味の記憶を手繰る
昨年初夏に急に思い立って40数年前に口にした洋菓子の味をもう一度……と『自由が丘モンブラン』から取り寄せてみたものの、ソレではなかった。味はイイ。イイんだけども、違う、そうじゃない感が押し寄せ、そのまま年を越してしまった。
寒いし、コロナにも罹患したし、『自由が丘モンブラン』まで行くの、渋谷経由するからめんどくせえし……と、徐々に情熱も薄れてしまい。
しかし、情熱というのはだいたい似た様な周期で再燃する。一年かけて、橋本真也の様に時は来たわけである。本日2023年5/12(金)がソレである。というわけで、完全なる思いつきで自由が丘へ。行ける時に行かないと、一生行かない気もするので。勢いは大事である。
渋谷から東横線へ。駅の構造、場当たり的なバカが設計してんのか、と思うぐらい動線が悪い渋谷。また東横線への長い地下が許しがたい。大江戸線、お前もだ(大江戸線とばっちり)。
いけすかない渋谷から代官山、中目黒方面へ。駅前は洒落てるけども、ちょっと油断するとトタン屋根とか昭和モルタル建築が。意外。割とスキがあるではないか。中目黒とか祐天寺とかドン百姓が住みたい街(偏見)とかヌカしてんのかなぐらいにしか思ってなかったけれど。そして自由が丘到着。初めて降りる駅である。小綺麗な街並みに並行して、昭和のどうしようもないスカム系雑居ビル(かの有名な『自由が丘デパート』)が同居している。よく見りゃメチャクチャなニュアンスを含む街並みである。しかし殺伐感は一切なし。全然気取らない、穏やかで品の良さが漂う。あれ、何だか居心地いいわね、自由が丘。もっとスカしてんのかと思ったけど。きっと長くこの地に住んでる人達でできてる街だから(商店街と神社の神輿倉庫の多さを見ればわかる)スカす必要ないんだな。金持ち喧嘩せずみたいなアレだろうか。たとえが悪いけども。
本来は駅のすぐそばに『自由が丘モンブラン』はあるのだが、現在ビル自体改装中で仮店舗へ。それでもさほど距離はない。いよいよ40数年前の味を確認する時が来たんでR。
店内はギラつきもなく、やはり自由が丘特有の穏やかさと余裕を放つ。お目当ての『ハルリン』という焼き菓子、単品で販売OK。これくださ~い。1個300円。2個買うとマルボロ1箱買えるお値段である。マルボロ10本分か……。1個だけ買うわけにはいかないので、ハルリンの仲間もいくつか入れて購入。あっさり入手。あとは実食のみ。全速力で帰宅。
帰宅後、早速。イタダキマース! ……うん、コレ違う。美味しいけど全然違う。まず、生地がクッキーそのものである。個包装から出した時、うっすら気づいていたけど、食感違うだろうな、と。要は、ダックワーズの軽さがない。そして中のアプリコットジャムがかってえ! 練る前の水飴ぐらいかってえ! 歯の被せ物取れる系。そして酸味を感じない。オデの淡い期待が波打ち際の砂の塔の様に静かに崩れる。オデが食べた40数年前のお菓子は何だったんだろう。ふりだしに戻ってしまった。
最も近いイメージがダックワーズの様なさっくり感のある生地の間に酸味のあるあんずジャムが入ってる感じなんだけど、メレンゲ(ココナツ系の香ばしい香り)とあんず(酸味)が入った何かを立て続けに食べてしまい(ex:ウィーナーワッフェルとハルリンという組み合わせ)、脳内でそれらの記憶を悪魔合体させてしまったんだろうか。あるいは当時では珍しいマカロンだった可能性も。
あるいは製法や材料が変わった可能性も。実は、今回入手したハルリンは、形が違っていた。そうやら2023年4月で形状変更、とレビューで確認。以前は牡蠣の殻の様な姿だったのに、現在は円状に。味の変更の可能性はゼロではない。
もうひとつの可能性としては、廃盤。コストやいろいろな問題で作るのをヤメたとか。手間の割に安いとか売れないとか。いや、売れないって事ないだろう。あんなに美味しかったのに(うっすい記憶だけども)。
……というわけで探し求めた味は2023年現在、店舗には存在しないという事に。じゃあココナツ系ダックワーズ風生地の中にあんずジャムを入れたのを自力で作ればいいんじゃなかろうか、とも思ったけど、何かソレも違う。そして、そもそもそんなの食べてなかったんじゃないかしら、記憶違いだったのかしら……といろいろ不安になってきた。でもハルリンは美味しい。とても。
こうなったら掲載媒体を確定させて、正式に『自由が丘モンブラン』に取材を申し入れた方がいいんじゃなかろうか、と。しかし、掲載媒体などない。でも知りたいしお伺いしてみたい。だが、個人の懐かしの思い出系質問にお答えしてくださるんだろうか。『自由が丘モンブラン』公式には「お客様お問い合わせフォーム」が存在する。最後の砦である。近日中に質問してみようと思う。
追記
もしかして、マカロンでは……という線も拭いきれない。先程公式を確認したところ、マカロンのあんずテイストはなかった。が、フランボワーズはアリ。しかし、フランボワーズは香りが独特なのであんずと違うのは明白。
再訪の価値は……その時考える。