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社長自らが選抜した各部門のコア人材をDX推進者に育成。事業成長の大きな武器に(システムセイコー株式会社)

「群馬県DX人材リスキリング推進事業」※に参加されている『システムセイコー株式会社』の細野社長、プログラムに参加している渡辺さん、飯塚さん、西村さん、黒澤さん、廣岡さんにお話を伺いました。

システムセイコー株式会社
半導体製造自動化装置・各種検査装置・精密部品・精密金型・各種治工具の設計・製作、装置制御などの製造・販売を行う。創業以来、効率の高い自動化装置や超高精度な機械部品の生産に注力、「群馬県中小企業モデル工場」の指定を受ける。

【同社のリスキリング推進のポイント】
・経営者の明確な目標設定、積極的な関与により、社員のリスキリングを推進
・各部門のコア人材をリスキリングにより、DX推進者に育成
・課題解決に向け、社員同士で学習内容を共有、業務での実践を強く意識


未来を見据えた、一歩先の設計・製造へ

(左から、渡辺さん、飯塚さん、廣岡さん、細野社長、西村さん、黒澤さん)

-本プログラムに参加したきっかけを教えてください

細野社長
当社は2年前に製造設備投資をほぼ完了し、現在は設備を最大限に活用するための管理システムの再構築、業務自動化、人材育成に注力しています。

年度目標は生産性向上20%を掲げていますが、現状目に見える成果は出ていません。システム導入による効率化の効果を、具体的な数値で示すのが難しい状況でした。この問題を解決し、実務における効果を明確にするために、本プログラムに参加しました。

-5名の受講生は、社長自ら選抜されたと伺いました

細野社長
営業・設計・製造それぞれの部署でコアとなる人材を選抜し、DXの推進に取り組んでいます。10年ほど前から製造業におけるDXの必要性を感じており、当社も8年前より人工知能(AI)を用いた外観検査装置の導入などに取り組んできました。当時まだ人工知能(AI)を用いることは珍しかったですが、最近では使うのが当たり前だという風潮になってきています。

「大手企業がDXを活用して事業変革を進めている事例を参考にし、中小企業である当社がいち早くDXに取り組むことは、事業成長の大きな武器になる」と考え、各部門からDXに関する知識を持った人材を育成し、将来的には自社でシステムや仕組みの構築が可能となるのを期待して選抜しました。

受講者それぞれが明確な課題を持ちプログラムに参加

-今回のプログラムついて、どのような課題を持って取り組んでいますか

(総務)渡辺さん
当社の基幹システムは業務管理システムで運用されていますが、現状ではデータ活用やシステム運用にいくつかの課題を抱えています。そのため、営業・設計・製造・品質管理といった全工程で蓄積されたビッグデータを効果的に活用する方法を学ぶことが急務だと考えています。DX教育を通じて、データ分析や活用技術を深く理解し、業務プロセスの最適化と生産性向上を実現する仕組みを構築することを目指しています。

(製造)飯塚さん
製造現場ではアナログで管理されている部分がまだまだ多く、作業方法や図面管理が属人化していることが課題です。特に担当者の定年退職などに備えてDXの基礎知識を学び、これらの情報を整理して、業務効率化や標準化を進めていくのが私の目標です。

(製造)西村さん
前職でIT関連の業務に携わっていた経験から、製造現場のアナログな部分に課題を感じています。デジタル化や標準化による改善を図るため、DXの基礎知識をつけて課題解決に向けた具体的な提案ができるようになりたいと考えています。

(設計・組立)黒澤さん
設計や装置製作の仕事に取り組む中で、業務効率化を図るとともに、新しい技術を積極的に採り入れ、実務に活用したいと考えています。特にロボットやAIといった先端技術の活用スキルを向上させることで、高付加価値かつ高品質な製品開発ができるよう学習を進めています。

(営業)廣岡さん
営業部門では、見積作成業務が属人的で非効率なことが課題となっているため、この部分をデジタル化したいと考えています。たとえば見積作成ソフトの導入や開発を通じて効率化を図り、営業活動にもっと時間をかけられるようにするのが目標です。
加えて、私のお客さまの企業の中には、IoTを積極的に推進している世界的な企業もおり、DXについての知識を深めることで、営業活動の際に有意義な話題作りができると考えています。この学びが業務改善だけでなく、お客さまとの関係強化にも貢献すると期待しています。

問題解決と情報共有のため、社長を含めたWeb会議を開催

学習を進める中で何か工夫されていることはありますか

(総務)渡辺さん
プログラムを受講する中で「自分はこう思っているが間違えて捉えているかも」といった自身の理解度に不安がありました。そこで、学習内容のすりあわせや、学習時の課題点の共有を行うため、受講生と社長の間でWeb会議を月に1回程度開催しています。

Web会議には、社長への進捗報告と、各部署のメンバーに学習内容を展開するため、全員の知識や意識のレベル合わせをしておきたいという意図もあります。

Web会議はどのような内容なのでしょうか

(営業)廣岡さん
基本的には、5人のレベルを合わせるための進捗報告が中心です。「○○をやりました」というのはもちろん「○○はどう進めればよいでしょうか」といった悩み相談も行っています。

身につけた知識を、具体的に業務へ活かす

学びを今後どのように活かしていきたいと考えていますか

(総務)渡辺さん
業務管理システム内で管理している仕入れと経理業務の改善を目指し、業務フローを作成し、ベンダーとの意見交換を進めています。このプロセスを通じて、現在手入力で行っている作業をシステム間で連携し、自動化できる可能性を模索しています。特に、業務効率化と精度向上を図るためにRPA(ロボットによる業務自動化:ロボティック・プロセス・オートメーション)の学習を進めており、これを実務に活かして業務全体の最適化を実現することを目指しています。

(製造)西村さん
業務の中で自動化できる部分は多く見受けられますが、具体的な方法がわからないことが課題でした。そのため、自動化の具体的な手法を学び、自らのスキルとして身につけることで、業務効率化の推進に貢献できる力を強化したいと考えています。この学びを通じて自分の武器を増やし、より付加価値の高い業務を実現することを目指しています。

リスキリングを通して、問題解決に自ら立ち向かう人材となってほしい

(総務)渡辺さん
基礎講座で「経営数値に表れないとDXとは呼べない」という学びを得て、これまでの考え方を変える必要性を痛感しています。現状では、システム運用においても、単なる運用ではなく、どのように活用していくかを主体的に考える段階に至っていません。この課題を克服するため、今後の学習の中で各人が自発的に考え、行動できるレベルに到達することを目指しています。具体的には、データ活用の意義や実践的なスキルを深めるとともに、業務改善や価値創出につながるアイデアを共有し、行動に移せる体制を構築したいと考えています。

細野社長
本プログラムを通して、受講生が知識の土台を作り、業務上「これは不便なので改善したい」と感じる部分に対して、「これは解決できそうだ」と前向きに考えられるような引き出しを増やしてほしいと考えています。そのために、私からヒントを与えつつ、各人がリスキリングを通じて得た知識やスキルをどのように業務に活かせるかを一緒に考えていきます。さらに、各部署からアイデアを出してもらい、それらを集約して実現可能なプロジェクトとして進めることで、DXを推進してきたいと考えています。


※群馬県では、県内企業へのリスキリングの定着・拡大を図るため、リスキリングに積極的に取り組むモデル企業を発掘し、モデル企業の取り組みからリスキリングの好事例を創出し、県内に広く発信していく「群馬県DX人材リスキリング推進事業」を実施しています。(事業概要はこちら

※本記事は、株式会社ベネッセコーポレーションが群馬県の許諾のもと、取材を実施しています。