応してないと「なんでウチはやってないの?」と横並びで実装が進むと思います。
いかがでしょう?
(念を押しておきますが、私はデザインセンス皆無なので、もし賛同されるデザイナーさんいらっしゃいましたら、もっと格好いいものをお願いします)
※ちなみにアクセシビリティ基本方針ページは経営者は見ません。それどころかフッターに何があるかも知らない人が多いと思います(人によりますが)。
まとめ
目に見えない予算は取りづらいし、削減されやすいし、説明も難しいです。予算の厳しい昨今、後回しにされがちです。
法律が手助けすればまだましなのですが、その手助けもありません。それは建設業界も同じです。交通機関には交通バリアフリー法というものがありますが、商用ビルなどには未だそういった法律はありません。それでも充実してます。それらを参考に、経営者が「ほくそ笑む」ようなアピールをして、予算を確保しやすい環境を作ることを今回提案させていただきました。
他の方法でも全く構いません。世界中にアクセシビリティが浸透することを願っています。
というところで、今回はここまで。