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「方位」のこだわりは最優先しない

こんにちは。

住宅購入において方位のこだわりは捨てましょう。
方位に囚われて、本当のニーズを満たせず不満足で終わる人が多いと考えます。正しいお家の探し方をここでは知っていただく一助にして頂ければと思います。


なぜ南向きが日本で好まれるのか

日本の気候と建築様式と南向き

 日本の大半は温暖湿潤気候(ケッペン気候区分においてCfa)です。
湿度が高く、木造住宅が主流の日本においては「湿気」は天敵です。
 なので、南側に大きく開口をとり、南側からの温かい空気を取り入れる南向き住宅は、日本においては好まれている傾向にあるというのが実態です。

なぜ湿気は天敵なのか

湿気により、住環境としては「カビ」が増殖しやすく、ぜんそくや見栄えの問題もありますが、最も気にすべき点として、3大瑕疵(かし)と呼ばれる建物構造にダメージを与えるトラブルを起こす要因になります。
その3大瑕疵とは「雨漏り」「シロアリの害」「主要木部の腐食」です。

ちなみに、これら3大瑕疵の原因は全て「木部の腐食」によって引き起こされます。(台風などの害的被害を除く)。
 シロアリは朽木を食性としているため、腐った木部があると繁殖します。食われた建物構造上の主要木部を空洞化させ、耐震性、耐風性を極端に低下させます。
 雨漏りは外的要因から発生する場合が多いですが、小さなクラックや瓦の割れ、軒下の捲れなどから薄いが侵入し、木部を腐食させ、その不朽部分から耐水性が失われ雨漏りが発生します。

 すなわち、これまで日本においてこの「湿気」が忌み嫌われるのは、木造軸組工法が普及する日本ならではというところでしょう。

南向き信仰から波及した「鬼門」「裏鬼門」という言葉

 現在の60歳以降の方々はこの言葉を知っている人がほとんどでしょう。
反対に50歳以下の方々は知らない方も多いと思います。
 「鬼門」とは北東の方角を指し「裏鬼門」は南西の方角を指します。
 こんな言葉を聞いたことはないですか?
 「北東に水回りがある家は避けなさい」「南西にキッチンや納屋(パントリー)がある家は避けなさい」と。
 本来は陰陽道において不吉な方位とされていたものを、住宅に適用した「風水」のこじつけと解釈できます。
 これは鬼門・裏鬼門に基づく話であり、北東側は日当たりが悪く湿気が溜まりやしことから、トイレや浴室を配置することは嫌われました。
 南西側は日当たりが良いため食品などの保存に向いていないことからこのように言われました。
 
 不動産業者の立場から申し上げて、例えば南方位の住戸の場合、玄関は南側に配置され、動線から考慮すると浴室やトイレは北東に寄せられることが多いわけですし、南西側に納屋や倉庫がある家などほとんど存在しないというのが実態です(経験則上)。
 鬼門というのは日本の住宅においては一般的であるにも関わらず忌み嫌われる作りだというのは、ちょっと変だなと思ってしまいます。
 北方位の住戸の場合、北東側に玄関が配置され、これら「鬼門」「裏鬼門」は解消される住宅が多いという事実があるわけですが、どうゆうわけか「南向きがよい」という人が多いというこの矛盾がとても気味が悪いんです。


南向きでは現在においては絶対必要なものではない

布基礎からベタ基礎への変遷

 日本の住戸は従来、「布基礎」と呼ばれる、土に直接建物基礎部分だけを構築して建てたられる住宅が多かったのです。
 1981年の建築基準法改正に基づく「新耐震基準」が導入されて以降、徐々に「ベタ基礎」が普及し始めます。ベタ基礎は地面にRC(鉄筋コンクリート)を面で構築するため、耐震性に優れます。1995年1月の兵庫県南部・淡路地震の発生により、ベタ基礎の普及のトリガーとなり昨今の住宅では必須の基礎構造となっています。

建物性能の向上

 24時間換気システムの法制化や断熱性能の向上、二重サッシの普及もこれらの問題を解決しています。
 本来はシックハウス症候群の対策として建築基準法に導入された24時間換気システムですが、湿気にも非常に有効であり、湿度を低下させることはできるようになりました。
 エコカラット(珪藻土等)によって湿気を吸い取り適切に排出することができるようになったのも大きいですね。

生活スタイルの変化

 特に洗濯物の「室内干し」や「乾燥機の利用」が主流となっていることが挙げられます。
現在の生活習慣において、南向きの家を探すよりも、室内干しスペースや「乾太くん」を置けるスペースを確保することや浴室乾燥機を設置する等の方がどちらかというと重要です。

南向きをさがすのではなく、自分のニーズをしっかり知ることが大切


「南向きじゃないと洗濯物が多いので・・・」
「湿気が気になるので」
こういった理由で南向きを絶対条件に設定されている方が非常に多い印象ですが、そのようなご理由で南向きの家を探しても満足いくお家探しは実現することができません。

 私は、お客様の生活ニーズを一番考慮するべきであることを営業ではお伝えしています。

 

共働きのご夫婦の場合

 日中にいる時間帯の方が少ない方の場合、南向き住居を選択するよりももっと機能的なことを優先するべきです。なぜなら、お互い家事に使える時間が制限されているので、極力機能的なお家またそのようなリフォームが実現できるお家を探される方が良いですね。食器洗浄機や乾太くんの設置、エコカラットの設置、24時間換気システム、サーキュレータが使える等

小さなお子さんがいるご世帯やお庭で子どもと遊ばせたい方

 北側道路の一戸建をお勧めします。
南側道路の場合、前述したとおり玄関も南側です。オープン外構の場合お子様の飛び出しなどには十分注意を図る必要があります。
 また、南側に玄関があることで1階部分の居室、つまりLDKを広くとることが難しいです。(50坪くらいのお土地の場合、せいぜいLDKはせいぜい16畳~18畳しかとれません)
 反対に北側の場合、居室以外を北側に寄せることができ、すべての居室を南側に置くことができるためLDKを広く確保することができ、なおかつ庭は道路面と反対側に設けることができるのでプライベートを確保しつつ飛び出しも防ぐことができます。
 (なにより、第一種住居専用地域内の一戸建であれば、北側も南側も実はほとんど日当たりに差はありません。)
 こうやって聞くと「北側の方が良いのでは?」と思うかもしれませんが、もちろん北側にもデメリットはあり、土地の高低差が生じることが多いです。(北側の住戸は日当たりを確保するために高度地区や日影規制の設定により南側住居よりも高台に設定されていることが多いので、擁壁が構築されていたり、掘り込み車庫だったりすることがあります)

ご高齢夫婦の場合

 反対に南側が良いと言えます。その理由として土地の高低差がないことが多いのでバリアフリー性に優れ、スロープを構築したりすることが容易であったりします。玄関と道路が直結するので介護ヘルパーの出入りが容易であったり外部サポートを受けやすいと言えるでしょう。

転勤族の場合

転勤族の場合は、資産性を最重視するべきでしょう。
いつ売却することとなっても値下がりしにくい不動産を探すことが最優先となります。
資産性を最重視となると主要駅からの近さ(5分以内)が最重要となります。
主要駅というのは関西で言えば阪急、阪神、JRの3線および神戸市営地下鉄の「特急」「快速」「新快速」が止まる駅から徒歩5分以内です。
(三田市ウッディタウン中央や神戸市の西神中央という例外もありますが・・・)
そこで売りやすさの指標でもある「南向き」ということも合わさると心強いものになるでしょう。

結論

 このように、住宅を購入するにあたり「自分は南向きが好きだから」という理由で南向きを選ぶのではなく、論理的に自身のニーズを把握し適切な物件を選ぶことの方が圧倒的に優先されます。「一生に一度」との思いが強い人ほど、方位にこだわることは避けた方が良いでしょう。

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