小説を三人称視点で書くときのコツについて
はじめに
かれこれ十年ほど、ネット上の小説投稿サイトにポツポツと自作の小説を投稿しています。
最近になって、小説を書かれる方が多く参加しているSNSコミュニティに参加してみました。
こちらの経緯については先日、はてなブログの方に記事を書きました。
あるSNSコミュニティでの質問
さて、そのSNSコミュニティの1つで次のような質問がありました。
「三人称視点の物語を書く上でのコツとかってありますかね?」
一見して漠然とした問いのようにも感じたのですが、少し考えて次のように返答してみました。
「自分ではあまりやった覚えがないですが、『語り手』という立場を意識して書くとかアリかもです」
これは本当にそのままの意味です。
童話や昔話、おとぎ話がわかりやすいでしょうか。その手の物語では、「語り部」が語っているような形式のものは多いと思います。
自身の経験を振り返って
私は比較的、三人称視点で小説を書くことが多いような気がします。
それは最も自由度が高く、融通が効くからかもしれません。
三人称であれば、登場人物の心理状態含めて全てを把握できる立場で書くことも許されるのですよね。
一人称の場合、自己の内面しか描写できないため、もし複数人の心情を描こうとしたら、場面を切り替える必要があります。
先の質問に対して、上の返答をした後もぼんやりと考えていたのは、自分が三人称の小説を書く上での決め事についてでした。
……といっても、気をつけていることはせいぜいが次の一点ぐらいでした。
同一作品内では首尾一貫した記法、語彙、時制となるようにする
言い換えれば、「表記揺れ」が発生しないようにする、ということですね。
時制については、読者が混乱しないように、その文章を書いている時は作品世界の時間軸においてはいつなのか、というのを定めて、それがブレないようにする、という意味です。
気づき
そんなことを考えていたら、唐突に閃くものがありました。
それは、地の文の語り手も小説の登場人物の1人のようなものだということです。
たとえ、その語り手が自身の存在を全く明言することがなかったとしても。
「小説」も「物語」も語源としては、誰かがどこかで聞いた話を誰かに語る、というような意味合いを持っていると認識しています。
語り手自身が毎回話の中に登場するとは限りませんが、三人称でお話を書く場合には、「その出来事を見聞きした誰か」の存在を仮定するとしっくり来ます。
ただし、それが普通の人間だとすると、登場人物の心理状態まで手に取るように把握できるのは不自然です。
……でも読者としては、登場人物の内面まで、誰かの想像ではない「事実」としてきちんと把握できた方が嬉しいですよね。
全知視点(神視点)
そこまで考えて、「全知視点」あるいは「神視点」という言葉を思い出しました。
これはその名の通り小説で起こるあらゆる出来事を把握できる立場です。それには、登場人物の内面まで含まれます。
「語り部」に相応しいキャラクターがいるわけでなければ、基本的にはこの立場で書くと良いでしょう、と私は考えています。
臨場感のある場面を書くために
私の属するSNSコミュニティでは、ライトノベルを書かれる方が多いと思います。
そこで、次のような例えを思いつきました。
「作品がアニメ化された前提で、カメラになったつもりで書く」
基本的な立場は全知視点だとしても、こういうつもりで書けばより躍動感のあるシーンが描けるのではないでしょうか、と思いました。
見せ場で頑張る
これは自分が心がけていることです。
三人称全知視点で小説を書く際、基本のスタンスとしては「起こった事実を淡々とありのままに」紡ぐのですが、あまりに一本調子になってしまうと問題かもしれません。
小説のストーリー展開においては、映画のように話が盛り上がる場面があります。
そういった場面はほんの少し情感を込めるなどして、文章でその場面を盛り上げることができれば、と思って書いています。
SNSコミュニティでのやりとりの続き
私は、上で記した「気づき」の内容をかいつまんで質問者にお伝えしました(当時は乱文にて失礼いたしました)。
すると、別の小説書きの方から次のようなコメントがありました。
「ストーリーテラーは『カメラ』であり『個人』というのは大切。そこに『テーマ』があれば、なおブレない」
「テーマ」という語は、最近私がある短編小説をレビューして頂いた際に課題として挙がった語でもありました。
三人称視点で紡ぐ文章に「テーマ」を織り込む、という発想は私にはなかったので、これは良いヒントを頂いたのではないか、と思っています。
むすびに
小説を三人称視点で書く際のコツについて、とあるSNSコミュニティでの質問を契機として考えたことを中心に記しました。
小説を書かれる方にとっては、何かのご参考になれば幸いです。
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