【人民裁判】週刊文春「木原誠二妻殺人疑惑報道への違和感」 【雑誌は法廷ではない】
令和5年7月13日発売の『週刊文春』が「岸田側近(木原副長官)衝撃音声「俺がいないと妻がすぐ連行される」というおどろおどろしいタイトルの記事を掲載した。
事実関係は雀の涙ほど
簡単に説明すると、木原誠二副官房長官の妻が前夫の不審死に関与の疑いで任意で取り調べられたが、逮捕に至らず、というものである。推理小説のようなドラマ仕立てで、いかにも文春が隠された殺人事件を掘り起こしたかのように錯覚を起こす8Pにも及ぶ長編記事だ。だが、よく読むと殺人事件を立証できる事実関係に関する記述は余りにも少ない。事件の起きた町の情景やマンションの平米数など、ほぼ殺人事件とは関係ない情景描写や数字をちりばめて読者を混乱させ、時系列や重要人物の立ち位置を分かり難くしている。(非常に分かり辛いが、この事件は東京都内で発生していて、当初の管轄は大塚署。のちに警視庁のコールドケースを扱う特命捜査対策室が捜査を担当した。)
事件の重要人物は三名だけ。
殺された安田種雄さんと木原氏の妻X子さんと当時X子さんの愛人であったY氏。この3人の動きを追うと文春がいかに駄文を駆使して壮大なドラマに膨らませていったかが良くわかる。推理小説風に言うならトリックを使った、殺人事件の隠蔽工作をいかにも木原氏が行ったかのように読者を錯誤させるための政治的意図を持った工作記事なのである。
長くなると飽きられるので簡単にいうと、一番怪しいのがX子さんの当時愛人だったY氏だ。
Y氏は事件現場に立ち会っている。そして何故かそのまま逃走している。
まず、(P.24)に事件の被害者、種雄さんのお父さんが殺害現場を発見するシーンが出てくる。血の海の中に横たわる息子。血飛沫は天井まで達していたという。そして110通報したのがこのお父さんだ。しかしお父さんは第一発見者ではない。実はX子さんの愛人Y氏なのだ。
2006年に事件が起き、再捜査が始まったのが2018年。
最初は自殺で処理されそうになったが、遺族の意向を受けて未解決の不審死事件として扱われコールドケースになっていた。そして再捜査の時に、宮崎刑務所に服役中だったY氏がNシステムの捜査により、事件当時、Y氏の車が現場方向に向かっていた事がわかったと言う。(P.27)
ええ、12年前になぜそれが分からなかったのか?「なにこれ?」と記事の胡散臭さに気がつくところである。当時すぐにY氏を取り調べていたら、もっと多くの事がわかっていたはずだ。夫婦以外で唯一事件現場に立ち会った重要参考人ではないか。
Y氏は囚人として取り調べを受け、こう自白する。「あの時X子から殺しちゃった」と電話があった。家に行ったら種雄が血まみれに〜「夫婦喧嘩になって夫が刃物を持ち出して殺せるものなら殺してみろと言われた。刃物を握らさせたので切ってしまった」と告白された。この供述により、事件は解決に向けて大きく舵を切る(P.27)とある。
おい、ちょっと待て。それじゃY氏が第一発見者じゃないか。しかも現場は殺したての時のフレッシュさ。種雄さんは救急車を呼べば助かったんじゃないの?
で、君はなぜ110通報もせずにどこに行ったの?その場を立ち去ったの?愛人をそのままにして?こういうのは普通は現場から一名逃走したとも書けるけど。
筆者がこの文春記事は木原氏を政界から葬り去るための政治的意図を持った工作記事だと指摘するのは、記事中の時系列がこのX子さんやY氏の行動時系列ではなく、木原氏の経歴が基本になっているからで、当時の殺人事件に関係ない木原氏の経歴を混ぜ込む事でいかにも木原氏が事件に関与したかのように錯覚させるものであるからだ。
本当に必要なのは、種雄さん、X子、Y氏の出会いと別れ、事件当時の3人の行動時系列のはずである。
つまり、行動時系列を組み替えてみると、わかってくる事がある。文春はわざとY氏の登場を遅らせて事実関係をややこしくしているのだ。
事件当時の時系列
①Y氏の供述によると〜X子からY氏に「殺しちゃった」と電話→YがX子さんの家に行く(Nシステムで警察確認済み)血まみれの種雄さんを発見する。
②お父さんの供述によると〜種雄さんの家に車を返してもらうために夜中の3時頃行く。家で血まみれの種雄さんを発見する。110通報する。
これだけ書けば、この記事のおかしさに気がつく。
つまり、文春の記事によれば、愛人Y氏はX子さんから呼ばれお父さんよりも前に殺害現場に到着するも、種雄さんを救命するわけでも110通報するわけでもなく、忽然とその場から消え失せているのだ。勿論、警察はNシステムで帰宅時間も把握しているだろう。ところが、警察はこの人物をなぜか絶対に犯人扱いしないのだ。当時三角関係にあったと言うのに。
アンフェアなY氏の取調べ方法
一刻でも早く娑婆に出たい服役囚に警察が殺人事件の加害者を特定するために女性刑事を派遣して事情聴取する、と言うことがどれだけアンフェアなやり方なのか、ちょっと想像してみてください。いくらでも都合よく調書取れる。そしてX子さんが種雄さんを殺害したと言う証拠はこの人物の証言のみ。しかも、種雄さんの遺体からは致死量に近い覚醒剤反応があったと言う。事件当時、相当過激な幻覚症状が発生していたと想像に難くない。死因は自殺でもありうるし、X子さんの愛人だったY氏が、と言う事も実は不自然ではないのだ。一番不自然なのがX子さんで動機が薄い。
女性には無理?凄惨な殺害方法
P.24の殺害方法
「ナイフを頭上から喉元に向かって刺したとみられ、その傷は肺近くまで達してしていた。死因は失血死。さらに種雄さんの体内から致死量の覚醒剤が検出された」女性がナイフ持って自分より体格のいい、覚醒剤で興奮状態にある男性をいくら「刺せ」と言われたからと言ってこうも的確に致命傷を与えて殺せますかね。明確な殺意がないと無理なのでは…
コールドケースが再捜査へ動くきっかけはナイフ
この事件が遺族の意向を受けて未解決事件となっていたのが動き出すきっかけ〜は現場に残されたナイフである。
P.24に殺害現場にあったナイフの描写が出てくる。息子の遺体を発見したお父さんの告白の一部だ。「体は硬直し、血は固まりかけていた。右の太ももの2、30センチ右にはナイフが綺麗に置かれていました」「自らの太ももを刺したとすれば、なぜナイフが丁寧に置かれていたのか疑問点を考え出せばきりがなかった」
ナイフに血がついていた?
ナイフの描写はこの二点だ。警察は当初、覚醒剤乱用による自殺ではないかとの見立てでそれに対するお父さんの疑問が述べられている。
そしてこのナイフが再捜査の決め手になるのだが、その理由はこう書かれている。P.27「自殺というにはあまりにも不自然なナイフへの血のつき方でした」
うぉおおおぉい、ナイフに血がついていたんか。お父さんは「綺麗に置かれていた」「丁寧に置かれていた」けど血が不自然についていた、とは覚えていなかったのかな?ナイフに不自然な血のつき方ねぇ…これから再捜査が始まり、Y氏の供述からX子さんへの事情聴取へ行くわけだが…
証拠は「ナイフの不自然な血」とY氏の証言だけ
大塚署は事件当時、ナイフにX子さんかY氏の指紋がついていたか調べたのだろうか?決定的な、殺人を立証する絶対必要な科学的証拠とは、被疑者の元愛人(覚醒剤使用で服役中)の供述ではなく、凶器についた指紋や被疑者の衣服からの血液反応であろう。しかしそれがあったかなかったか、肝心な事は書かれていない。そもそも、事件当初は自殺の見立てなので警視庁捜査一課は捜査に入らなかったのだろうか?それもこの記事の大きな疑問点だ。
記事を読むと捜査担当の流れは大塚署→コールドケース→警視庁特命対策室(未解決事件担当班)だった。最初に他殺の可能性ありとして警視庁捜査一課が入っていたらもっと化学捜査が進んでいたので事件が解決していたのでは、と思う。それとも合同捜査だったんだろうか?いまいち捜査担当の流れがよくわからない。つまり大事なことは隠して書いてるのだ。
そうすると、当時他殺と断定せずに未解決事件として処理されたのは、科学的物証に乏しかったからだろう。ざっと記事を読んでも大塚署が捜査を尽くしたとは到底言えない。だから事件を解明できなかった。
事件当時木原氏は影も形もないのだから、権力を使って捜査に横やりを入れる事もない。それを「ナイフの血のつき方」がおかしいと12年後に再捜査、新たな証拠はYの証言だけだと言う。これでX子さんを身柄拘束して逮捕して何か分かるのか?何が出るんですか?拷問して自白させるんですか?新たな袴田事件じゃないですか。木原氏が奥さんを逮捕させたくないのもわかる。こんなの無理筋な事件じゃないですか。なおかつ、木原氏が妻を守るために捜査機関に横槍を入れたと言う証拠は記事中に何一つない。
なので、これは2018年当時に木原氏の奥さんを無理やり逮捕して木原氏の政治生命を絶とうとする陰謀の続きなんじゃないかなと感じた次第です。すでにSNSではX子さんは殺人者なる流言飛語が飛び交っている。木原氏は文春を訴えると言う事なのでそれこそ法廷の中で決着つけていただきたい。言論空間は自由でも時系列を組み替えて人を断罪させるような印象操作記事を出す事はそれなりに法廷で返り討ちにあうのも覚悟でやっていただきたい。雑誌は法廷ではない。人を裁くのはお門違いだ。
(了)