PERIDOTS「オールライト」 隠れた名曲#1
曲との出会い
高校3年の冬に、受験勉強をサボって寄ったCDショップで。
試聴コーナーでこの曲が収録されている「MY MIND WANDERS」と出会った。
普段は試聴なんてあまりしないけど、ジャケットに惹かれた。
なんだか、すごく繊細な音楽を聴かせてくれそうなジャケット。
窓に映った自分の像越しに、無機質な都会の街並みが見える。
騒がしい街並みの中でふと「生きるってなんなんだろう」って考えて立ちすくんでしまった・・・みたいなストーリーを感じて、当時受験が辛くて、「社会から逃げたい」なんて物思いに耽っていた私に深く刺さった。
試聴してみたものの、1曲目はそんなでもなかった。ボーカルの声質は好みだったものの、比較的明るい曲調で、もっと繊細なものを期待していただけに、「こういうのじゃねえなあ」というのが素直な感想だった。
そんな感じで、2曲目だけ聴いてヘッドホンをはずそうと思っていたものの、2曲目が衝撃的なあまり、結局このアルバムを即買いすることになった。
素朴なAメロから始まり、いきなり壮大なサビに。
PERIDOTSの楽曲全般の魅力である、綺麗な高音・逞しい低音の唯一無二の歌声が脳をくすぐる。
曲調や歌声だけでも120点満点だったものの・・・
1番の魅力は、初聴からスッと入ってくる歌詞だった。
歌詞が語りかけてくれること。変化の多い世界だからこそ、一貫性のない生き方でいい
この曲に出会ったのは2010年の終わり。
当時も「あー」と染みた歌詞ではあったものの、2011年の3.11東日本大震災や2020年からのコロナ騒動、2022年のウクライナ侵攻など激動の時を過ごした今になると、この歌詞はもはや私の人生の指針と言っても過言ではない存在になった。
信じていたものが容易く崩れ去る世界、昨日までの常識がまるで通用しない現代社会。なのに、不合理で辛い事実や風習だけはいつまでもしつこく居座ってしまう。
そんな世界で、常識やモラルやルールに従順で、お行儀よく振る舞っていることって、実はとても危険で勿体無いことなのではないか。
岡田 斗司夫も言っていた。世界は乱世に入ったらしい。
今が平和な世の中だと盲信して、お行儀良く生きるっていうのは、実はそんなに賢くないのではないか。企業やコミュニティー等、大きなものに所属して安心するのは、実はすごく危険なことなのではないか。
ブレない自分を守るのはとても大切。でも、激動の時代の中で、真っ直ぐな一貫性を保つことはとても難しい。
よく、「主張がコロコロ変わる人は信頼できない」と言われるけれど、果たしてそうだろうか?
環境や状況がコロコロ変化する中で、全然ブレないものっていうのは、最早「神聖」なものなのではないか?
そのときそのときの状況に合わせて、ブレることのできる人間こそ、賢者なのではないか?
奥の奥にある真っ直ぐな芯だけ守れていれば、多少のブレなんて誤差でしかない。
この歌詞は、私をそんな結論に導いてくれた。
出会って10年以上、私の生き方をなんとなく作り上げてくれたのが、この「オールライト」という曲だった。
人間というのは、誰しも安定を求めて、安定的な状況につい安心してしまう。しかし、昨今の一寸先は闇な状況を見ている限り、安心している状態が一番足を掬われると危うい。
大手企業に入社して安心している人、堅実な結婚相手を得て安心している人、現状維持でホッとため息を付く人・・・。
この曲は、そういった「待ち焦がれていた場所」に辿り着けた人間に「眠るな」と戒めてくれる。
残酷なものほど残って、熱心に見ていた本がゴミになってしまう・・・そんなこの世界にいる限り。
コロナ禍あたりから、PERIDOTSのライブ映像が公式からしょっちゅうYoutubeに投稿されて嬉しい。また、生で観たい。