11期における魔術師デッキの変遷と天敵後編「セレーネ型」
始めに
この記事は、前後編のうち、後編となっております。前編を読んでいらっしゃらない方は、こちらからお読み下さい。この記事の注意点は、前編に記してあります。この記事では水晶機巧ーハリファイバー禁止以後の、神聖魔皇后セレーネを展開の軸とした魔術師デッキの構築を紹介します。
というわけで、早速本題に入らせていただきます。
11期のデッキ変遷②
激動の制限改訂
2022年07月01日適用のリミットレギュレーションで、魔術師デッキは大きな改変を余儀なくされます。
ハリファイバーの禁止です。ハリファイバーの全ての効果を使っていた魔術師デッキは、この規制によって大きな改変を余儀なくされます。
ハリファイバーの禁止によって、以下の点が問題となります。
①相手に合わせたシンクロモンスターの投げつけ
②相手の誘発に対する柔軟な受け
これらはハリファイバーが担っていた部分であったため、新型のデッキに移行するにあたり、諦めなければならない部分となってしまいました。11期初の明確な弱体化です。肺をえぐり取られたとでも言いましょうか。
とは言え悲観してばかりもいられません。今回の改訂で前回準制限に緩和された調弦の魔術師が規制解除され、3枚使える様になりました。新型のデッキを考える上で、少なからずありがたい緩和となりました。(これについては後述します。)
新型デッキの誕生
これまでハリファイバーが行っていた、「リンクモンスターによる盤面強化と後続確保」については、早々に代替モンスターが見つかりました。
セレーネです。モンスターを確保しつつ展開できるリンクモンスターという点でハリの仕事を引き続きつつ、自身がリンク3であることから盤面で余ったアストロと合わせて、
アポロウーサを召喚可能になりました。以前のように器用な妨害ではありませんが、盤面にいるだけで十分存在感のある大型モンスターです。
しかしこれだけでは完成盤面の妨害数が
①タイタニックによる魔法無効
②ウーサによる1~2妨害
③時空紫毒による2面除去
と心もとないです。これに妨害を追加するカードが、実は魔術師内に存在しています。
星刻の魔術師です。9期から存在するカードだったのですが、ハリ型の頃はデッキ内の魔術師濃度が薄く、盤面に魔術師が2体並ぶことが稀だった
ため、採用が見送られてきました。しかしこの改訂で調弦が3枚使えるうえ、ハリ成立のために入っていたチューナーの一部が抜けたことでデッキの魔術師濃度が上がった事で採用が現実的になりました。このモンスターの②の効果を慧眼のP効果で起動し、デッキから
EMオッドアイズ・シンクロンや☆4魔法使い族モンスターを墓地に送ります。
(ここで墓地に送ったモンスターは、セレーネや黒牙の効果等で蘇生します。)
オッドアイズシンクロンの場合、自身の効果でスケールに残った賤竜の魔術師(☆6)をssし、サベージドラゴンを作ります。ハリ型では出来なかった
リンク3のセレーネを装備することができ、より長期戦向けなモンスターとなりました。
☆4魔法使い族モンスターの場合、盤面に余らせたモンスターと一緒に
深淵に潜む者を作ります。これは対面が分かっている場合に使いますが、拘束力が高いので十分選択肢だと思います。
また、手札のパターンによっては星刻が作れないため、シンクロンに触れない場合に作ることがあります。
(この場合素材を墓地に送りモンスターを確保するため、素材は一つしか残せません)
こうしてリペア案として十分な要素を用意できたため、セレーネ型の魔術師デッキが誕生しました。それがこちらです。
ハリファイバーのために入っていたチューナーの一部が抜けた上、EXデッキからシンクロチューナーが解雇された分、対応力のあるリンクモンスターを入れる事ができるようになりました。
この型での完成盤面は、星刻が成立した場合こうなります。
構える妨害として、
①アポロウーサによる1~2妨害
②タイタニックによる魔法無効
③サベージによるなんでも無効
④時空紫毒による二面除去
となり、対応力は下がりましたが、その分見えている妨害数は増えました。
上振れるとサベージと深淵の両立が可能になります。
また、攻撃力が下がるウーサと攻撃を誘導できるタイタニックの相性が良く、ウーサを活かせるデッキであると思っています。
リソース面は一切規制がかかっておらず、この盤面を作っても手札が3~5枚残るため、相変わらず長期戦は強いです。
こうしてリペアに成功した魔術師デッキですが、
ハリ型の頃になかったセレーネ型特有の弱点が生まれてしまいました。
新たに生まれた弱点
セレーネは自身にカウンターを乗せる際、墓地やフィールドにある魔法カードの枚数を参照します。このカードが採用されることの多いエンディミオンや閃刀姫では魔法が潤沢なため気になりませんが、魔術師デッキには魔法カードが基本的に5枚しか入っていません。Pスケールのカードは魔法扱いなので、カウンター2個分は用意できましたが、もう一枚を確保する必要があります。
虹彩の効果で星霜のペンデュラムグラフをサーチすれば解決しますが、
手札のパターンによっては星霜と時空、どちらかしか持ってこれない状況が魔術師デッキでは頻発します。
ハリ型では星霜を諦める判断が簡単につきましたが、展開に魔法カードが必要なセレーネ型にとっては死活問題です。
盤面を強くするために星霜が必要だが、最悪の場合時空を構えられず、盤面が強くならないという本末転倒な事態が当時頻発しました。
またハリ型では手札のチューナーの有無が完成盤面に行くまでの懸念事項でしたが、セレーネ型の場合、
①蘇生するモンスターを墓地に用意できるか
②それに使う黒牙がデッキに残っているか
③それらを破壊しつつペンデュラムグラフを用意できるか
など、懸念事項が増え、回すのが非常に難解なデッキとなりました。
こうして、リペアには成功しましたが、その代償として多くの懸念点が生まれてしまいました。所感としては、「失った部分は補えたが、以前の様には動けない」と言ったところですね。ダース・ベイダーみたいなもんです。しかし、これらの懸念点の多くは、
次回の改訂付近で大きく改善されます。
一発逆転の緩和と新規
2022年10月01日適用のリミットレギュレーションにて、魔術師ユーザーだけでなく、全盛期の魔術師を知る多くのデュエリストが驚く緩和が発表されました。
なんと虹彩の魔術師が準制限に緩和されます。
これまで緩和されたいくつかのカードと違い、12期になるまで緩和はないと多くのユーザーが踏んでいたため、予想だにしなかった緩和に多くのユーザーは驚きました。あの日の衝撃は今でも覚えています。
虹彩の緩和によって、これまでにないほど大きな強化を魔術師は得ました。
次の通りです。
①慧眼をP召喚して良くなった
②賤竜の回収を自由に使えるようになった
①についてピンとこない方も多いと思います。ここで、魔術師を回す上で重要な破壊情報について触れます。
↳破壊情報について
破壊情報を簡単に説明すると、
「破壊されたカードが、その場所を離れていないか」と言うことです。
破壊したカードがその場から離れると、このターン破壊されたカードとは別カード扱いとなり、このターン破壊したカードではなくなる事を破壊情報が消えると言います。
アストログラフのサーチ効果は、破壊されて
①EXデッキに行ったモンスター
②墓地に行ったモンスター
③除外されたモンスター
を参照しサーチを行います。その為、アストログラフでサーチしたいモンスターは、破壊した後動かせないというプレイング上の枷が存在します。
これまでの魔術師デッキでは、スケールで効果を使った慧眼をP召喚できませんでした。と言うのも、慧眼をP召喚してしまうと、破壊情報が消え、
エレクラムを絡めた一連の動きで後続を拾えなくなってしまいます。
「エレクトラムの効果で破壊した奴サーチすればすればいいじゃん」
と思った方もいると思います。それが出来たらやってます。しかし、基本的に虹彩を破壊することが多いです。慧眼と、虹彩でサーチした星霜を組み合わせ、2アド稼ぐ動きを、魔術師と対戦した事がある方なら見たことがあると思います。しかし虹彩は制限カードのためにデッキに後続が存在せず、アストログラフが場に出ただけになる事から、別のカードが絡まないとP召喚しないのが定石でした。
しかし今回の緩和で虹彩の後続がデッキに存在するようになったため、慧眼をP召喚しても後続確保の問題に頭を悩ますことが無くなりました。その為これまでと同じ手札パターンでも、モンスターが単純に1体増えたので、事故率が低下しました。プレイング難度の向上に悩まされていたため、ありがたい強化と言えます。
こうしてデッキの魔術師要素のみで手数が安定したため、
デッキに入っていたドラゴン族の殆どを抜くことが出来るようになりました。 (ただし、ラスターPは他にできない仕事があるため続投します。)
また、この制限改訂施行の1か月前に発売された
WORLD PREMIERE PACK2022に、強力な新カードが収録されました。
聖菓使クーベルです。効果は正直使わないのですが、このカードは
簡易融合に対応した初の融合Pモンスターです。
ついでに属性も覇王ヴェノムに対応しているため、とにかく強い要素てんこ盛りです。
これにより簡易融合が、モンスターが1体増える便利カードとなりました。
この魔法一枚からPモンスターを供給するギミックは、以前の構築でもおろ埋+ダークヴルムで出来ました。しかし簡易クーベルのパッケージは
それとは違った強みがあります。比較を下に書きます。
①おろ埋ヴルムの強み
覇王門零をサーチできるため、手札が減らない
ダークヴルム一枚から、スケールを揃えられる
②簡易クーベルの強み
初手やエレクトラムでのドロー、どのタイミングで引いても有効
デッキの魔術師濃度を薄めない
これらを比較した際、②の方が圧倒的に強いです。エクストラを1枠食いますが、1枚くらいなら抜けるカードが多くあるため、そこまで痛いデメリットではないです。
こうした多くの強化を経て魔術師は1段階上の強さを手にしました。
2022年12月01日時点での構築は、次の様になります。
基本的な安定感が高くなり上振れも狙いやすくなったため、枚数を抑えながらも高いパワーを出せるようになりました。メインデッキだけなら過去最強かも知れません。流石にそれは無規制の時です。
こにデッキの所感としては、「傷は癒えた上、更なる力を手にした」
と例えておきましょう。メカフリーザからゴールデンフリーザになったようなものですね。
しかし喜ぶのも束の間、更なる天敵が生まれました。
第二の天敵
クシャトリラデッキです。このデッキの基本戦術は、
①フィールドゾーン封じ
②除外による除去
③EXデッキ破壊
といった様に、魔術師がして欲しくない事全部やってきます。
特に①がキツく、Pゾーンを塞がれるだけで即サレンダーものです。
しばらく環境にいるテーマだと思うので、対戦する際はそれ相応の心がまえをしておきましょう。
最後に
いかがだったでしょうか。この記事で魔術師デッキに興味をもって頂けたのでしたら、マスターデュエルで組んでみることをお勧めします。この記事と同じ構築で遊べます。
2023年01月01日適用のリミットレギュレーションや、11期最後の弾での追加要素足りえるものの情報が出揃い次第、追記させて頂くので、その時はまた読んでいただけると幸いです。それでは。
追記:11期最後の変化
マスターデュエルでは覇王ヴェノムが制限カードに指定されたため、この構築は不可能となってしまいました。今後の形は模索していこうと思います。憎きLLを許すな
11期最後の弾ではこれと言って新規たりえるカードはありませんでした。
死天使ハーヴェストというカードは、サイドデッキ有りのマッチ戦で運用するのが面白そうと言ったところでしょうか。
しかし、023年01月01日適用のリミットレギュレーションで、遂に虹彩の魔術師が3枚使えるようになりました。また、その改訂でクシャトリラに手痛い規制が入ったのも、若干の追い風ですね。
11期最後の魔術師の形としては、次の様になります。
ここに至るまでに紆余曲折ありましたが、このデッキと共に遊ぶ遊戯王は楽しかったです。12期に入っても余程の事がない限りは愛用していこうと思います。
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