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ラーメン二郎
大学生の頃、先輩方がラーメン二郎へこぞって通っていた。新入部員へのラーメンハラスメントの場としても使われていた。このサークルにいるうちにラーメン二郎、ロクゴーガッツ、天下一品へ必ず行くのだと私も思っていた。しかしそのときは訪れず大学を卒業し6年がたった。
今日初めてラーメン二郎を食べに行った。吹雪いていたので5人以上外に並んでいたらやめようと彼氏に言ったが、待ち客は若そうな男性4組程度で外に並ぶ必要はなかった。カウンター席がズラッと10席くらいあって、そのすぐ真後ろに長いベンチがありそこにみんなおとなしく座って呼ばれるのを待っていた。
食券は何も書いてないプラスチックの板だった。店員さんはコレの色でメニューを判別しているらしい。
皆の食べている姿を真後ろから眺める。具が大盛りすぎてどんぶりが大きいのか小さいのかわからなくなった。店内は撮影禁止で撮っていいのはラーメンのみ、食べながらのスマホ操作や食後の操作は禁止。なんとストイックな食べ物屋さんだと思った。スマホを見ながらご飯を食べることが当たり前になっている昨今でこんなにも多くの若者が一心不乱にラーメンを啜っている姿は異様な光景だった。みんな二郎の前ではストイックになるのだと思った。食べ終えると皆ちゃんとどんぶりを片付けて布巾でテーブルふきまで行って出ていく。横柄なものはおらず皆それが当たり前というようにやってのけた。
自分の番が来た。彼氏に倣ってにんにく少なめと言えたが野菜少なめというのを忘れ慌てて挙手して野菜も少なめで!!とお願いした。彼氏はラーメンを待っている間さえスマホをいじらなかった、ここにくると謎の緊張感が襲ってきた。頼むのにも、食べるのにも一苦労というかプレッシャーがまとわりついてくるような気がする。大きいラーメンを食べているみんなも本当は同じ気持ちなんじゃないかと思った。
汁なしのほうが脂っこさが少ないとのことでミニラーメン汁なしを注文した。先に生卵だけが着てあとからラーメンがきた。濃い醤油のタレに黄色い中太麺がからんでいてさらに上からキャベツがドンと乗っかっていた。豚は得意じゃなかったのでこれが好きな彼氏にあげた。(口の中ではばけて食べにくかった。味はかなり胡椒がきいており、しょっぱかった。けど麺がもちもちで小麦の味がしてもっと麺が食べたくなった。)私も周りにならって一生懸命ラーメンをたべた。焦ったのかあまりじんわり味わうことはできなかった。とにかく周りから浮かないように一生懸命速く野菜と麺を口にほおばった。あっという間に完食していそいそと片付けをしてごちそうさました。
店を出たとき、映画館のスタッフロールまでを見終わったときみたいなソワソワした感じがして無駄に彼氏に話しかけていた。
ラーメン食べに行ったというよりアトラクションを体験したあとみたいな気持ちだった。だから日記も書いている。
よく、おひとりさま焼肉やおひとりさまラーメンできる女性について取り上げられるが、今時のきれいなラーメン屋さんやインスパイアされた家系ラーメンに行ける程度で「おひとりさまラーメンに行けるアテクシ」を演じてはいけないと思った。ラーメン二郎で緊張感を感じずスマートに美味しくラーメンを食べられる女こそおひとりさまラーメンできるアテクシをやっていいと思った。小心者の私にはまだまだできそうにない。