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彼女が表現する美しくも儚い夏の世界とは?~上田麗奈2ndアルバム"Nebula"全曲レビュー~
はじめに
(※今回の考察はあくまで個人の見解に過ぎません。感想はありがたいですが、それは違うでしょといった批判は控えていただけると幸いです。)
いつもお世話になっております。
おいしいエクレアと申します。
本題に入る前に、あなたにとっての
「夏」のイメージは何ですか?
皆さんが思う夏のイメージは
「爽やか」「フェスが多い!」
「アウトドアのイベントが多い」「青春」
という明るく透き通るイメージがあると思います。
このアルバムを聴く前の私も、
「夏は爽やかなイメージ!」
といった固定概念を持っていました。
でも、上田麗奈さんはこれらの固定概念の影響で、「夏はちょっと苦手だ...」と思っていたそうです。
そこから苦手=拒絶といった言葉を連想し、
拒絶や挫折といった逆境を乗り越えていく
といったテーマでNebulaを制作したと
話していました。
つまり、上田麗奈さんが抱く夏のイメージは
皆さんが思い浮かべる「プラスの感情」ではなく、
「マイナスの感情」だと考えます。
これから自分なりの楽曲レビューを通して
Nebulaのアルバムを紐解いていくと共に、
彼女がアルバムを通して思う夏のイメージを
考察していきますが、心の準備はできていますか?
それでは彼女が表現する
美しくも儚い夏の世界を覗いていきましょう。
アルバム名に込められた意味
Weblio辞典によると、Nebulaは
「星雲」という意味を持っています。
星雲(せいうん、nebula)とは、宇宙空間に漂う、重力的にまとまりをもった宇宙塵や星間ガスなどから成る天体のこと。
(Wikipedia参照)
Nebulaというタイトルを私なりに考察すると、
美しくいつまでも観ていられる夜空に対して
「憧れ」を心のどこかで抱いている。
だけれども「憧れ」が強い分、現実での挫折や絶望といった感情が星雲と対比することによって明らかになってしまう。
つまり、星雲という単語を用いるだけで、
「夏の夜空」
「理想(夜空)と現実(地上)のギャップ」
二つの意味を考える事ができるのです。
上田さんのアルバムの楽曲に当てはめてみると、
・うつくしいひと~白昼夢が
夜空(理想)のイメージ。
・Poème en proseで
夜空から現実へ引きずりこまれてしまう。
・scapesheep~デスコロールまでは
現実に直面するが、絶望を受け入れられず、
逃げているイメージ。
・プランクトン~わたしのままでの部分で
絶望の先に希望があることが分かり
徐々に立ち直って、夜空を眺めることが
できるようになる。
そして最後のwallでジャンプする歌詞から
「地上から夜空へ羽ばたいていく」
こんな流れで物語は進んでいくのではないか?
と私は解釈しました。
1.うつくしいひと
作詞・作曲・編曲:rionos
「うつくしいひと」は
個人的に一番好きな楽曲です。
バンドの音がそれほど多くないため、
上田さんの想いがストレートに届くため、
1曲目から泣きそうになってしまいます。
また、この曲の凄いところとしては、
「アルバムの1曲目として聴く時と、wallを経て11曲目として聴く時とで歌詞の重みが全然違う」ところ
です。
例えば「無垢なあの日の私が笑うから」の歌詞。
1曲目として聴くと、「無垢なあの日ってどんな日なんだろ?」と疑問に思います。
でも、アルバムを一通り聞くと、
「絶望や挫折の経験を知らない純粋無垢な時かも」と想像することができました。
なので、曲を一通り聞き終えた後、
うつくしいひとの歌詞カードを見てみると、
歌詞の意味が深く読み取れると思いますよ!
2.白昼夢
作詞:ChouCho 作曲・編曲:村山☆潤
上田麗奈さんが
絶望・地獄とオーダーした曲でもあります。
白昼夢は先程述べた通り、
夜空(理想)のイメージが強いです。
ただ、徐々に絶望や挫折の存在を知ってしまってきているので、ピアノの音が重低音に紛れて理想と現実が入り混じっている状態になっています。
個人的に、Aメロの三連符のリズムになる箇所と、
サビ前「もう聞きたくないんだよ」と
「想い紡ぐの」の歌い方が違って凄く好きです!
また、最後の「祈りが届きますように」という歌詞。理想のままでいたいといった願望が含まれていると考えられます。
3. Poème en prose
作曲・編曲:TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND
気付かないうちに私達が持つ
音楽の固定概念が壊れて行く。
白昼夢からscapesheepへの世界観に繋ぐ役割
として設置されているこの曲。
私が注目しているポイントは
「絶妙な空白の時間の使い方」です。
曲の中で空白の時間を作ることは、
「音楽の流れを止まてしまう」といったリスクがあるため、このPoème en proseの絶妙な空白時間が彼女が表現したい絶望・挫折への予兆を表現しているのではないでしょうか。
4. scapesheep
作詞・作曲・編曲:TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND
嫉妬や妬み、怒りなどが感じ取れる歌詞。鳴り響く重低音を含んだ機械音。闇を含んだ上田麗奈さんの歌声。あふれんばかりの絶望や挫折の感情がこの曲から伝わってきます。
また、「ひどく曖昧な感情と~いつも」までの
ラップ調のパートが途中で登場しますが、リズムをここだけ変化させることによって、一番伝えたい場所はここだ!といった解釈に、私には聞こえました。
嫉妬や妬み、怒りなどの感覚は自分でもわかりやすいが、それを感情に載せて外へ放つのは難しい。だから微笑みで感情を抑えこんでしまう。
といった心の中での葛藤がこの部分の歌詞から
想像することができます。
5.アリアドネ
作詞・作曲:山田かすみ 編曲:Saku
個性的な曲が集まるNebulaの中で一番衝撃を受けました。もしかして...とカードを確認したら
「山田かすみ」さんの文字が。
ご存知の方はいらっしゃるかと思いますが、
山田かすみさんはEmpahtyの「いつか、また。」
を作曲されている方です。
私はEmpahtyのときから、
上田さんの本業である「声優」という仕事を活かして、まるで音楽劇の一曲として楽曲製作をしているように考えていました。
今回のアリアドネもワルツ調なリズムなところがとてもミュージカル風で「音楽で伝える表現の可能性」を改めて感じた一曲でした。
個人的に、歌詞全体を見ていると、
「絶望や挫折を主観的ではなく、客観的に見ているイメージ」がありました。
つまり、絶望や挫折を直接的に受け入れられなので、劇という形をとり、まるで他人の絶望や挫折を経験したのを見ているかのようなイメージがこの歌詞から読み取れました。
絶望や挫折を誰かに言うことは凄い勇気のあることなので、アリアドネのようなミュージカルのような曲調で伝える方がきっと本人が伝える最善の形なのかもしれません。
6.デスコロール
作詞:良原リエ 作曲・編曲:Babi
絶望や挫折をアリアドネでは客観視していましたが、ついにこのデスコロールで直面してしまいます。
曲も上田さんの歌声からも
「今にも消えて泣くなりたい...」といった
感情があふれんばかりに出てきます。
個人的にこのデスコロールの曲は挫折や経験の数が多ければ多いほど歌詞の深みが増していく不思議な楽曲だと考えています。なので、5年後・10年後にもう一度聞いてみると違った解釈ができるかもしれません。
7.プランクトン
作詞:上田麗奈 作曲・編曲:広川恵一 (MONACA)
「ここはどこ。わたしはだれ」という歌詞から始まるプランクトンでは絶望の先に何があるのか模索している様子が描かれていると考えます。
ゆったりとしたミディアムテンポが
模索している様子をうまく表現していますね。
上田麗奈さん本人が歌詞を担当されていることもあり、より自分が抱いている想いをさらけ出しているといった印象があります。
「自分はこれから先何をすれば良いのか。」
迷う時期が必ずきます。そんな時、周りと合わせず世間に逆らって自分なりの道を探していきたい。
そんな想いが伝わってきます。
私の個人的推しポイントは、最後の上田さんが歌唱した後、楽器だけの音が残り続けるところが大好きなんです!(もっというと最後キーボードだけ残るところをイヤホンで聞くと波揺らいでいる様子が音として表現されているので是非イヤホンで最後の15秒間聴くべきです!)
こういうボーカル無しの楽器の音のみで最後の部分を終わらせるといったテクニックは、東京事変さんの「永遠の不在証明」という曲が印象に残っています。終わり方がおしゃれでもう一回聴きたい!といった気持ちにさせられますよね。
8. anemone
作詞:Annabel (siraph) 作曲・編曲:蓮尾理之 (siraph)
今回のNebulaの中で唯一MVが製作されている曲。
MVの日常生活の様子からもわかるように
「挫折や絶望を経験したから失うものはほとんどない」といった様子で立ち直っているのが感じられます。
特にサビ終わりの掛け合いは自問自答しているような雰囲気がありましたね。
また、曲の全体の雰囲気として
カラーよりはモノクロっていう感じがするんですよね。抽象的で申し訳ないんですが、電子音を使っているのにも関わらず、今の令和の時代のソングよりかは昭和、平成を彷彿とさせるんですよね。
なので、何度もリピートして聴きたくなります。
9.わたしのままで
作詞:Annabel (siraph) 作曲・編曲:照井順政 (siraph)
歌詞の一つ一つが印象的な曲です。
私は、今まで何度も挫折した経験があり、次第に「もう傷つきたくない」と新しいことに挑戦することが怖くなっていました。
でも、「描いていた理想と違っても大丈夫だよ」という歌詞を聞いた時、「挫折とは失敗することではなく、自分自身が成長するきっかけなんだな」と、自分の中で納得がいった瞬間思わず涙が零れてしまいました。
そして、やっと希望が見え始めたと思えるような明るさを楽器の音色から感じることができますね。
特に「昨日までの私も連れて行くよ わたしのままいくよ」は、anemoneで悩んでいた自分の方向性がようやく定まった感じがしました。
10.wall
作詞・作曲・編曲:コトリンゴ
自分の方向性が分かった後は、後は行動するだけ。
だから、気分が今まで以上に楽になった印象があります。特にjumpや、夢、未来といったポジティブなワードが飛び出しているところからも想像することができますね!
個人的に好きなポイントは1番Bメロの「心を決めたなら」の裏でなっているクラップです。というか
ここのBメロのリズム全体どうなっているの???と思うくらい複雑ですよね!今まで楽器の数があまりなかった分ここで色々な想いが爆発しているような印象があります!
曲の最後に持ってきたかった理由も何となくでは
ありますが、わかる気がしました。
まとめ
長文になってしまってすみません。
でも、それだけNebulaというアルバムに対して
感じたことが多かったです。
でも、覚えておかなければいけないのは、
挫折や絶望は一度きりではないこと。希望が見えて
理想へ近づけば近づくほど、今まで以上の挫折を
経験するリスクがある。でも、そうやって人は成長して行くのではないか。
といったことをこのアルバムを通して改めて考えさせられました。
余談ですが、ジャケ写の上田麗奈さんは長袖を着ているのが夏らしくなくて印象的に残っています。
いつの間にか長袖=冬の季節に着るものだと錯覚していました。なので、「固定概念にとらわれないで考えること」もこのアルバムを通して学びました。
いつになるかわかりませんが、今度は上田麗奈さんが思い浮かべる秋の世界観をのぞいてみたいです。
それでは、いつか、また。
どこかでお会いしましょう。
おいしいエクレア