WebエンジニアがTOEIC受験をするとどうなるか
はじめにお断り
私がTOEICを受けたのは2022年の4月です。
その後一旦この記事の8割を書き上げたのですが、自分のスコアでこんな勉強法を晒してもな… という気持ちになり放置していました。ですが、今月中にもう一つ記事をアップすると執筆連続月記憶が伸びるっぽい!という通知が来たので今更完成させて晒します。
勉強法、こと英語については百家争鳴のきらいもあるでしょうので、色々ご意見はあると思いますが、あくまで私の場合ということでご承知を。その上で何かの役に立てば幸いと言ったところです。
ということでまずは結果です。
何をしたかなど振り返っていく。
背景や前書き
そもそも、最終目標地点としてはTOEFLまたはIELTS等何かしらの試験で、CEFR C-1に準ずるレベルの英語力がありますよと、証明できる程度のスコアを叩き出すこと。
他、文科省の資料など(10ページ目)。
一方、受験前の私の英語力はB-1相当だと見積もっていた。
TOEFLやIELTSはCEFR B-1レベルの英語運用能力の人間にとっては難易度が高く、CEFR B-1の中でもどの段階にいるかという指標が判断しづらい。なので、まずは実力の程度を見積もるためTOEIC L&Rを受験する。4技能の半分しか計測できないという指摘はその通りなので、はてブでわざわざ指摘しないで大丈夫です。まずは、と。
で、せっかく受けるのである程度「傾向と対策」とかいうやつをやらないといけなくて、英語のほかにTOEICの世界のドメイン知識を得ないといけない。一定のドメイン知識がないとそもそも適切な状態で計測できないため。
正直受験のためのドメイン知識というやつを今更身に付けるのは抵抗を感じる人も多いのではないかと思う。私もそうだった。とはいえ対策を経て受験してみてメリットもかなり大きいなと感じたので、その辺の話も踏まえてやったことを残す。
対策した内容
初手は全般的な把握
受験自体実は初めてという体たらく。ひとまず一冊買う。多分これは一番売れてるので買ったという以外はない。
その上で、やっぱりそんなにR/Lとも調子は良くなかったので基本は語彙かな! と思いこれを買う。これも超定番ですよね多分…。
金の単語は確かに実績があるだけあって、とにかくこの単語帳に出ている範囲の単語を把握して、聞き取れることができていればベースの力になるという感じがした。実際覚えてからは、少なくともReadingで知らない単語につっかえる回数が格段に減った。3〜4問に一回ぐらい、運が良ければ一回の模試分の分量読んでもわからない単語に出会わなくなった。
単語、確かにソフトエンジニアをそれなりにやっていると良く知っている単語とかも混ざっているので、そういう時は助かる。でも例えば、premisesは普通「敷地内」だし、preferenceは普通は「好み」みたいな学び直しはある。
そのほか購入した対策書籍の概要
書籍は基本的にはアルクと朝日新聞出版が大手という感じ。
全般的な対策の書籍はアルクのほうが丁寧かな? と思うが、一方朝日新聞出版の対策書は、新書サイズで値段が安い、トピックが絞られている、という特徴がある。したがって、自分の得意不得意を分析して、サプリメントを買う感じで対応する対策書を買うという運用が基本? みたいだ。
サイズ感や表紙の配色がこう、微妙にコレクター心を動かされるが、必要が薄い分野をやりすぎてもしょうがないので気を付ける。
僕はリスニング(パート2〜パート4)を多めに買い、あとは長文を何冊か、文法を一冊だけ買った。単語集は金の単語だけにした。
あとは公式問題集を直前にいくつかやったという感じ。
ところで、リスニング教材は、今日日のTOEIC対策書の場合全部abceedに集約されているので楽だった。
なおabceedは無料の範囲でも、一回だけミニ模試みたいなのが受けられるのと、実は無料サンプル問題もいくつかの書籍については用意されているので、対策の初手とか直前の練習などに利用するのもいいかもしれない。
リスニング困る、やる
そもそも日本語ですら一回では人の話を聞き逃すことが多いのに、TOEICでは一回しか英語音声が流れない、辛い。受験中もずっと辛いなと思っていた。
でもまあ一般に一回で把握できたほうが便利だしやるしかない。
とりあえず基礎力を上げる対策はシャドウイングを中心にした。具体的には、BCC Learning Englishのアプリを入れて何回分かの放送をシャドウイングした。
BCC Learning Englishは割と良くて、約6分で一つのトピックに関する表現を押さえる「6 Minutes English」と、約2分で慣用句の解説をする「The English We Speak」のシリーズが長さと難易度が手頃で良く聞いていた。ただ、このアプリはもちろんイギリスアクセントの英語中心なので、アメリカアクセントの対策を別途行ったほうがもしかしたらいいかも。
で、これがそこそこできるようになってから、上述した朝日新聞出版のパート2・3・4の対策書を買って問題をひたすらやる、ちゃんと複数回繰り返しやる、という感じ。
そういえば一冊、ちょっとコンセプトが面白かったのでつい買ったのがこれで:
この本自体は結構よかった。倍速が、というより、関西人3人の掛け合いが面白かったのがよかった…。倍速リスニング意味あったんかいな。
リーディングの速度対策
これはゆうてそこまでやれなかったのだけど、後半の方ではリーディングの対策のために解く問題が無くなった(し正解率もサチってきた)ので普通に英文を読む対策をしてきた。
意識したのはWPM(Word Per Minutes、1分で何単語読めたか)で、どうやらTOEICでR満点を取るような場合、目標とするWPMは150程度らしい。そして長丁場(75分)なので安定させる必要がある。
なので、Web上の記事であれば全体のワード数をまずざっくり把握して、そうすると例えば3000単語程度の記事なら、 3000 / 150 = 20分程度で読み切る、というふうに計測して読む癖をつけるようにした。
英書であれば、物理のやつでも一応一行あたりの代替のワード数と、一ページあたりの行数をなんとなく計測して、掛け算し、10ページをX分で読み切ります! みたいな読み方をしてみる。
何せこの読み方を考えついて、そんなに回数は試していないので効果はわからないのが正直なところ。でもRは妙に調子良かったし(当日実は完答後5分以上は余ったので)、このリーディング自体はTOEIC関係なく続けたい感はある。
TOEIC 直接対策ではないけど良かったと思ったこと
以下はTOEICの範囲でない発音なども含む内容だが、ベースの知識として持っていて良かった感のある内容を置いておく。
発音に関する知識
そもそも発音ってなんだっけ?と思ったので「英語音声学・音韻論入門」を読んだ。
なお福岡市図書館には旧版があるので、それを借りて読んだ。
この本は割と良くて、英語にはどういう音があるか、というのと、それらをどのように発音するか(口・喉といった臓器の中のどこで発音するか?)が解説されている。とはいえ座学なので実際どのように発音するかはあくまで頭の中になってしまう(そういうのを補完する教科書もあるとは思うが)が、解像度が上がるのは便利。 /l/ の異音とか言語学に近い知識も補完できた。
一緒に定番?ではあるがELSA Speakを利用して定期的に自分の発音をチェックした。「ELSA Speakに通るように発音する」ようにはなってしまうが、それでも大幅に実際の発音と外れないと思われるし、英語に存在する発音の種類を把握するには非常に良いアプリだと思う。
この2つで、「英語に存在しうる発音」というものが頭に入るので、(無論自分が実際に発音する時がメインではあるが)リスニングにおいてはそれなりに意味があるはず。音を分析できるようになるため。
英語史に関する知識
Twitterでもたまに話題になる方だが、堀田隆一先生という英語史専門の先生がおられる。著作もたくさんあるので読んだ。僕が読んだのはこれ。
英語の綴り字にはまともな法則がないこと、黙字もある程度ルールがあるとはいえ雰囲気で運用されていること、単語活用に罠が多いこと、やたら同義語が多いことなどは知られているが、そういった背景は英語史を紐解くと立体的に把握できる(納得できるとは言わないが……….)。
例えば特定の意味の単語について、固有語/フランス語由来/ラテン・ギリシャ語由来 の使い分けの傾向などは、TOEICのように若干固い単語が出てきやすいい試験では有益かもしれない。日本語にも固有語/漢語/外来語 があるわけで意外とそういう現象は普遍的なんだなと思った。
上記のような言語学・英語学の範疇も楽しんで学ぶと知識の定着に効果があるのでは、と思ったので載せておく。
対策・受験してみての変化
英文をちゃんと読むようになった
それまでも職業柄、英文は読まざるを得ないことが多いので向き合うのだが、TOEICで英単語力を増強する前は割と流し読みでスルーしがちだった。今は上から目は通すようにしている。
わからない単語をちゃんと調べるようになった
さらに学生レベルの感想で恐縮だが… 実際めんどくさかったんだけど、今は「語彙力チャンス!!1」と思って調べるようになった。
書く方にも意外と効いてる感ある
この年の9月ごろにRubyに関する国際会議があったのだが、そのプロポーザルも、大枠はシュッと書くことができた記憶がある。流石に複雑な技術事項はDeepL/Google翻訳さまさまではあった。
「計測」はとても重要だと思った
一番言いたいのはこれかもしれない。エンジニアを名乗る以上「計測」は重要というか基本技能なので、なんとなくざっくり定性的になっている部分は、なんとか定量化しないといけないんだと思う。
実際、受ける前までは「英語実際使ってみるとダメダメなんだよな…」と漠然と思っていた。
ところが、TOEICの結果が出たことで、ReadingはC-1に近いレベルなので頑張ってる、ListeningはB-2止まりなのでもう少し力を入れて良さそう、という根拠のある自己認識が得られた。おかげで変に卑屈になることもないな、という気持ちになれた(まあこれは受験前から対策によりブーストされた効果もある)。そしてあとは未計測のS/Wを計測し、改善のPDCAというやつを回す、という感じでマイルストーンが組める。
この辺はAutifyというテスト自動化SaaSの代表をされている近澤さんもおっしゃっていたのに影響されていて、そうだよなと思ったのが今回TOEICから受け始めたモチベの一つ。
そうなんだよな、エンジニアリングの初手は計測なんだよな、と反省した話(なお僕は計測、定量化、がそもそも苦手です…)。
今後
やっぱり一度は超えてみたい900点、という気持ちがあり、もう一度受けるかもしれないのが一つ。
しかしそれよりはSpeaking&Writingの試験を受けたほうがいいに決まってるので、ゆるゆるとTOEFL or IELTSの対策書を買ってやってみたりするかなあという気持ち。
そして次に受験するのは、ひとまずある程度値段が安い+オンラインで完結するDuolingo English Testあたりかなあ、などと考えている。
… という結論を書いてから半年以上経っているが、仕事の忙しさにかまけてあまり何もしていない… Duolingo だけだな…。とはいえ、前回受けてから1年、ひとまずもう一度受けるのはアリなのかもしれないですね。
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