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映画レビュー『君たちはどう生きるか』
ジブリの新作『君たちはどう生きるか』を観てきたので感想を書きます。前情報も主題歌を米津玄師が担当することだけ知って後はシャットダウンしてました。純粋に感想を書きたいので他の人の考察も見ないで書きます。なので割と頓珍漢なこと書くかもしれない...
簡潔に言うなら「物語を紡ぐ」ことを「君たちはどう生きるか」って問われてるんだろうなと思いました。次世代のクリエイター全員に問いかけてるかのような。
この物語全体を通したテーマはタイトルの通り「君たちはどう生きるか」になるでしょうが、それを考えさせるキッカケを主人公の眞人に与えてるのはあのジブリ色マシマシの異世界での経験に他ならないでしょう。
問題は「あの世界が何のメタファーであるか」です。若かりし頃のキリコが出てきたり、大量のペリカンやインコの帝国があったり、ワラワラとかいうこれらの存在。それはきっと、「宮崎駿監督の創作の中」であると思います。
そもそもこの奇怪な世界を作った大叔父という存在がいますが、この人物が宮崎駿自身を表しているだろうというのが1番の理由です。
宮崎駿はスタジオジブリの中に籠って創作を続けた人物ですが、これは突然空から降ってきた“塔”(これはおそらくスタジオジブリのメタファー)を改修し、その過程で多くの人が死に、その中に籠って創作活動をしているうちに気が狂い、石(多分凝り固まった思想のシンボル?)との契約で積み木を積み続けることで世界を創造し続けている大叔父の姿と完全に一致します。
その宮崎駿自身が作り上げた世界は今にも壊れようとしている様子が分かるとは思いますが、その世界に眞人を呼んで、この世界を引き継いでくれるかどうかを尋ねます。要するに、自分の創作の世界観や価値観を引き継いでくれるかどうかを大叔父を通して言わせているわけです。漠然と「どう生きるか」ではなく「どう創作活動をして物語を紡いでいくか」を問いかけているように感じました。
しかし眞人は大叔父の積み木を「墓石」と言ったり、現実世界に戻って友達を作り生きていくことを決意します。要するに宮崎駿の作品のエッセンス(=積み木)は過去の産物であり(=墓石)、自分自身で新しい道を見つけることを選んだわけです。これを自分の映画の中でやってるわけですから、「どう生きるか?」に対して宮崎駿監督用意した答えは少なくとも「俺と同じ道を踏む必要はない」であると感じました。それでも、インコの大王が積み木を切った時の惨状の描写を見るに、創作を通して物語を紡ぐことの可能性と道の広がり方というのは確信してどうか受け継いで欲しいと思っているんだろうなとは思いました。関係ないですが最近流行った『pineapple on pizza』というゲームを思い出しました。
そういう意味で、眞人はこれからの時代を作っていくクリエイター達の代表であり、そのメッセージを小説『君たちはどう生きるか』をベースにジブリエッセンスを加えて伝達しようという試みがこの作品であると解釈しました。
個人的に、この新世代のクリエイターとして呼ばれたのが米津玄師であったなら嬉しいなと思っています。1stシングル出した時から、何ならボカロP時代からの大ファンでライブも通算で7回行ってるので(直近のツアーも行きました)、米津玄師の物語を紡ぐ能力を認めてくれていたらファンとして鼻が高いです。
今回の地球儀も、クリエイター代表としての送辞的な役割が大きいんだと思います。ジャケットも真っ白で、宮崎駿監督に敬意を表しつつ、ただ白紙に戻して物語を紡ぐ意思表示に見えました。
と、いうわけで感想でした。映画使って贅沢に最後を飾る気満々で最高でした。