[フレットレスベース]第五弾ベース音源リリースしました『FuruBass-Fretless』
自作ベース音源の『FuruBass』シリーズの第5弾がこの度リリースに至りましたので今回も詳細などを書いていこうと思います。
ジャズベ版『FuruBass-JB1965』、プレベ版『FuruBass-PB1966』、アクティブベース版『FuruBass-MM1984』とこの一年でリリースし、KONTAKTでの音源の作り方やプログラム(スクリプト)の組み方などを少しずつ理解してきて、そろそろ実現できそうなスキルを自分で持ったと思い、自分的難関のフレットレスベースの音源に着手し、制作期間もこれまでのベース音源の2〜3倍かかった力作となりなんとかリリースできました。
FuruBassシリーズのコンセプトとして
『難解な設定やつまみ、 キースイッチなど極力使わず、立ち上げたらすぐ使え、 ベタ打ちでもそれっぽくなるという制作のインスピレーションを 逃さない事を第一に考えた仕様』
という、簡単に言うと"楽していい音"を大事にしているので
メロディのような表情のあるものを打ち込むのは工夫が必要でしたが、今回のフレットレスベース音源『FuruBass-Fretless』に関しては、従来の使用感に合わせて今まで出来なかった表情のあるベースを簡単に作り込める仕様になっています。
FuruBassシリーズをご愛好いただいている方にきっと満足いく製品ができたと思っています。もちろんフレットレスベース音源をピンポイントで探している方にもお勧めできる製品です。
『FuruBass-Fretless』販売ページ(Booth)↓
https://furusamples.booth.pm/items/6153410
FuruBassシリーズ販売ページ(Booth)↓
*ご購入にはpixiv IDが必要です。
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サウンドサンプル
毎日ベースリフ版
フレットレスベースとは
ご存知ない方に説明すると、フレットレスベースはその名の通りフレットが無いベースです。逆にフレットのあるベースはフレッテッドと言ったりします。
フレットは丁度半音ずつになるように打たれていて、フレットとフレットの間を押さえれば正しい音程がなってくれるのですが、フレットが無いフレットレスはその境界がなくなるのでピンポイントで正しい音程の部分を押さえないといけません。
イメージとしてはバイオリンとかウッドベースの指板と同じ感じですね。
変な所を押さえると音痴になってしまう危うさはありますが、半音区切りでない音程を出せるのが強みであってフレッテッドよりも多彩な表現が可能です。
また、弦の振動の始点が金属のフレットではなく、指になるのでフレッテッドに比べ音色が柔らかいものになり、サスティーンが短いのも特徴です。
私が所有しているフレットレスベースは指板がエポキシコーティングされたものなので音の立ち上がりも早く、サスティーンもそれなりにあるので、ベースラインからメロディまで対応できる音色です。
FuruBass-Fretlessの収録奏法
FuruBass-Fretlessは指弾き専用音源となっています。ピックで弾いたり時にはスラップも独特な音色で楽しいのですが、レアケースなので最も需要のある指弾きライブラリのみの収録です。
また基本的な割り当ててある鍵盤のキー配列は先に販売しているFuruBass-JB1965、FuruBass-PB1966、FuruBass-MM1984と、他のラインナップと同じになっているので音源を差し替えれば同じmidiで音色の違いを確認でき、より楽曲に合うサウンドをチョイスできます。
FuruBass-Fretlessだけの機能
・ビブラート
フレットレスベースはフレットが無い分、バイオリンなどと同様でビブラートがやりやすいのも特徴です。その恩恵もありメロディーを弾く事にも相性が良いこともあり、ビブラートはフレットレスでは必須なテクニックです。
なのでLFOなどで揺らすのではなく、ビブラートの音を別途収録してモジュレーションホイール(midi cc1)を上げることにより再生されるサンプルが切り替わるようにしました。
また、実際のフレットレスでのビブラートは発音してからほんの少し遅らせてビブラートをかけるので本製品のビブラートも同様の奏法を収録しています。それによってモジュレーションホイールを上げっぱなしにしていても音が伸びるところがだけ揺れるようになり、メロディーを弾くような時はモジュレーションホイールを上げっぱなしにしても直感的に打ち込みができる場合もあります。
開発中に色々なフレーズをテストしていて気付いたのですが、フレットが無いフレットレスの構造上、ピッチベンドとの相性が良いので収録されたビブラートがイメージに合わなかった時などは、ピッチベンドを状況に合わせて細かく揺らしてビブラートをかけるもの有効です。(サウンドデモ動画にて実演)
・Legatoモード
フレットレスと言えば半音階で区切られない滑らかな音の繋がりが出せるのも特徴です。
このポルタメント(ある音から別の音に移る際に、滑らかに音程を変えながら移る技法)を再現するためにそれ用のサンプルも別途収録しました。
とは言え、ベースラインを弾いたりメロディーっぽい事をやったりするフレットレスベースは必要な時だけポルタメントになる必要があり、色々試行錯誤した結果、サスティーンペダル(midi cc64)を踏んでいる間「Legato」モードとしてポルタメントがかかるようにしました。
「Legato」モードではモノフォニックになり、前の音に重ねて次の音を鳴らすことで音のつながりを滑らかにすることができます。
(音を重ねなければスライドアップ以外、通常モードと同じ動作をします)
次の音までの速さが遅いとポルタメント、早いとハンマリングオン、プリングオフ風に自動で切り替わります。これにより多彩な表情のベースラインを打ち込むことが可能です。
また、曲のテンポによっては8分音符くらいで重ねるように弾く音が全てポルタメントになってしまい不自然な演奏になってしまうケースも考え、ポルタメントとレガートが切り替わる次の音までの速さを200msec〜600msecの間で調整できるツマミも用意されています。(Port./Legツマミ)
また、通常モードでベロシティ121以上で強く弾くと全音下からのスライドアップになりますが、「Legatoモード」 でレガートせずに強いベロシティ(121以上)で鳴らすと 1オクターブ(音域による)分のロングスライドアップになります。
ちなみにサスティーンペダルを持ってませんという方もご心配なく、midiのトラックでサスティーンペダルのmidi cc64を表示させてマウスで操作すれば対応できます。
自分で使ってみた所感としてはサスティーンペダルでフレーズの確認やおおまかな打ち込みはしますが、”この音だけポルタメントかけたい”などの細かな部分はマウスで直接操作するのが確実かなと思いました。
製作者おすすめの使い方
フレットレスベースは本来ピッチが悪くならないように気を遣いながら演奏するのが基本です。その中で危うい音程や故意にずらしたりする事がフレットレスらしさだったりします。
ベース音源だとピッチが悪く無い状態の音をサンプリングするのでそのまま打ち込むと綺麗すぎてフレットレスらしさは薄くなるのでフレットレスらしさを出したい時は積極的にスライドアップやビブラート、Legatoモードを使うことで瞬時にフレットレスらしい滑らかな演奏を再現できます。
逆にいうとそれらを使わなければ普通のベース音源としてフレッテッドの音源と音色違いとして使う事もいい感じです。その硬すぎない音色はバラードにはもちろんリズムのある楽曲でも一味違った表情を出してくれます。
上にも書いた通り、「Legato」モードとビブラート以外の基本のキー配列は他のFuruBassシリーズと同じなので、所有されている方は試しにmidiデータはそのままに音源だけ「FuruBass-Fretless」に差し替えてみると嬉しい結果になる事もあるでしょう。
また、打ち込みだから出来ることとして、ベースラインは「FuruBass-JB1965」、間奏のベースメロディは「FuruBass-Fretless」と持ち変える事も可能です。
音源概要
・Native Instruments KONTAKT 5.8.1以上にてお使いいただけます。
注:KONTAKT PlayerではDEMOモードになり15分以上使えません。
・ジャズベースのフレットレス(エポキシ指板コーティング)のベースを使用
・指弾き奏法を収録しています。
・24bit48KHzモノ、チューニング441KHzで収録
・サウンドデモで使用したmidiデータも同封
・B0~D#4までの通常のノートとE4~G4までのミュート音(ゴーストノート)はmidiキーボードを打つ度に人差し指ピッキングと中指ピッキングが切り替わるので連打しても自然な演奏になります。
・E1~D#4までは強いベロシティ(121以上)で全音下からのスライドアップに切り替わります。
・休符の時などに弦に触れるタッチ音も全弦で収録しています。
・グリスダウン、アップ、アップ&ダウンを全弦で2,3パターンの長さで収録
・モジュレーションホイール(midi cc1)を上げるとビブラートのサンプルに切り替わります
・サスティーンペダル(midi cc64)を踏んでいる間「Legatoモード」となり前の音に重ねて次の音を鳴らすことで滑らかな音のつながりになります。
次の音までの速さが遅いとポルタメント、早いとハンマリングオン、プリングオフ風に自動で切り替わります(初期設定200msec、ツマミで200msec~600msecの調整可能)
また、「Legatoモード」 でレガートせずに強いベロシティ(121以上)で鳴らすと1オクターブ(音域による)分のロングスライドアップになります
収録内容
・ReadMe(製品概要、KONTAKTへの読み込み方法など)
・キーボードマップ(画像)
・デモサウンドで使用したmidiデータ
・収録ライブラリ
『FuruBass-Fretless_BaMix』
ラインとアンプの音をミックスした音源です。
通常のレコーディングでの音を再現した最もベースらしいオールマイティーな音色です。太さと芯があり、アンプシミュレーターなどの余計な調整を必要としません。アンプの音には収録時多少コンプはかかっていますがラインとアンプをミックスした後はEQもコンプもかけていないので曲調やフレーズによってお好みのEQ,コンプ処理を行えます。
・ライン
D.I:Manley TUBE DIRECT INTERFACE
Mic Pre:AURORA AUDIO GTQ2
・アンプ
BassAmp:Orange AD200B(Head),Orange OBC410(Cab)
Mic:NEUMANN U47 FET
Mic Pre:AURORA AUDIO GTQ2
Comp:WesAudio β76
『FuruBass-Fretless_Line』
Umbrella CompanyのSIGNALFORM ORGANIZERからAudio I/Fに直接入力し楽器の音をそのままに、クリーンでピュアな音で収録した音源です。
『FuruBass-Fretless_BaMix』が作られた音色に対し、こちらはご自身で色々と音作りをしたい方向けです。そのままでも十分なハイレンジの音像ですがアンプシミュレーターを通したり、リアンプすることもできます。
*『FuruBass-Fretless』には他のFuruBassシリーズに収録されているAmpライブラリ(アンプのみの音)は収録されていません。
使用規約
この音源を使い自由に音楽作品をリリースなどしていただいて構いません。但し、二次配布・再配布は一切お断りします。
最後に
前回のMM1984の制作ノートの時も書いた気がしますが、今度こそ自作ベース音源はこの辺で一区切りかと思います。フレットレスまで出せたので正直悔いがありません。あとは既存の音源の使い勝手とか、ユーザーの意見を取り入れるようなブラッシュアップなどをしていく感じかと思います。他にはFuruBassシリーズを使うのに便利な要素やコンテンツを提供していくことかなと。
引き続きFuruBassシリーズは好評でして、身の回りのプロミュージシャン、クリエイター、ミックスエンジニアからも評判も良く、さらにありがたいことに累計の導入数が300を超えました。
販売ページのBoothのシステムではユーザー識別コードだけでどなたが購入されたかは分からないので直接お礼ができませんが、この場を借りてユーザーの皆様に感謝を伝えさせてください。
FuruBassシリーズも最初のJB-1965を発表してからもうすぐ1年になり、世に発表された作品でも少しずつ使われるようになってきました。
自分でも毎日ベースリフなどで散々使って、自分でも出来過ぎと思うくらい使いやすく音も自信のあるものと胸を張って言えるものと実感しました。
かなり夢見がちですが、次の目標としては「FuruBass」シリーズが他の有名ベース音源に肩を並べる認知度になり、次世代でも現役でもクリエイターの音楽を支える存在になってくれる事です。言い過ぎですが夢はでっかく!
SNS等でレビューなどしてくれる方々も本当にありがとうございます!
励みになります!
雑記
今回の「FuruBass-Fretless」ですが最初に書いた通り、KONTAKTのスクリプト(この動作の時にはこう動くみたいなプログラム)を組むのにいつもの2〜3倍じゃ効かないくらい時間がかかりました。プログラムなんて本来チンプンカンプンなわけで、眩暈がするほどでした。
やっとできたと思ってデモのフレーズを作っていたら思わぬ使いにくさが出てきたり、それを修正したり、その修正のせいで他の部分に不具合が出たりと正直何度もボツにしようかと思ったくらいです。
何事も諦めないことが大事ですね。何度もトライアンドエラーを繰り返すうちにスクリプトの事もちょっとわかってきたり、思い描いた通りの動作を作れたり、それによってこれまでの音源に応用する方法を見つけたりと嬉しい事も多かったです。
KONTAKTのスクリプトについてはまた別のnoteを書こうかなんて思ってます。