+0.5のスキルの重要性
音楽セールスが盛んだったひと昔前は、アーティストは大量の作品のストックを作り、大規模な市場でヒットするよう様々な関係先と連携してリリースされていました。
しかし今は、音楽のトレンドも相まって制作効率も格段に上がり、より瞬発的なリアクションをすることが求められるようになりました。
海外でも、超ビッグアーティストがスタジオワークの二日後に自分で配信サイトに載せて販売するような時代です。
CDにするにしても、作詞作曲からレコーディング、マスタリング、CDデザイン、データ入稿、プレス発注、流通に至るまで、個人で完結できます。
彼らは個人でそのノウハウを持っていることはもちろん、エージェントやマネジメントを個人で雇う個人事業主。
その作業を行うだけでも、「音楽だけ」しかできないと、対応できなそうですよね。
例えば、デザインをするにはイラレやフォトショのスキルと、それを入稿する流れを知っておかなければなりません。
何かを発注するなら、逆算してスケジュール管理するマネジメント力。
報酬を支払うなら、請求書、領収書、契約書、そして税金のことを知っておく必要があります。
すべて自分でやる必要はないですが、以下のパターンのいずれかの能力は必要不可欠です。
①誰に頼めばいいか知っている
②知る方法を知っている
③自らがそのスキルを持っている
④契約の成立のさせ方を知っている
このいずれも100点ではなく、50点でいいのです。
自分の持つメインの1業種(スキル)にプラス0.5業種するイメージです。
これを持つ人は、コストやスピードの面で周りを救うことができます。
先ほどの例で言うなら、ひとりでデザインから入稿までできるデザイナー相手なら「デザインよろしく」で済む話が、そうでない場合はこんな風になってしまうかもしれません。
依頼①→デザインだけするデザイナー
→依頼②→フォトショやイラレに落とし込む人
→依頼③→入稿をする人
依頼や調整する手間やコストを考えると、②や③のスキルがあれば、クライアントもありがたいですよね。
しかもそれは「超一流」ではなくてもいいことが、ほとんどです。
「え、まじ!ざっくりでもできるの?コスパいいねー!」だったりします。
これを僕は「+0.5のスキル」と言っていて、エクセルが得意とか、友達がべらぼうに多いといったように、単体では目立った差がついたり職にならないようなスキルを追加することで、独自の価値を生み出すことができるのです。
日本にも、木山裕策やスガシカオのように、社会人とアーティストの二足のわらじで活動しながら結果を手にしたアーティストが存在します。
彼らのほとんどが、社会人として身につけたスキルやマナーが音楽活動に反映されています。
僕は今後、こうした兼業アーティストの価値が上がっていくと思っています。
安定した生活をベースに、継続的な活動をする地盤固めや自力を蓄えることで、長く音楽に取り組むことができ、技術や感性の醸成につながるとも言えると思います。
アーティストは「音楽以外のスキル」を少しずつ身につけておくといいと思っています。