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「大きな家」を観た感想。

生まれた環境は人それぞれ違えど、今を生きてることはみんな一緒。
みんな何かに悩み、葛藤し、苦しみ、もがきながらも、日常のなかで何か希望を見出そうと生きている。スクリーンに映る子どもたちも、僕も、あなたも。

そんなことを想い、何度も何度も心の琴線に触れ、魂が揺さぶられる素晴らしいドキュメンタリー映画を観てきたので感想をシェアします。



映画館でしか観ることができない。

この作品の監督は竹林亮さん。
竹林監督を知ったのはこちらもドキュメンタリー映画「14歳の栞」

まぁこの作品も秀逸で、僕の好きなドキュメンタリー映画作品の3本の中に入る。
14歳、中学2年生という超多感な時期に、リアルの生徒を、しかも顔出しで、36人出演させる。狂気の沙汰にも思えるが、そこには、映画作品としてカタチにするまで相当な苦労や困難や気遣いがあったのだと思う。その量は計り知れない。


そして今回の最新作「大きな家」は東京のとある児童養護施設が舞台。
スクリーンに映る子どもたちは親と離れ、血の繋がりのない他の子どもや職員と日々を過ごす。その何気ない日常をカメラが映し、子どもたちの葛藤や思いを優しく優しく紡いでいく。

「14歳の栞」と今作「大きな家」が共通していることがある。
それは、映画館でしか観ることができないという点だ。


ネットで映画を観ることが当たり前になった現在。
しかしネットには、心無い誹謗中傷やデマが溢れかえる。
勇気をもって出演をしてくれた子どもたちをそんな悲しい渦に巻き込ませないという監督の想い。
だから「14歳の栞」と「大きな家」はプライバシー保護の観点からもネット環境での配信は一切行わず、映画館だけで上映が行われている。そこに制作陣の被写体と向き合う覚悟が滲み出ている。絶対に劇場に足を運んで観ようと思った。


子どもたちと撮影隊のラポール作りがすごい。

児童養護施設を舞台にしたドキュメンタリー映画と聞くと、観るの苦しくなりそうとか、ちょっと身構え観なきゃとか思う人もいるかもしれない。
でも、この映画はそんなことは微塵もなく、被写体とカメラのほどよい距離感でストーリーが紡がれいく。

で、スクリーンを観ていると、なんでこんなシーン撮れるんだろう?とかどうやって被写体とこんな近い距離で撮影できるんだろう? とドキュメンタリーの創り手の端くれからすると、子どもたちとの関係性作りに思いを馳せてしまう。


僕は先行公開が始まった翌日の12月7日にTOHOシネマ梅田で初めて観ました。
そしてなんと!その1週間後には竹林監督が上映後挨拶をされるということから、制作の裏側を聞けると思い、この機会を逃すまいと再び観に行きました。

上映後、竹林監督はこの映画の裏側を語ってくれました。

撮影素材のトータル時間は延べ600時間!!ひゃ〜気が遠くなる(600時間の素材を厳選して2時間にするという途方も無い編集作業….)

企画は3年前から始まり、それからすぐに撮影は行わず施設の行事などに顔を出しては子どもたちと「遊ぶ」こと「会話」することを通じて徐々に心の距離を詰めていったそう。

そのうち、「みんなを主役にした映画を作りたいんだよね」と少しづつ子どもたちに映画制作のことを伝え、やっと撮影がスタート。
でも、最初の半年間は1ヶ月に2、3日程度の撮影機会だったそう。
その半年後からは月の半分撮影隊が入り、朝から晩まで撮影を行ったと。


撮影に至る過程でこれだけ、丁寧に丁寧に時間と労力を掛けたからこそ、子どもたちと制作陣に「ラポール(信頼関係)」が築けているのだと思う。だからあれだけカメラが近くに寄っても子どもたちは意識していないし、ただそこにカメラが「ある」というドキュメンタリーの理想的な映像になっている。
これはぜひ実際に映画館で観て感じてほしいポイントです!

撮影期間は当初1年間の予定。でもネパールでのボランティアや山登りの行事に同行したりと撮影機会が追加され結局1年半を撮影期間に掛けたみたい。

そして、撮影後は編集作業が始まり、5人体制の編集チームがそれぞれの素材を担当し、一つに紡いでいく作業を7ヶ月間

本作は完成までトータルで3年半の月日が掛かっているそうだ。
一本の作品を創り上げる監督と制作チームの情熱には本当に頭が下がります。

上映後の竹林監督の挨拶の様子

あなたにも観てほしいと思える映画。

スクリーンに映る彼ら彼女らの多くは、なぜ施設に来たのかも知らない。
物心ついた時にはすでに"大きな家"で暮らすことが当たり前。

7歳の女の子がふいに発した
「ここ家とは言えないもん。預かってる場所としか言わない。」
という言葉、

明日お母さんと久しぶりに会う約束をして楽しみにしていたのに、
当日ドタキャンを喰らってやるせない14歳の男の子の表情、

20年後の自分の姿を問われ、あと20年も生きたくない、この世は「生き地獄」と表現する18歳の女の子。

それぞれのシーンで胸を"きゅーーーーーーーー"っと締め付けられる。


それでも、
映画はひたすらに希望に向かって進んでいく。

生きてきた。つよく。この先も。

予告に出てくるワンフレーズ。その言葉の意味を噛み締めながらクライマックスへ。最後の終わり方も秀逸。自然と泣いちゃう!明日もまた頑張って生きてみようと思います。


生まれた環境も育ち方も、人それぞれ皆違うけど、
共通することは、「今」を生きてること。
そんな「今」を日々葛藤し、悩み、苦しみ、思い通りにならない現実にもがきながらも、明日に希望を見出そうと一生懸命に生きている。


本当に映画館でしか観ることができないので、時間があれば映画館に足を運んで観てほしいと思います。

きっと、あなたの人生においてプラスになると思います。

劇場情報は「大きな家」公式サイトから▼▼▼

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