アビス第二層
朝令暮改な人生を送ってるせいなのか、今を最高として生きていないと潜在意識があるせいなのか、そこは曖昧にしておいて、ノスタルジーに浸る事を趣味の一つとして生きている。去年の今頃は、今日みたいな雨な日は、この服を着てた頃は、と、つくづく自己愛が強いなと薄々感じながらもその時々の自分を思い出しては懐かしみを覚えている。
ノスタルジーに浸るたび、その感覚自体にノスタルジーを感じていた。吐き気にめっちゃ似てる。単純作業は私をよりノスゲロな気分にさせる。
朝から晩まで立ちっぱなし、週5フルタイムで値踏みされた音楽たちと戯れている。まだ試用期間1ヶ月目にも関わらず、つい先日店長から喋りすぎとのご指摘を受けた柳なのだが、アルバイト中は専ら考え方をしながら単純作業に明け暮れている。バイト中の喋りすぎのお説教は手慣れたものだ。しかし怒られる事に免疫力が未だにつかないため、最近全く喋らなくなって気を使うと職場を騒がせていた。
連日の雨で、低血圧にはたまらなく正気を吸い取られる。頭痛貧血は言うまでもなく、たまの吐き気が付いてくる。たぶん第二層のアビスの呪いはこれくらいの程度なのだろうなぁ。(このネタがわかる人はたぶん2時間くらい語れる)なんなら職場の4階からトイレのある5階に上がる際なんか上昇負荷すごい。ナナチ1人欲しい。(このネタがわかる人はたぶん2時間くらい語れる)鬱々としながら、オレンジ色のゾーンに突入した数少ないHPをコスコス使いながらなんとかメイクマネーしている。(鬱って何も調べず漢字を書ける人は間違いなく結婚式呼べるレベルの友達に飛び級する。キカンキワキョウワチャワチャワチャヒミーーーー)
地球の体重差が吐き気と化してとてつもない勢いで襲ってくる。吊橋効果は都市伝説という認識だった私が、齢23にして本当に吊り橋の上で恋をしてしまうんではないかと思うくらい効果的面だった。今までに体験したことのないようなものすごく懐かしい気持ちに駆られた。
吐き気と似てると言ったものの、それは決して悪いものじゃない。むしろだんだん大地と足が離れて飛んでいくんじゃないかと錯覚するくらいふわふわであったかい何かに包まれた感覚。右手の名札カード左手のNASのレコードを、指を一本一本丁寧に剥がされるようにゆっくり放ってこのまま懐古の羽毛布団に包まってうつつしたい。
ピッピッと無機質なバーコード音がすごい腕力でレジ前に私を引き戻す。
ごめんなさい、今日早退します。