スラップベースの作り方/打ち込み方
久しぶりにHow to動画を作りまして、その名もずばり『スラップベースの作り方/打ち込み方』というものです。
というのも、我々ベースを持てば息を吸って吐くようにスラップをするのでフレーズを作るメカニズムみたいなものはもう意識の外に行ってしまっているんですよね。
自作ベース音源のFuruBassシリーズではスラップのライブラリが人気でして、そんな話を知り合いのギタリストアレンジャーと話していたら『このスラップ音源の良さはめちゃくちゃ分かるけど、リアルでスラップが出来ない側としては実際フレーズを作るのはわからないところもある』と言う話になりまして、
せっかくFuruBassシリーズを導入してもらったのにフレーズが上手く作れていない方にもっと楽しんでもらうためと、他のベース音源を使っている方でも何かのヒントになればとスラップベースのフレージングのコツと打ち込み方を動画にしてみました。
多少駆け足な説明になっていますが、スラップベースのフレージングの考え方の基本は抑えていると思います。
動画の中で触れる内容ですが、フレーズの作り方の要点だけを書いていこうと思います。
スラップ奏法とは
ラリー・グラハムが生み出した奏法で、指弾き、ピック弾きの次にポピュラーな奏法でその派手な演奏はベースにとってもはや必殺技みたいになっています。
とは言え、ラリー・グラハムのフォームは独特過ぎるのでお手本のようなスタイルのマーカス・ミラーの動画をぺたり。
サムビング
親指で弦を叩いて鳴らす奏法でスラップではもっとも多用。音のイメージは『ドン』とか『ドゥーン』。低音域から高音域まで使うけど、基本低音弦を鳴らしている事が多い
プル
人差し指、もしくは中指で弦を引っ張り上げて落として鳴らす奏法。スラップではアクセント的に鳴らす事が多い。音のイメージは『パチン』とか『パッ!』。楽器と手の構造上、高音域を鳴らすことが多い
このサムピングとプルという奏法を組み合わせて演奏されるのがスラップ奏法です。
スラップの基本
ここまでは知っている方も多いと思いますが、実際にそれをどう組み合わせているか?というのに触れると、それなりにルールみたいなものがあるのでそれを説明します。
この基本を知っているだけでスラップのフレーズを作る時に自然な、スラップらしいものになるはずです。
サムピングとプルの割合は大体7:3
スラップベースといえ、基本はベースのパートを担当するので低音感は大事。
基本サムピングの方がベースらしい低音を出せて、プルはアクセント的なものになるので『派手だから』という理由でプルばかりのフレーズになると、低音感がなくなって曲全体が軽くなってしまいます。
とは言え、プルを全然しないなら別にスラップじゃなくていいじゃんってこともあるので、ちょいちょいプルが入るくらいの感覚を基準にするといい結果になりそうです。
サムピングは2連打まで、プルは単発(連発できない)
16分音符的な速いフレーズに関していうと、サムピングは2連打までは勢いで簡単に鳴らせます。プルは連打がしにくいので単発が基本。
なので連続で16分音符を鳴らしていくにはこのルールの上でサムピングとプルの組み合わせになります。
例えば
こんな感じになるので、フレーズを作るときにこの法則だけ意識できると無理のないスラップフレーズになると思います。
ちなみに人によってはサムピングの3連打以上や人差し指と中指を使って連続プルが出来る人もいますが、若干特殊奏法な気もするので人間らしいスラップを作りたい方は避けておく方が無難です。
スラップベースのフレージング
実際にフレーズを作るにあたって、あくまで意識した方がいいのはスラップベースは、派手な"ベースライン"ということです。ベースソロでもない限り、あくまでベースとした役割から逸脱しない方が良いです。
コードのルート
当たり前ちゃあそうなんですけど、まずはコードのルートを鳴らすわけですが、実はスラップは奏法上、音程の横の動きは他の奏法に比べて苦手だったりします。速い音符は特に。
なのでルートメインに鳴らすにもスタッカートを入れたり、符割を考えることが大事になってきます。
経過音とスライドなど
『サムピングはルートねOK!OK!じゃあ早速プルするぜ!』と行きたいところですが、コード進行をちゃんと紡ぐのも大事なのでルートメインでフレーズを作りながら、経過音やスライドなどを使ってベーシックなものを作ります。
実際はスラップだろうが指弾きだろうがこの辺りは同じ考えですね。スラップはプルをパキパキ入れたくなりますが、まずはこの骨組みがしっかり出来た上でプルを入れていく感じの方が安全かもしれません。
アクセント的にプルを入れる
骨組みが出来たところでプルを入れます。上記のフレーズに入れてみるとこんな感じになります。
プル自体は少ないですが、これで十分スラップベースっぽく聞こえます。もっとプルが入れたく感じたらサムピングの隙間に入れてもいいし、元のフレーズをちょっと崩してもOK。最初の骨組みの考えがあれば多少崩しても崩壊はしません。
ドラムのキックとスネアを模して
ここまでの感覚がついたら、最初からプルが組み込まれたフレーズに挑戦して行きましょう。
そもそもスラップはラリー・グラハムがドラムの代わりをベースでやろうとしたのが発端なのでキックをサムピング、スネアをプルとしてイメージして置き換えるとスラップらしいものが作れたりします。
ドラムを模したフレージングはスラップベースでは定番です。あくまでサムピングは2連打まで、プルは連打しないというルールは守りつつ。
この辺りは上の動画で聞いてもらった方がニュアンスわかりやすいと思います。
ゴースト・ノート
スラップにおいてもゴースト・ノートはノリを出す上で重要なものになります。極論言うとスラップでゴースト・ノートを禁止されたら飛べない鳥です。それくらいよく入れます。
入れ方としてはベーシックな符割のフレーズがあったらその音の隙間に入れます。そうするとスピード感やノリが加わってよりスラップらしく聞こえてきます。
上の例のようにゴースト・ノートはサムピングでもプルでも使います。サムピングは2連打まで、プルは連打しないルールを守りつつ。
ルート以外の音とハンマリングやプリング
ここまでは実際オクターブ上の音も含めたルートと経過音しか使っていませんが、コード進行が普通にある場合はこれくらいの音使いが多いです。先にも触れましたが音程の横の移動、例えばメロディアスなものとかは他の奏法に比べて苦手なので無理に音程を動かすようなフレーズは逆にスラップらしさがなくなるかもしれません。
となるとコード・トーンにたまに行くくらいになるのですが、その中でもルートに近い7thの音が使われることが多いと思います。7th鳴らしてハンマリングでルートに行って音を稼ぐのは定番です。
何度も言いますがサムピングは2連打まで、プルは連打しないのでそれ以上に音数を稼げるハンマリングやプリングはスラップにとっては相性の良い奏法なので多用されます。
ぶっちゃけスラップは他の奏法に比べて、ぶっ叩く&引っ張ると言う大雑把なものなのでスタッカートやスライド、ハンマリングやプリングなど左手で表情をつけるものが多くなっていきます。
最終的なフレーズはこのようになりました。(動画でのまとめフレーズ)
実際コード進行によってフレージングは変わってきますが、いわゆる普通のコード進行の場合は基本このようにフレーズを組んでいけば良いのかなと思います。
逆にコード進行が少ない、一発ものみたいなやつは他の奏法でも同じ事が言えますが退屈しないようにもっと色々音を動かしていく必要も出てきたりしますが、それは中上級編かなと思い、あとのお楽しみにしました。
動画内ではテンポによるフレージングの変化にも軽く触れています。
まとめ
初中級編のまとめとしては
以上がスラップでのフレーズの作り方です。あくまでこれが正解というわけではなく、この辺を意識するとフレージングのヒントとなるという感じです。本職がいうので間違いはないです。
動画内ではさらにスラップの音作り/音の調整にも触れていて、スラップでのEQやコンプのコツやアンプシミュレーターの選び方やベース音源のチョイスにも触れているのでもしよかったらみ全編見ていただけたらと思います。
お知らせ
自作ベース音源作りました。
現在のラインナップは以下です。
・ジャズベース版(指弾き、ピック弾き&スラップ!)
・プレシジョンベース版(ミュート機能、サスティーンコントロール付き)
・アクティブベース版(指弾き、スラップ、5弦音域対応)
・フレットレスベース版(Legatoモード、ポルタメント、ビブラート機能)
多くの人に導入していただいて嬉しい限りです。誰かの制作の力になれたら幸いです。
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